チップ抵抗器におけるソフト樹脂端面電極の役割
~熱サイクルによるはんだクラックを抑制する~
2024-12-20
抵抗器は電気回路内で電流の流れを調整し、電圧を管理する役割を持ちます。チップ抵抗器とは、はんだ接続を用いて回路基板に固定される抵抗器のひとつです。当社の角チップ抵抗器は、熱膨張・収縮の影響で発生するはんだクラックの対策として、独自に開発したソフト樹脂端面電極を採用しています。*1この技術は端面電極の柔軟性を高めることで、はんだ接合部にかかる応力を緩和し、はんだクラックに至るまでの時間を延ばし、抵抗器の耐久性と信頼性を大幅に向上させます。
チップ抵抗器の役割と抵抗器の使われ方
抵抗器の役割
抵抗器とは、電気回路の中で電流の流れを調整する役割を持ち、回路中に流れる電流を小さくしたり、電圧を下げたりします。水道の蛇口のような働きがあり、水(電流)の量をコントロールして適切な量にします。

抵抗器の使われ方
チップ抵抗器を回路基板に接続する一般的な方法として、「はんだ接続」があります。はんだは、チップ抵抗器を基板に固定するための接着剤のようなものです。チップ抵抗器をはんだが塗られた場所に置き、加熱するとはんだが溶けます。はんだが冷え固まると、抵抗器は基板にしっかりと接続され、電流が流れるようになるのです。抵抗器は単体で使用することはなく、回路基板に接続された状態で使用します。

抵抗器に求められる性能と品質問題
一般に抵抗器の性能として最も重要なのは、長期間にわたり様々な環境条件下で抵抗値を安定して保つことです。しかしながら、抵抗器の品質に影響を与える問題として、温度変動によるはんだ接合部の割れが挙げられます。これは「はんだクラック」と呼ばれる現象で、この状態になると抵抗器そのものに損傷が無くても、回路が機能しなくなることがあります。このような品質問題への対応は、抵抗器の信頼性を保つために極めて重要です。

はんだクラックの発生原理
はんだクラックの発生原理は、接合された材料間の熱膨張率の違いによるものです。例えば、チップ抵抗器では、熱膨張率が小さいアルミナ基板(チップ抵抗器の構成体)と熱膨張率が大きいプリント基板がはんだ接合されています。異なる熱膨張率を持つ材料が接合されている場合、温度変化によって物質が膨張と収縮を繰り返すことで、接合部に不均一な応力が発生します。はんだ接続部に繰り返し負荷がかかり、結果としてはんだクラックが発生するのです。

ソフト樹脂端面電極によるはんだクラックの延命策と効果
当社が開発したソフト樹脂端面電極は、はんだクラックを抑制するために設計されています。これは、端面電極の柔軟性を高めることでクッション機能を持たせ、はんだ接合部にかかる応力を緩和する技術です。結果として、はんだクラックに至るまでの時間が延長されます。

通常、端面電極の柔軟性と耐熱性はトレードオフの関係にあります。耐熱性が高いと材質が硬くなり、はんだクラックが発生しやすくなります。一方で、柔軟性を重視すると密着性が低下し、はんだとチップがはがれやすくなってしまうのです。しかし、当社のソフト樹脂端面電極は、この二つの特性を両立させることに成功しました。効果については、様々な端面電極との比較テストの結果から明らかになっています。

テストでは、低温と高温を繰り返した時のオープン(回路が断線すること)発生率を測定しました。その結果、ソフト樹脂端面電極は金属皮膜電極(スパッタリング)やハード樹脂端面電極よりもオープンの発生開始までのサイクルが長く、オープン発生率の増加も穏やかであることが確認できました。この技術によって、抵抗器の接続信頼性が大幅に向上し、長期間にわたって安定した性能を維持できるようになりました。

端面電極 | ソフト樹脂 | ハード樹脂 | 金属被膜(スパッタリング) |
材質の硬さ | 柔らかい | 硬い | 非常に硬い(金属) |
耐熱性 | 高い | 高い | 高い |
はんだ接合部の 応力緩和 |
高い | 低い | なし |
液相熱衝撃試験 -55℃⇔125℃ 3000サイクル後 |
![]() |
![]() |
![]() |
クラックなし | クラックあり | クラックあり |
まとめ
当社の角チップ抵抗器はソフト樹脂端面電極を採用し、はんだクラックを抑制します。*1この技術によって、端面電極の柔軟性を高め、接合部の応力を緩和し、はんだクラックの発生を遅らせる効果があります。これにより、抵抗器の耐久性と信頼性が向上し、安定した性能が長期間維持されます。
*1 ソフト樹脂端面電極を適用している製品詳細については、Webお問い合わせフォームまたは、弊社担当営業にお問い合わせください。