ADAS/ADシステムに搭載するカメラとは?
~機器の高性能化に貢献するデバイス群~
2023-03-17
車載アプリケーションにおけるカメラは、ADAS(先進運転支援システム)やAD(自動運転)において周囲をセンシングするための機器です。主にセンシングカメラ、サラウンドビューカメラ、ドライバーモニタリングカメラの3種類が挙げられます。本記事では、それぞれのカメラモジュールについて解説し、構成している電子部品のラインアップについてもご紹介します。
ADAS/ADシステムにおけるカメラとは?
ADAS/ADシステムでは「カメラ」「レーダー」「ライダー」「ソナー」などを組み合わせ、車内外の多方位をセンシングして安全な走行を支援します。搭載されるカメラは大きく分けて「センシングカメラ」「サラウンドビューカメラ」「ドライバーモニタリングカメラ」の3つがあります。(表1)
機器名称 | 搭載箇所と役割 |
---|---|
センシングカメラ | フロントガラス上部に設置され、広範囲をセンシングして車の前方向の安全を確保します。 |
サラウンドビューカメラ | 車体の前後左右にカメラが設置され、全周囲1m程度をセンシングし、車の近傍の安全を確保します。 |
ドライバーモニタリングカメラ | メータークラスター付近に設置され、ドライバーの健康状態をセンシングして安全な走行を確保します。 |
各カメラの用途
センシングカメラ、サラウンドビューカメラ、ドライバーモニタリングカメラの機能と用途を下表2に示します。特に「センシングカメラ」、「ドライバーモニタリングカメラ」は「制御判断」「制御指示」に関わり、AD(自動運転)を実現するために特に重要な役割を果たします。
機器名称 | 用途 | 認識 | 制御 判断 |
制御 指示 |
用途例 |
---|---|---|---|---|---|
センシングカメラ Sensing camera |
AD(自動運転) ADAS(運転支援) |
✔ | ✔ | ✔ | 各種運転支援システム LKA, LCA, AEB, etc. |
サラウンドビューカメラ Surround view camera |
ADAS(運転支援) 車両全周囲の画像表示 |
✔ | ✔ | ✔ | パーキングアシスト |
ドライバーモニタリングカメラ Driver Monitoring camera |
AD(自動運転) ドライバの意識の状態監視 |
✔ | ✔ | ✔ | DMS (driver monitoring system) |
各カメラの内部構成について
●センシングカメラ、ドライバーモニタリングカメラ
イメージセンサは、カメラのレンズから入った光を電気的な信号へ変換するセンサのことです。ここでセンシングしたデータを、SoC(System on a chip)を通して処理されます。また、外部のECUに制御指令を出すためのマイコンが搭載されています。
●サラウンドビューカメラ
センシングカメラ、ドライバーモニタリングカメラと異なり、複数個のイメージセンサが搭載されています。これは、車体の複数箇所にカメラが設置されているためです。取得した画像データは、他のECU (サラウンドビューECUなど)によって1つの全周囲画像へ統合(合成)されます。
機器名称 | 回路構成 |
---|---|
センシングカメラ ドライバーモニタリングカメラ |
|
サラウンドビューカメラ |
市場と機器のトレンドについて
カメラモジュールの市場&機器トレンド
市場のトレンドとしては、車両台数の増加と自動運転レベルの向上に伴い、カメラの搭載数の増加が予想されており、さらなるセンシング機能の高性能化についても予測されています。今後カメラモジュールに求められる機能・性能として、「高電力化」「通信高速化」「小型化/軽量化」が挙げられ、それぞれの要件は以下の通りです。
●高電力化
イメージセンサの高解像度化、高ダイナミックレンジ化等の高性能化により、データ量の増加が見込まれます。それだけでなく、SoCでの認識・判断の高速化や高精度化も求められています。データ処理量の増加により、電子部品の損失が増加するため、高電力化が必要不可欠です。
●通信高速化
画像データ伝送でのデータ量増加に伴い、高周波かつ高速伝送処理能力の向上が求められています。
●小型化/軽量化
上記のような課題に加え、電子部品のサイズダウンを図る必要があります。
各カメラモジュールの回路構成
センシングカメラ、ドライバーモニタリングカメラ、サラウンドビューカメラの回路構成について解説します。
センシングカメラ、ドライバーモニタリングカメラ
