電気自動車に搭載されるオンボードチャージャー(OBC)とは? ~高効率でバッテリー充電時間の高速化を実現するAC/DC変換システム~

 

電気自動車に搭載されるオンボードチャージャー(OBC)とは?
~高効率でバッテリー充電時間の高速化を実現するAC/DC変換システム~

2023-07-21

OBCとは、電気自動車のバッテリー充電時に使用する機器です。充電スタンドからの電力を、バッテリーに必要な電圧へ変換する働きがあります。EVは今後ますます増加することが見込まれており、OBCはバッテリーの容量増加に伴い、高出力化が必要不可欠です。本記事では、OBCの機能とシステム構成について解説し、OBCを構成している電子部品についてもご紹介します。

オンボードチャージャー(OBC)とは?

OBC(ON-BOARD CHARGER)とは、バッテリーを充電するときに使用する機器です。充電スタンドからの電圧(AC)をバッテリーに必要な電圧(DC)へ変換する役割があります。OBCは、電気自動車(Electric Vehicle:EV)やプラグインハイブリッド自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:PHEV)に使用します。一般的に住宅や、公共の充電ステーションからの交流電力を使用して、車両を充電します。OBCの出力としては、 3.6kW~22kWクラスが多くを占めています。

EV充電のタイプについて

・普通充電
普通充電は、バッテリーをフル充電する目的で使用します。住宅や充電ステーションのAC電圧を使用して車両のバッテリーを充電します。バッテリーをフル充電するまでに、8時間ほど掛かるのが一般的です。普通充電の場合、車両に搭載されたOBCを通して、AC電源を車両のバッテリーに適したDC電源へ変換します。

・急速充電
急速充電は、短時間での継ぎ足し充電する目的で使用します。充電ステーションの各バッテリー電圧に応じたDC電圧を使用して、大電力かつ短時間で車両のバッテリーを充電します。バッテリーの容量にもよりますが、充電時間は30分から1時間が一般的です。充電器は、高速道路のサービスエリアや商業施設に多く設置されています。

表1 充電タイプ別の特長
充電タイプ 充電スタンド 設置場所 OBC 充電時間 用途
普通充電 ACを出力
(AC200V,400V,等)
自宅,会社,等 DCへ変換し出力
(バッテリー電圧)
長時間
(~8h程度)
フル充電向け
急速充電 バッテリーに必要なDCで直接出力 高速,商業施設 使用しない 短時間
(0.5~1h程度)
短時間での補給向け

バッテリー容量とOBCの出力について

バッテリー容量は、車種(コンパクト、SUV、スポーツ車など)によって様々です。OBCの出力は、国や地域によって仕様が異なりますが、8時間程度でフル充電できるように設定がされています。

市場と機器のトレンドについて

今後は、EVがさらに増加する見込みです。さらに、バッテリー容量の増加に合わせて、高出力化が必要不可欠となります。それに加えて、充電時間の高速化やバッテリーの小型化にも対応しなければなりません。その実現のためには、電子部品には高電圧(高耐電圧)、大電流、低損失、高耐熱、小型化といった性能が重要となります。

OBCの回路構成について

全体構成

OBCシステムは下記回路によって構成されます。

  • 電圧計測(入力):変換回路の制御の為に電圧計測する
  • ノイズフィルタ(入力):外部から又は当回路からのノイズを抑制する
  • 全波整流回路:AC(交流電圧)をDC(直流電圧)へ変換する
  • PFC(Power Factor Correction)回路:波形の位相ずれによる効率悪化を改善する
  • 電圧変換回路:絶縁タイプのトランスとFET等によるスイッチングにて、電圧を変換する
  • ノイズフィルタ(出力):当回路から発生するノイズを抑制する
  • 電圧計測(出力):変換回路の制御の為に電圧計測する
  • 制御回路:変換回路等を制御
  • DC/DCコンバータ:制御回路向けの電源供給
  • コミュニケーションIF:外部との通信回路
図1 OBCシステムの全体構成
図1 OBCシステムの全体構成

個別回路および構成部品

電圧計測 (入力/出力)

電圧計測の回路では、電圧変換回路の制御を行う為に入力、出力の電圧を計測します。計測は複数の抵抗を接続して抵抗の両端電圧を測定するのが一般的です。

【使用される部品】

電圧計測 ―― チップ抵抗 (高精度チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶ 薄膜構造での抵抗値公差、低TCR性能により、回路の出力特性の高精度制御化に貢献

