チップ抵抗器の採用事例(1) 

 

チップ抵抗器の採用事例(1)
~小型、高耐電圧、高精度チップ抵抗器による員数削減と信頼性向上~

2022-03-18

気候変動問題への対応のため、欧州の先進国で始まった自動車の電動化の動きは、いまや全世界に広がっています。数十年後にはEVしか販売できないという政策をとる国も出てきており、EVへのシフトは急激に進んでいます。

EVはいうまでもなくバッテリーの電力でモーターを回して推進力にしているわけですが、バッテリーの電力はメインのモーターだけなく、ステアリングやパワーウインドウの駆動モーター、ドアミラー、制御システム、通信システムなど車内のほとんどすべてを動かしています。バッテリー自体の性能は向上していますが、EVの航続距離は内燃機関を動力とする従来の自動車に比べるとまだまだ短く、限りある充電容量を最大限に生かすために、バッテリーからの直流を駆動モーターが必要とする交流に変換するインバータや、バッテリーの劣化をできるだけ抑えて長期間性能を維持するためのBMS(バッテリーマネジメントシステム)の役割は非常に重要と言えます。

そのインバータやBMSの回路に多数使用される抵抗器では、用途によって要求される特性が異なりますが、パナソニックの抵抗器は高電圧、高温、高精度などの優れた特長を評価されて、お客様に採用いただいています。今回はそうした中からBMSに関する2つの採用事例をご紹介します。

バッテリーモジュールの小型化と実装コスト削減
~BMSの電圧監視/高電圧モニター回路で使われる高電圧用チップ抵抗器~

EVのバッテリーは、小さな電池セルを組み合わせたモジュールをさらに複数接続し、高電圧を実現しています。このバッテリーのBMSの電圧監視に使われる高電圧モニター回路において、あるお客様の最高使用電圧1500Vのバッテリーにおける従来設計では、2012サイズ(2×1.2mm)抵抗値300kΩ、耐電圧150Vの薄膜抵抗器を10個直列で使用されていました。 これに対して、パナソニックの3216サイズ(3.2×1.6mm)の抵抗値1MΩ、耐電圧500Vの薄膜抵抗器(品番:ERA8PEB1004V)を3個直列にした置き換え提案を採用いただきました。 その結果、2012サイズの抵抗器10個で構成した場合の基板上の実装面積が40.25mm2であるのに対して、パナソニックの薄膜抵抗器で置き換えることで、実装面積は21.15mm2と、約47.5%の面積削減に貢献しました。

この「ERA8P」シリーズは、許容差±0.1%、温度特性(TCR)±25(x10-6/K)と非常に高精度です。さらにこの精度を長期間維持できる生涯寿命(トータルトレランス)を考慮した設計も特長となります。具体的には、長期使用時の主要なトラブルの1つである基板と抵抗器の熱収縮の差によって起きるはんだクラックを、パナソニック独自技術である、応力を吸収できる部材と設計の工夫によって抑制しています。一般的に、抵抗器のサイズが大きくなれば熱収縮の差による応力は大きくなりますが、パナソニックのチップ抵抗器であれば薄膜タイプでも厚膜タイプでも、他社製品よりも接続信頼性に優れています。

図 従来設計との比較
図 従来設計との比較

こうした生涯寿命設計のメリットとして、抵抗値の劣化が非常に小さく、バッテリーの劣化状態を長期間、高精度に検出することが可能になります。これによって、EVバッテリーの異常時の予兆検出に貢献できます。

多数使われるオペアンプ増幅回路の小型化、高寿命化に貢献

バッテリー電圧を、必要な電圧に引き上げるためのオペアンプ増幅回路では、高精度な抵抗器が使用されています。オペアンプ増幅回路では、基本的には2つの抵抗器(R1、R2)の抵抗値の比(差)によって増幅度が決まるため、抵抗器の耐高電圧性能はそれほど必要ありませんが、精度は非常に高いものが求められています。そのためEVメーカーは、より高精度である薄膜抵抗器を使用するケースが多くなっています。

図 オペアンプ増幅回路
図 オペアンプ増幅回路

このオペアンプ増幅回路に使用する薄膜抵抗器において、パナソニックの「ERA*V」シリーズでは、他社製品と同等の性能を1サイズ小さな製品で提供できるため、基板面積の削減が可能となります。事例として、1608サイズ(1.6×0.8ミリメートル)、定格電力0.1W、最高使用電圧75Vに対して、パナソニックの薄膜抵抗器1005サイズ(1.0×0.5㎜)、電力0.1W、最高使用電圧75Vの「ERA2V」シリーズで置き換えることで、実装面積を約60.3%削減することが可能となります。

薄膜抵抗器は厚膜抵抗器と比較して、一般的に過負荷や静電気放電(ESD)の突入電圧などに弱く壊れやすいという弱点があります。しかしパナソニックの「ERA*V/K/P」シリーズにおいては、ESD対策を施しており、人間が帯電する程度の静電気(1k~1.5kボルト)を考慮した設計となっています。具体的には2012サイズで2kV、1608サイズが1.5kボルト、1005サイズは1.0kボルトまでそれぞれ保証しており、これは業界最高クラス(2022年3月時点)です。

オペアンプ増幅回路においてERA*V品では基盤面積削減に貢献
従来設計との比較表 置換え事例従来設計との比較表 商品ラインアップ
図 従来設計との比較表

同様に薄膜抵抗器の弱点とされる、熱衝撃(実装後の熱収縮)によるはんだのクラック、はんだ付けの際に使われるフラックスなどが侵入することで起きる電解腐食(硫化特性)に対しても、耐性を持った高信頼性・高耐候性製品をご用意しています。従来製品や他社製品に対するこれらの優れた特長は、材料や設計の見直しによって可能になったものです。

図 当社薄膜抵抗器の特長
図 当社薄膜抵抗器の特長

パナソニックの独自技術により実現した、小型でかつ高信頼性、高耐候性を兼ね備えた薄膜抵抗器により、実装面積の削減・低コスト化、信頼性向上に貢献します。

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