センシングカメラ、ドライバーモニタリングカメラは以下部品によって構成されており、図1に回路構成を示します。
●イメージセンサ:画像の撮影に必要なセンサ。カメラのレンズから入ってきた光を電気的な信号へ変換する。
●SoC:イメージセンサで取得したデータを処理するためのデバイス。
●MCU(マイコン):「ブレーキを掛ける」「ハンドルを切る」といった制御指示を、外部のECUに与える。
●トランシーバー:外部と通信するためのデバイス。
●メモリ(DDR):データ処理時のバッファとして使用する。
●メモリ(フラッシュ):制御ソフトやセンサデータを保持する。
●DC/DCコンバータ:鉛バッテリーから入ってきた電圧を、電子部品ごとに必要な電圧へと変換する。
サラウンドビューカメラ
サラウンドビューカメラは、カメラECUとサラウンドビューECUの2つから構成されています。他のカメラモジュールとは異なり、複数個のカメラが車に搭載されています。そのため、トランシーバー回路はより多くのデータ量を通信しなければなりません。取得した画像データを1つに統合するためにFPGAが使用され、ここでは画像処理が高速で行われます。
その他の構成については、センシングカメラ、ドライバーモニタリングカメラと同様です。
各部品の具体例と用途
センシングカメラ、ドライバーモニタリングカメラ、サラウンドビューカメラでは、共通してDC/DCコンバータとトランシーバー回路が使われています。それぞれの回路を構成している電子部品と効果について解説します。
DC/DCコンバータ
DC/DCコンバータ回路では、入力部のノイズ除去と、出力部の平滑には導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、電圧変換には車載用パワーインダクタ、電圧計測にはチップ抵抗(高精度チップ抵抗器)を用いるのが一般的です。
ノイズ除去、スイッチング・平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ
POINT- ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
- ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献
電圧変換 ―― 車載用パワーインダクタ
POINT- ❶ 金属磁性材での低損失&大電流性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
- ❷ 損失特性の高周波化(低ACR)により、回路の高周波スイッチング化における損失抑制に貢献
トランシーバー I/F
図に示すように、トランシーバー回路では、2本の線を使って外部の機器との通信を行います(CAN、Ethernetなど)。ここで注意しなければならないのが静電気とノイズです。通信線から静電気やノイズが混入すると、最悪の場合は電子部品の故障につながるためです。静電気対策用としてチップバリスタ、ESDサプレッサで構成するのが一般的です。
まとめ
自動運転レベルの向上と車両台数の増加に伴い、カメラの搭載数の増加が予想されています。さらには、カメラのセンシング機能の性能向上も求められています。カメラから取得した大量の画像データを処理しようとすると、その分電子部品での損失が増加します。今後、車載電子部品には「大電流」「低損失」「高周波」「小型」といったことがより求められるでしょう。パナソニックインダストリーでは、カメラ向けに幅広い商品ラインアップと、これから求められる機能を備えたデバイスを取りそろえています(表4)。
部品 | 特長 | 大電流 | 低損失 | 高周波 | 小型化 | 高精度 |
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導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ | 低ESR 高信頼性 |
✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
車載用パワーインダクタ | 大電流、低損失 高信頼性 |
✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
チップ抵抗(高精度チップ抵抗器) | 高精度、高耐熱 | ✔ | ✔ | |||
チップバリスタ | 小形・軽量化 | ✔ | ||||
ESDサプレッサ | 低静電容量 超高速データ I/F |
✔ | ✔ |