ノイズフィルタ (入力/出力)

ノイズフィルタ回路では、外部から又は当回路からのノイズを抑制し、回路の誤動作を防止します。
フィルタは大型のインダクタと、フィルムコンデンサを組み合わせて用いるのが一般的です。

【使用される部品】

ノイズ除去 ―― 自動車用・産業インフラ用フィルムコンデンサ

POINT
  1. ❶ 高信頼性 : 高耐湿性と高耐熱衝撃性を実現し、AEC-Q200に準拠
  2. ❷ 高安全性 : 保安機構(ヒューズ)により高い安全性を確保 (故障モードがオープン)

全波整流回路, PFC回路

全波整流回路では、ACからDCへ変換を行い、PFC回路では整流の際の位相ずれによる効率悪化を改善します。整流では変換の際の電圧の平滑化の為に、コンデンサを用いるのが一般的です。
PFC回路では、スイッチングにて位相改善を行う為、コイルとコンデンサを用いるのが一般的です。

【使用される部品】

電圧平滑 ―― 自動車用・産業インフラ用フィルムコンデンサ

POINT
  1. ❶ 高信頼性 : 高耐湿性と高耐熱衝撃性を実現し、AEC-Q200に準拠
  2. ❷ 高安全性 : 保安機構(ヒューズ)により高い安全性を確保(故障モードがオープン)

電圧変換回路

電圧変換回路では、スイッチング素子とトランス等にてスイッチングによって電圧の変換を行います。
スイッチング素子をOn/Offさせる事で変換動作を行いますが、素子のOn/Offの際にノイズが発生する為、素子ゲート端子に抵抗を用いるのが一般的です。

【使用される部品】

スイッチング素子ゲート駆動ノイズ抑制 ―― チップ抵抗器 (小形高電力チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶ 独自の抵抗パターン、電極構造などにより小型高電力化を実現し、回路の小型化に貢献

DC/DCコンバータ

DC/DCコンバータ回路では、入力部のノイズ除去と出力部の平滑には導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、電圧変換には車載用パワーインダクタを用いるのが一般的です。

【使用される部品】

ノイズ除去、スイッチング・平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

POINT
  1. ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献

電圧変換 ―― 車載用パワーインダクタ

POINT
  1. ❶ 金属磁性材での低損失&大電流性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 損失特性の高周波化(低ACR)により、回路の高周波スイッチング化における損失抑制に貢献

コミュニケーション I/F

コミュニケーションI/F(通信)回路では、2本の線を使って外部機器と通信します(CAN、Ethernetなど)。このとき、通信線からノイズや静電気が混入すると、トランシーバーICが故障する恐れがあります。
そのため、トランシーバー回路には静電気対策用としてチップバリスタで構成するのが一般的です。

【使用される部品】

ESDノイズ除去 ―― チップバリスタ

POINT
  1. ❶ 幅広い容量特性ラインナップにより、回路の通信品質を維持しながら静電気(ESD)ノイズの抑制に貢献
  2. ❷ チップバリスタは、8~250pFの容量特性により、低速から高速の通信速度に対応

まとめ

OBCは、EVやPHEVのバッテリーを充電する時に使用する重要な機器です。今後、EV増加に伴い、OBCの搭載数も増加していくでしょう。また、バッテリー容量の増加に合わせて、高出力化も目指さなければなりません。今後、車載電子部品には高電圧(高耐電圧)、大電流、低損失、高耐熱、小型化といった性能がより求められるでしょう。パナソニックインダストリーでは、OBC向けに幅広い商品ラインアップを取りそろえています(表2)。

表2 商品ラインアップと特長一覧
部品 特長 高電圧 大電流 低損失 小型化 高耐熱 高精度
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ 低ESR
高信頼性
車載用パワーインダクタ 大電流、低損失
高信頼性
高精度、高耐熱
チップバリスタ 小形・軽量化
自動車用・産業インフラ用フィルムコンデンサ 高信頼性

この記事に関する製品情報

関連記事

この記事に関連するタグ

↑Page top

無料資料ダウンロード
技術資料ダウンロード 技术资料下载 Technical document downloads img
電気自動車に搭載されるオンボードチャージャー(OBC) とは?
~高効率でバッテリー充電時間の高速化を実現するAC/DC変換システム~

電気自動車のバッテリー充電時に使用するオンボードチャージャー(OBC)の機能とシステム構成について解説し、OBCを構成している電子部品についても紹介します。
ダウンロードページへ »