EV(電気自動車)とは?~車の誕生から電動化の動向概要~

 

EV(電気自動車)とは?~車の誕生から電動化の動向概要~

2025-2-28

image EV(電気自動車)とは?~車の誕生から電動化の動向概要~

1. はじめに

現代の自動車産業は、電動化(Electric)、自動化(Autonomous)、コネクティッド(Connected)、シェアリング(Shared & Services)などCASE技術の波により「100年に1度の大変革期」に突入しています。本記事では、内燃機関から電動化への転換という自動車の進化を詳しく解説します。

2. 車の歴史

2-1. 自動車の誕生(内燃機関)

徒歩や馬車に代わり、より速く、より遠くへ快適に移動する手段として自動車が誕生しました。自動車はエンジンによりガソリン燃焼の爆発力を回転動力に変換し、その動力を車輪へ伝えて走行します。

エンジンの動作としては、クランクシャフトを回転させるとシリンダー内のピストンが下がり、ガソリン燃料と空気(混合気)がシリンダー内に入ります。その後再びクランクシャフトの回転によりピストンが上がり、燃料と空気が圧縮され、点火プラグにより爆発・膨張することでピストンを押し下げます。この動きがクランクシャフトに伝わり、回転運動に変換されます。かつて、この初期の回転は人の力で行われていましたが、現代の車では電気スターターがこの役割を担っています。エンジンが一度始動すると、回転動力を利用して燃料供給の機械が作動し、エンジンの動作が継続します。具体的には、クランクシャフトの回転がタイミングベルトを動かし、このベルトが燃料と空気の供給を調節する弁の開閉を制御します。

エンジンの構造と動作フロー
エンジンの構造と動作フロー
図1 エンジンの構造と動作フロー

2-2. 機器の電動化(車の電動化の潮流)

自動車は長い間、エンジンの回転動力を利用してきました。しかし、近年ではエンジンの力だけに頼らず、モーターなど電気を動力として使う「電動化」が進んでいます。電動化の目的は多岐にわたり、主な目的は以下の通りです。

快適性と利便性の向上
かつての自動車では、エンジンをかけた時の振動や騒音が気になり、ステアリングが重く、また古いバッテリーの影響で空調や照明、窓の動きにもたつきがありました。しかし今では、高性能なバッテリーと電子制御の組み合わせにより、ボタン一つで静かにエンジンが始動し、外気温に応じて設定温度に自動調整されるエアコン、軽やかに操作できるパワーステアリング、スムーズな窓の開閉など、車内の快適性が格段に向上しました。寒冷地でのエンジン始動の不安も解消され、誰もがストレスなく運転を楽しめる環境が整いました。

走行性能の改善
以前の車は機械的な制御が中心だったため、アクセルを踏んでからの反応や燃費効率に限界がありました。現代の電子制御ユニット(ECU: Electronic Control Unit)は、エンジンの燃焼状態を常に監視し、最適なタイミングで燃料を供給します。アクセルワークに対する反応は正確で、無駄な燃料消費も抑えられ、加速性能も大幅に向上しています。ブレーキやハンドル操作も含めた統合制御により、安定感のある走りが実現しています。

安全性の向上
従来の車は運転手の目と反応に頼るしかなく、死角や突発的な危険への対応には限界がありました。現代の先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)では、カメラやレーダー、LiDARなど複数のセンサーが車の周囲を常に監視しています。危険を察知すると自動でブレーキをかけたり、車線からのはみ出しを防いだりと、人間の反応速度をはるかに超えた安全機能が働きます。これにより事故のリスクが大きく減少し、より安心して運転できる環境が整っています。

環境対応(CO₂削減)
従来のガソリン車は、走行時に多くの二酸化炭素や有害物質を排出する環境負荷の高い乗り物でした。これに対し、ハイブリッド車や電気自動車(EV: Electric Vehicle)は、最新のリチウムイオンバッテリーと電動システムにより、環境負荷を大幅に軽減しています。特に、ブレーキ時のエネルギーを電気として回収し再利用する回生ブレーキシステムは、燃料消費とCO₂排出の削減に大きく貢献しています。さらに、充電に太陽光などの再生可能エネルギーを活用することで、より環境に優しいモビリティの実現が期待されています。

このように、近年の電動化はエンジンの補助、代替だけでなく、手動で動かしていた様々な機器の電動化により、より快適で、かつ安全性の高い移動空間に変化しています。

2-3. xEVの加速とその背景

xEVとは電動自動車の総称で、バッテリー電気自動車(BEV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)など、さまざまな形態の電動化技術を持つ自動車を指します。近年の電動化の流れを受け、各メーカーは環境規制強化や消費者意識の高まりを背景に次々と新型xEVを投入しています。
その結果、内燃機関車(ICE:Internal Combustion Engine)の市場比率は低下し、xEVが主流になると予測されます。次章では、xEVの種類や特性について詳しく解説します。

