電気自動車(EV)におけるDC/DCコンバータとは? ~高電圧から低電圧へ電圧変換する装置~

 

電気自動車(EV)におけるDC/DCコンバータとは?
~高電圧から低電圧へ電圧変換する装置~

2023-09-22

EVには、大型で高電圧のリチウムイオンバッテリーと、エンジン車にも使われる低電圧の鉛バッテリーが搭載されています。どちらのバッテリーも充電が必要で、リチウムイオンバッテリーは充電スタンドで、鉛バッテリーはリチウムイオンバッテリーから充電する必要があります。このとき、一定の直流電力を異なる直流電力へ変換する機器がDC/DCコンバータです。本記事では、DC/DCコンバータの機能とシステム構成について解説し、構成している電子部品についてもご紹介します。

DC/DCコンバータとは?

DC/DCコンバータの概要

EVのあらゆる機器は電気で動作します。走行用モータなどは、大型・高電圧のリチウムイオンバッテリーの電力によって動作し、他の多数の車載機器(ECU、カメラ、ライトなど)は、低電圧の鉛バッテリーの電力で動作します。鉛バッテリーは充電しなければ電欠になってしまうため、リチウムイオンバッテリーから充電する必要があります。そこで、高電圧直流電力を低電圧直流電力へ変換するのがDC/DCコンバータです。低電圧へ変換することで、EVのさまざまな車載機器が適切な電圧で動作できるようになります。

DC/DCコンバータの概要

高電圧と低電圧の使い分け

  • 高電圧の用途
    走行用モータを動作させるためには、高電圧が必要です。モータは大電力のため、低電圧で動作させようとすると大電流が流れ、回路での損失が大きくなり変換効率が悪くなってしまいます。効率を向上させるためには、高電圧(400V以上)にして電流を抑制することが必要です。
  • 低電圧の用途
    低電圧は、走行モータに関係する機器以外(車室内の各種機器やヘッドライトなど)に使用します。また、高電圧の機器であっても、内部の制御回路は低電圧で動作します。そのために、高電圧から低電圧に変換するDC/DCコンバータが必要不可欠なのです。

なぜ低電圧は12Vなのか

初期の自動車は、手動でエンジンを始動していましたが、セルモータで始動する仕組みが開発されました。そのセルモータを動かすために、鉛バッテリーを搭載していました。現在、乗用車では、6個の鉛バッテリーセルを組み合わせた12Vのバッテリーを使用しています(各セルは約2.1V)。ただし、トラックの場合はエンジンのセルモータが大型のため、24V(12Vバッテリー×2個)が一般的です。

市場と機器のトレンドについて

今後、EVの車両台数増加に伴い、DC/DCコンバータの数も増加していく見込みです。さらに、各種機器の電動化により、高電力化への対応も必要です。加えて、DC/DCコンバータの一層の高出力化と、小型化という要求もあります。その実現のためには、電子部品には高電圧(高耐電圧)、大電流、低損失、高耐熱、小型化、高精度といった性能が重要となります。

DC/DCコンバータの回路構成について

全体構成

  • 電圧検出(入力側):リチウムイオンバッテリーからの入力電圧を計測
  • ノイズフィルタ(入力側):コンデンサとコイルでノイズを除去
  • 電圧変換回路:絶縁タイプのトランスとFETなどによるスイッチングによって電圧を変換
  • ノイズフィルタ(出力側):コンデンサとコイルでノイズを除去
  • 電圧検出(出力側):出力電圧を計測
  • 制御回路:変換回路などを制御
  • DC/DCコンバータ:制御回路向けの電源供給
  • 通信回路:外部との通信回路
図1 DC/DCコンバータの全体構成
図1 DC/DCコンバータの全体構成

個別回路および構成部品

電圧計測 (入力/出力)

電圧計測の回路では、電圧変換回路を制御するために、入力と出力の電圧を計測します。計測は複数の抵抗を接続して抵抗の両端電圧を測定するのが一般的です。

【使用される部品】

電圧計測 ―― チップ抵抗器 (高精度チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶ 薄膜構造での抵抗値公差、低TCR性能により、回路の出力特性の高精度制御化に貢献

ノイズフィルタ (入力/出力)

ノイズフィルタ回路では、外部から、または当回路のノイズを抑制して、回路の誤動作を防止します。フィルタは大型のインダクタとフィルムコンデンサ又は導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサを組み合わせて用います。

【使用される部品】

ノイズ除去 ―― 自動車用・産業インフラ用フィルムコンデンサ

POINT
  1. ❶ 高信頼性 : 高耐湿性と高耐熱衝撃性を実現し、AEC-Q200に準拠
  2. ❷ 高安全性 : 保安機構(ヒューズ)により高い安全性を確保 (故障モードがオープン)

ノイズ除去、平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

POINT
  1. ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献

電圧変換回路

電圧変換回路では、スイッチング素子とトランスなどを使ったスイッチングによって電圧の変換を行います。スイッチング素子をOn/Offさせることで変換動作を行いますが、素子のOn/Offの際にはノイズが発生するため、素子ゲート端子に抵抗を用いて抑えます。

【使用される部品】

スイッチング素子ゲート駆動ノイズ抑制 ―― チップ抵抗器 (小形高電力チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶ 独自の抵抗パターン、電極構造などにより小型高電力化を実現し、回路の小型化に貢献

DC/DCコンバータ

DC/DCコンバータ回路では、入力部のノイズ除去と出力部の平滑化のためには導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、電圧変換には車載用パワーインダクタを用いるのが一般的です。

【使用される部品】

ノイズ除去、スイッチング・平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

POINT
  1. ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献

電圧変換 ―― 車載用パワーインダクタ

POINT
  1. ❶ 金属磁性材での低損失&大電流性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 損失特性の高周波化(低ACR)により、回路の高周波スイッチング化における損失抑制に貢献

コミュニケーション I/F

コミュニケーションI/F(通信)回路では、2本の線を使って外部機器と通信します(CAN、Ethernetなど)。このとき、通信線からノイズや静電気が混入すると、トランシーバーICが故障する恐れがあります。そのため、トランシーバー回路には静電気対策用としてチップバリスタを用います。

【使用される部品】

ESDノイズ除去 ―― チップバリスタ

POINT
  1. ❶ 幅広い容量特性ラインナップにより、回路の通信品質を維持しながら静電気(ESD)ノイズの抑制に貢献
  2. ❷ チップバリスタは、8~250pFの容量特性により、低速から高速の通信速度に対応

まとめ

EVにおいて、モータ以外の車載機器の多くは、車両の主電源電圧よりもずっと低い電圧で動作します。そこで、リチウムイオンバッテリーが出力する高電圧直流電力から低電圧直流電力へ変換する機器がDC/DCコンバータです。今後、EV増加に伴って、DC/DCコンバータの搭載数も増加していくでしょう。
また、各種機器の電動化と高電力化に伴い、DC/DCコンバータの高出力化も目指す必要があります。今後、車載電子部品には高電圧(高耐電圧)、大電流、低損失、高耐熱、小型化といった性能がより求められるでしょう。パナソニックインダストリーでは、DC/DCコンバータ向けに幅広い商品ラインアップを取りそろえています(表1)。

表1 商品ラインアップと特長一覧
部品 特長 高電圧 大電流 低損失 小型化 高耐熱 高精度
自動車用・産業インフラ用フィルムコンデンサ 高信頼性
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ 低ESR
高信頼性
車載用パワーインダクタ 大電流、低損失
高信頼性
高精度、高耐熱
チップバリスタ 小形・軽量化

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