電気自動車(EV)におけるBMSとは?

 

電気自動車(EV)におけるBMSとは?
~バッテリの状態と性能を監視・管理するシステム~

2023-10-20

BMSは、バッテリの状態を監視してセルごとの性能バラツキを均一化することで、バッテリ性能を最大限に発揮させる重要なシステムです。大容量のリチウムイオン電池を使用するEVに搭載されて、バッテリの寿命の延長や、安全に使用するために重要な役割を果たします。本記事では、BMSの機能とシステム構成について解説し、構成している電子部品もご紹介します。

BMSとは?

BMSの概要

BMS(Battery Management System)とは、バッテリの状態を監視・制御し、安全かつ長時間使用できるようにするシステムです。EVに使用されているバッテリ(リチウムイオン電池)は、充放電が行われるたびに劣化が進み、車両性能の低下につながる恐れがあります。そこで、セル単位で全数の状態を監視し、性能バラツキを均一化するBMSが重要となります。

BMSのはたらき

  • 監視:バッテリ全数をセル単位で状態監視する

    電圧の計測 ―― 各電池セルや電池パック全体の電圧を計測し、過充電や過放電を防ぐ。

    電流の計測 ―― 電池からの放電電流や電池への充電電流を計測する。電池の使用状況や充電状態を確認し、適切な制御を行う。

    温度の計測 ―― 温度センサを通して、電池の温度を常時監視する。適切な温度範囲内で電池を使用することで、安全性を確保し電池の寿命を延ばす。

  • 制御:セルごとの性能バラツキを均一化する

    大容量の電池パックは、多数の電池セルから構成されています。これらのセルは、性能に差があり劣化の進行度も異なります。例えば特定のセルが他のセルよりも先に劣化すると、電池パック全体の性能や寿命に影響を及ぼす恐れもあります。この性能バラツキを均一化するのが「バランシング」とよばれる機能です。

市場と機器のトレンドについて

EVにはモータの高出力化、航続距離延長にともなうバッテリの高容量化、バッテリのより効率的な高速充電が要求されています。これらの理由によって、EVに搭載されるバッテリは、今後大容量タイプのものが増加する見込みです。加えて、バッテリの高電圧化も予測されています。BMSを構成する電子部品にこれから求められる機能や性能として、「高電力化」「高耐熱化」「高精度化(温度・電圧制御)」が挙げられます。それぞれの要件は以下の通りです。

高電力化
モータの高出力化に対応するために、BMSを構成する半導体も高電力化対応が求められます。高電力化とは、現状で400V程度のバッテリパック電圧を、800Vないしそれ以上に高電圧化することを指します。

高耐熱化
電子部品の小型化が進むにつれ、単位面積当たりに発生する熱は増加しています。熱への耐性を持たせることで、部品自体が発する熱や、周囲の部品から受ける熱による劣化を防げます。

高精度化(温度, 電圧)
高電力化の実現に向け、バッテリ数増加、高電圧化等が進み、現状よりも精度良く計測し制御することが必要となります。

BMSの回路構成について

全体構成

  • バッテリモジュール:複数のバッテリセルを接続したモジュール
  • 電圧検出(モジュール):モジュールおよび各セルの電圧を計測する
  • モニタリング回路(BMS):セルごとに状態を監視し、セルバランス調整を行う
  • 温度検出:セルごとに温度を計測する
  • 制御回路:BMSの計測、バランス調整を制御する
  • 電流検出:ユニット全体の電流を計測する
  • 電圧検出(全体):ユニット全体の電圧を計測する
  • ジャンクションボックス:異常時に遮断しバッテリを保護する
  • 電圧検出(全体の地絡検知):ユニット全体の地絡を検知する
図1 BMSの全体構成
図1 BMSの全体構成

個別回路および構成部品

温度計測

バッテリが高温になると、バッテリ自体が劣化したり、最悪の場合には発火したりする恐れもあります。このような事態を回避するために、BMSシステムはバッテリモジュールに配置した複数のサーミスタ(温度センサ)によって温度を計測するのが一般的です。

【使用される部品】

バッテリーセルの温度計測 ―― NTCサーミスタ(チップ形)

POINT
  1. ❶ 小型、高耐熱かつ独自の外電形成技術により高信頼性により、回路の温度補償の高精度化に貢献

セルバランス調整

バッテリセル毎の電圧計測により、各セルの充電量を算出し、全セルの充電量を均一化するために、抵抗にて放電を行うのが一般的です。

【使用される部品】

放電用途 ―― チップ抵抗器 (小形高電力チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶ 独自の抵抗パターン、電極構造などにより小型高電力化を実現し、回路の小型化に貢献
図2 セルバランス調整で使用される部品
図2 セルバランス調整で使用される部品

電圧計測

モジュール、ユニット、地絡検知等の電圧計測は高電圧となるため、複数の抵抗を接続して分圧により計測するのが一般的です。

【使用される部品】

モジュール、ユニットの電圧計測 ―― チップ抵抗器 (高精度チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶ 薄膜構造での抵抗値公差、低TCR性能により、回路の出力特性の高精度制御化に貢献
図3 電圧計測で使用される部品
図3 電圧計測で使用される部品

DC/DCコンバータ

DC/DCコンバータ回路では、入力部のノイズ除去と出力部の平滑化のためには導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、電圧変換には車載用パワーインダクタを用いるのが一般的です。

【使用される部品】

ノイズ除去、スイッチング・平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

POINT
  1. ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献

電圧変換 ―― 車載用パワーインダクタ

POINT
  1. ❶ 金属磁性材での低損失&大電流性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 損失特性の高周波化(低ACR)により、回路の高周波スイッチング化における損失抑制に貢献
図4 DC/DCコンバータで使用される部品
図4 DC/DCコンバータで使用される部品

コミュニケーション I/F

コミュニケーションI/F(通信)回路では、2本の線を使って外部機器と通信します(CAN、Ethernetなど)。このとき、通信線からノイズや静電気が混入すると、トランシーバーICが故障する恐れがあります。そのため、トランシーバー回路には静電気対策用としてチップバリスタを用いるのが一般的です。

【使用される部品】

ESDノイズ除去 ―― チップバリスタ

POINT
  1. ❶ 幅広い容量特性ラインナップにより、回路の通信品質を維持しながら静電気(ESD)ノイズの抑制に貢献
  2. ❷ チップバリスタは、8~250pFの容量特性により、低速から高速の通信速度に対応
図5 コミュニケーション I/Fで使用される部品
図5 コミュニケーション I/Fで使用される部品

まとめ

BMSは、バッテリの状態を監視と制御を行う重要なシステムです。この働きによって、バッテリの安全性を確保しながら、性能を最適化します。今後、EVの生産台数が増加するに伴い、BMSも搭載数が増加すると考えられます。加えて、モータの高出力化、高容量化、急速充電時間の短縮といった性能向上が求められてきます。これらに対応するため、BMSを構成する電子部品についても「高電力化」「高耐熱化」「高精度化(温度・電圧制御)」は必然です。パナソニックインダストリーでは、BMS向けに幅広い商品ラインアップを取りそろえています(表1)。

表1 商品ラインアップと特長一覧
部品 特長 高電圧 大電流 高耐熱 高精度
高精度、高耐熱
車載用パワーインダクタ 大電流、低損失
高信頼性
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ 低ESR
高信頼性
チップバリスタ 小形・軽量化
NTCサーミスタ(チップ形) 小形、高耐熱

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