3. xEV(電気自動車)について

3-1. EVの種類

xEVは、内燃機関車(ICE)がガソリンを動力源とするのに対し、電気を動力源とします。また、xEVは「バッテリー電気自動車(BEV)」と「ハイブリッド電気自動車(HEV)」に大別され、HEVは充電方法や電動化の度合いによりさらに分類されます。

バッテリー電気自動車(BEV)は、リチウムイオンバッテリーなどの走行用バッテリーをエネルギー源として利用し、電気モーターを動力として走行します。一方、ハイブリッド電気自動車(HEV)は、電気モーターとガソリンエンジンを組み合わせて駆動し、バッテリーへの充電方法やエンジンの関与度合いによってさらに細かく分類されます。

  • 電動化の度合い(エンジンとモーターの役割の違い)
    ストロングハイブリッド(SHEV)
    エンジンとモーターの両方で駆動可能で、状況に応じてモーターのみでの走行が可能。
    マイルドハイブリッド(MHEV)
    エンジンが主で、モーターは補助的に使用する。EV走行は不可。
  • 充電方法の違い
    プラグインハイブリッド(PHEV)
    外部充電が可能で、一定距離をモーターのみで走行可能。
    レンジエクステンダー電気自動車(REEV)
    基本的にモーターのみで駆動し、エンジンは発電専用。
図 車両の種類による構成の違い
図 車両の種類による構成の違い

3-2. 市場トレンド(xEV/電動化の動向)

自動車業界では、電動化が進み、特に電気自動車(xEV)が市場の成長を牽引しています。2030年に向けて、従来の内燃機関車(ICE)は全体の約1/4が残ると予測されており、グローバルの車両生産はバッテリー電気自動車(BEV)が成長を牽引するでしょう。

現在、電気自動車(xEV)で使用されるバッテリーの電圧は400Vが標準ですが、近年では800Vや1000Vといった高電圧バッテリーも登場しています。高電圧化により充電時間短縮や高出力、軽量化が実現しますが、製造コストや充電インフラの整備が課題となります。そのため、800V以上は主に高級車やスポーツカーなど高性能EV向けに採用され、市場全体では400Vが引き続き主流になると見られます。

3-3. 電動化に要求される仕様の変化

電動化された車載機器の電源は、用途や必要とされる電力に応じて異なる種類のバッテリーを使用します。具体的には大きく2つに分類でき、「低電圧バッテリー」と「高電圧バッテリー」の2系統が搭載されています。
低電圧向けには12Vの鉛バッテリーを使用します。用途としては自動車のさまざまな電装品の電源として使用され、カメラ、ナビゲーションシステム、照明、空調システム、その他の電子制御ユニット(ECU)などが含まれています。このタイプのバッテリーは、エンジン車だけでなく電気自動車にも搭載されており、電子機器に安定した電力の供給が可能です。
一方で、高電圧向けバッテリーは、一般的には400Vから800Vのリチウムイオンバッテリーが使用されます。特に、主機モーターやインバーターは強い駆動力(トルク)と高速回転を実現するために高い電力を必要とします。高電圧バッテリーを使用することで、必要な電力をより小さな電流で供給できるため、エネルギー損失を抑えつつ、効率よくモーターやインバーターを駆動できます。高電圧バッテリーは数百ボルトの電力を必要とする主機モーターなど、特定の用途に特化しています。

高電圧バッテリーの仕様は、車両の種類と用途によって「電圧」と「容量」への要求が異なります。特に主機モーターを動力源とするBEVでは電圧は400~800V、容量30~150kWh程度と高電圧でかつ大容量のバッテリーが要求されます。一方でエンジンを主な動力源とするMHEVでは電圧48V、容量0.5~1.0kWhと比較的小さなバッテリーを搭載しています。 今後、バッテリーに対して「航続距離延長」「充電時間短縮」「軽量化」などを実現するため、高電圧化と高容量化などの技術進化が求められています。

ICE xEV
BEV SHEV MHEV PHEV REEV
動力源 エンジン
走行用バッテリー
走行方法
(動力)
エンジン
走行用バッテリー
走行用
バッテリー
(Li-ion) *1
サイズ 大型 小型 超小型 中型 大型
容量[kWh] 30~150 1.3 0.5~1 10 50
電圧[V] 400~800 200~ 48 250~350 400?
横スクロール可能です

4. まとめ

本記事では、自動車産業の歴史をたどり、電動化の進展とその背景について解説しました。電気自動車(xEV)の急速な成長は、環境規制の強化やそれに伴う消費者意識の変化によって加速しています。今後も電動車の普及は拡大し続け、2030年以降もさらに市場が成長すると予測されています。これからの数十年は、自動車業界にとって非常に重要な転換期となるでしょう。

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