冷却システム用ポンプとは? ~水を循環させて機器の発熱を抑制する~

 

冷却システム用のポンプは、機器の発熱を抑制するために水を循環させる冷却システムにおいて、水の流れを作り出す装置で、30Wから100Wの出力で動作します。インペラー、モータ、インバータで構成され、一体化された円筒形などの外観が特徴です。本記事では、ポンプの機能とシステム構成について解説し、構成している電子部品もご紹介します。

冷却システム用ポンプとは?

車両に搭載されている冷却システムは、バッテリー、モータなどさまざまな機器の発熱を抑制するために設計されています。冷却システムは、発熱機器の冷却ユニット(ジャケット)に配したパイプに水を循環させることで機器を冷却しています。ポンプの役割はパイプ内の水に強制的な流れを作ることです。ポンプの出力は一般的には約30Wから100Wです。構造は、インペラー(羽根車)やモータなどの機構部分、そしてモータを制御するインバータ(モータコントローラ)回路基板から成り立っています。これらは一体化され、円筒形などの外観となっているのが特徴です。

図1 冷却用ポンプの内部構造について
図1 冷却用ポンプの内部構造について

市場と機器のトレンドについて

EVやICE(Internal Combustion Engine:内燃機関)を合わせた自動車台数の増加に伴い、搭載されているポンプ数も増加の見込みです。また、各種機器(バッテリー容量、OBC出力、インバータ出力)の出力増によって発熱量も増加傾向にあることから、冷却システムの冷却性能を一層向上することが求められており、ポンプ出力自体も今後高出力化する必要があります。

このため、冷却システムを構成する電子部品には、「大電流」「低損失」「高耐熱」「高精度(温度)」といった性能が必須となっています。

冷却システム用ポンプの回路構成について

全体構成

  • ノイズフィルタ:コイルとコンデンサにてノイズを除去する
  • 電圧変換回路:FETなどを使ったスイッチング回路で、電圧を変換する
  • 電流計測:モータへの出力電流を計測する
  • ゲートドライブ回路:スイッチング素子のゲートを制御する
  • 制御回路:変換回路などを制御する
  • DC/DCコンバータ:制御回路に電源を供給する
  • コミュニケーションIF:外部との通信回路
図2 冷却システムの全体構成
図2 冷却システムの全体構成

個別回路および構成部品

ノイズフィルタ

ノイズフィルタ回路では、外部または自回路からのノイズを抑制し、回路の誤動作を防止します。フィルタには大型のコイルとコンデンサを組み合わせるのが一般的です。

【使用される部品】

ノイズ除去、平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

POINT
  1. ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献

電圧変換 ―― 車載用パワーインダクタ

POINT
  1. ❶ 金属磁性材での低損失&大電流性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 損失特性の高周波化(低ACR)により、回路の高周波スイッチング化における損失抑制に貢献

電圧変換回路

電圧変換回路では、複数のスイッチング素子によって電圧を変換します。スイッチング素子をOn/Offすることで変換動作を行いますが、On/Offの際にノイズが発生するため、素子(FET)のゲート端子に抵抗器を挿入して駆動ノイズを抑制します。

【使用される部品】

スイッチング素子ゲート駆動ノイズ抑制 ―― チップ抵抗器 (小形高電力チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶ 独自の抵抗パターン、電極構造などにより小型高電力化を実現し、回路の小型化に貢献

制御回路

冷却システム内を循環する水の温度を水温センサで常時監視します。センサで取得した水温度に対して、冷却システム内のポンプの速度調整を行ってシステム内を適切な温度に保ちます。

【使用される部品】

水温の監視 ―― 温度センサ(カーエレ用)

POINT
  1. ❶ オーバーモールド溶着により、耐被水性および業界最高クラスの耐熱(-40℃~200℃)を実現

DC/DCコンバータ

DC/DCコンバータは主にFET、コイル、コンデンサで構成されています。入力部のノイズ除去と出力部の平滑には導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、電圧変換には車載用パワーインダクタを用いるのが一般的です。

【使用される部品】

ノイズ除去、スイッチング・平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

POINT
  1. ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献

電圧変換 ―― 車載用パワーインダクタ

POINT
  1. ❶ 金属磁性材での低損失&大電流性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 損失特性の高周波化(低ACR)により、回路の高周波スイッチング化における損失抑制に貢献
図3 DC/DCコンバータで使用される部品
図3 DC/DCコンバータで使用される部品

コミュニケーションI/F

コミュニケーションI/F(通信)回路では、2本の線を使って外部機器と通信します(CAN、Ethernetなど)。このとき通信線からノイズや静電気が混入すると、トランシーバーICが故障する恐れがあります。そのため、静電気ノイズ対策用としてチップバリスタを挿入するのが一般的です。

【使用される部品】

スイッチング素子ゲート駆動ノイズ抑制 ―― チップバリスタ

POINT
  1. ❶ 幅広い容量特性ラインナップにより、回路の通信品質を維持しながら静電気(ESD)ノイズの抑制に貢献
  2. ❷ チップバリスタは、8~250pFの容量特性により、低速から高速の通信速度に対応
図4 コミュニケーションIFで使用される部品
図4 コミュニケーションIFで使用される部品

まとめ

冷却システムは、水を循環して機器を冷却し、機器の発熱を抑制するためのシステムです。今後はEVやICEの車両台数増加に伴い、冷却システムとそれに搭載されるポンプ数も増加すると推測されています。各種機器の出力も増加傾向にあるため、冷却システムの冷却性能向上が求められており、ポンプ自体も高出力化する必要があります。それに伴い、冷却システムを構成する電子部品には、「大電流」「低損失」「高耐熱」「高精度(温度)」が要求されます。パナソニックインダストリーでは、冷却システム向けに幅広い商品ラインアップを取りそろえています(表1)。

表1 商品ラインアップと特長一覧
部品 特長 高電圧 大電流 低損失 小形化 高耐熱 高精度
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ 低ESR
高信頼性
車載用パワーインダクタ 大電流、低損失
高信頼性
高精度
高耐熱
チップバリスタ 小形
軽量化
温度センサ(カーエレ用) 高精度
高信頼性

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