クルマを監視・制御するVCUとは? ~外部信号を基に各種機器を制御する中核ユニット~

 

クルマを監視・制御するVCUとは?
~外部信号を基に各種機器を制御する中核ユニット~

2023-11-22

VCUは、車両の制御ユニットのひとつで、車両の動作や機能を監視・制御する役割を果たします。具体的な機能としては、車両に搭載されている電子システムやコンポーネントを統合・管理し、ドライバーや他ECUからの指示に基づいて適切な指示を出します。本記事では、VCUの機能とシステム構成について解説し、VCUを構成する電子部品についてもご紹介します。

VCUとは?

VCUの概要

VCU(Vehicle Control Unit)とは、車両制御システムの中核となるコントロールユニットのひとつです。車の電源機器、駆動機器、ボディ機器などを集約して制御する役割を持っています。具体的には、さまざまなセンサからの信号を基に、VCUは各種機器の操作命令を出します。車内のECUの管理方法には、ドメイン型とゾーン型がありますが、ドメイン型ではドメインコントローラー、ゾーン型ではZone-ECUが、それぞれVCUと同義であり、車体の要所ごとにECUを集約しています。

図1 VCUの全体構成
図1 VCUの役割

市場と機器のトレンドについて

現在生産されている車両の自動運転レベルはLv2以下が大半を占めますが、レベル3の自動運転機能を有する車両が今後増加していく見通しです。また、自動運転レベルの向上に伴い、さまざまな機能が追加され、高機能化することから機器を集約して制御するVCUの数も増加すると予想されます。

加えて、走行関連機器の電動化により、ECUでの制御が進んでいくと考えられます。制御を統合・高機能化した結果、機器の「処理量増加」、「電力増加」、「通信高速化」が課題となります。そのため、VCUを構成している電子部品についても、それらに対応していかなければなりません。

BMSの回路構成について

全体構成

  • トランシーバー:外部と通信するためのデバイスまたは回路
  • SoC、MCU(マイコン):データ等の処理・判断ほか、機器の制御
  • メモリ(DDR): データ処理時のバッファとして使用する
  • DC/DCコンバータ: バッテリーからの電圧を、電子部品や回路ごとに必要な電圧へと変換する
  • モータドライブ: 小型モータやソレノイド等の外部アクチュエータを駆動する
図2 VCUの全体構成
図2 VCUの全体構成

個別回路および構成部品

DC/DCコンバータ

DC/DCコンバータは主にFET、コイル、コンデンサで構成されています。入力部のノイズ除去と出力部の平滑には導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、電圧変換には車載用パワーインダクタ、電圧計測にはチップ抵抗(高精度チップ抵抗器)を用いるのが一般的です。

【使用される部品】

ノイズ除去、スイッチング・平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

POINT
  1. ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献

電圧変換 ―― 車載用パワーインダクタ

POINT
  1. ❶ 金属磁性材での低損失&大電流性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 損失特性の高周波化(低ACR)により、回路の高周波スイッチング化における損失抑制に貢献

電圧計測 ―― チップ抵抗器 (高精度チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶ 薄膜構造での抵抗値公差、低TCR性能により、回路の出力特性の高精度制御化に貢献
図3 DC/DCコンバータで使用される部品
図3 DC/DCコンバータで使用される部品

トランシーバー I/F

トランシーバー I/F回路では、2本の線を使って外部機器と通信します(CAN、Ethernetなど)。このとき、通信線にノイズや静電気が混入すると、トランシーバーICが故障する恐れがあります。そのため、トランシーバー回路には静電気対策用として静電気対策用としてチップバリスタ、ESDサプレッサを組み合わせるのが一般的です。

【使用される部品】

静電気対策 ―― チップバリスタESDサプレッサ

POINT
  1. ❶ 幅広い容量特性ラインナップにより、回路の通信品質を維持しながら静電気(ESD)ノイズの抑制に貢献
  2. ❷ チップバリスタは、8~250pFの容量特性により、低速から高速の通信速度に対応
  3. ❸ ESDサプレッサは、0.1pFの容量特性により、高速の通信速度に対応
図4 トランシーバー I/Fで使用される部品
図4 トランシーバー I/Fで使用される部品

モータドライブ

モータドライブ回路では、複数のスイッチング素子によって、電圧の変換を行います。スイッチング時の入力電圧変動がノイズとなるため、コイルとコンデンサを用いてノイズフィルタを構成します。また、スイッチング素子をOn/Offすることで変換動作を行いますが、素子のOn/Offの際にノイズが発生するため、ゲート端子に抵抗器を配して駆動ノイズを抑制します。

【使用される部品】

ノイズ除去・平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

POINT
  1. ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献

ノイズ除去 ・平滑 ―― 車載用パワーインダクタ

POINT
  1. ❶ 金属磁性材での低損失&大電流性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 損失特性の高周波化(低ACR)により、回路の高周波スイッチング化における損失抑制に貢献

スイッチング素子ゲート駆動ノイズ抑制 ―― チップ抵抗器 (小形高電力チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶独自の抵抗パターン、電極構造などにより小型高電力化を実現し、回路の小型化に貢献
図5 モータドライブ回路で使用される部品
図5 モータドライブ回路で使用される部品

まとめ

VCUは、外部からの信号を基に、各種機器(電源機器、駆動機器、ボディ機器)の操作命令を発令します。今後、自動運転のレベルの向上に伴い、さまざまな機能が追加され、高機能化することから、VCUの搭載数も増えていくと予想されます。さらに、走行関連機器の電動化により、ECUでの制御が進んでいくでしょう。それに伴う制御の統合化・高機能化によって、機器の処理量増加、電力増加、通信高速化が課題となります。これらに対応するため、VCUを構成する電子部品についても「大電流」「低損失」「小型化」「高周波数化」「高精度化(電圧)」は必然です。パナソニックインダストリーでは、VCU向けに幅広い商品ラインアップを取りそろえています(表1)。

表1 商品ラインアップと特長一覧
部品 特長 大電流 低損失 小型化 高周波 高精度
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ 低ESR
高信頼性
車載用パワーインダクタ 大電流、低損失
高信頼性
高精度、高耐熱
チップバリスタ 小形・軽量化
ESDサプレッサ 小形、高耐熱

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