車載CAN-FD対応「チップ形積層バリスタ 2in1タイプ」
2025-1-17


所属学会:日本セラミックス協会、静電気学会、自動車技術会
論文 :自動車技術会論文集(Vol55,No.1,January 2024)

近年、車の電子化により車載通信の高速化が進む中、CAN-FD差動伝送ラインのHighとLowの静電容量差に起因したノイズの発生と通信品質の低下が課題となっています。また、多くの車でセンサーや位置情報を処理するICの搭載数が増加し、車載ハーネスに流れる電流も増え、車載機器のEMC(電磁両立性)性能への要求が高まっています。
そこで当社は、長年培ってきたバリスタ材料技術と、積層チップ部品の設計力を活かし、高いESD保護性能を維持しながら、2素子分のバリスタ機能を1つにした車載用「チップ形積層バリスタ 2in1タイプ」を開発しました。
特長
- 2in1構造で静電容量差を1.0pF以下に低減し、高い通信信号品質を実現
- 高いESD保護性能とEMC性能を両立 (EMC試験で高い通信安定性を確保)
- 部品点数削減により、お客様の工程における材料・エネルギーの削減に貢献
1. 2in1構造で静電容量差を1.0pF以下に低減し、高い通信信号品質を実現
従来、CAN、CAN-FDに代表される差動伝送ラインのESD対策には、チップ形積層バリスタを伝送ラインのHighとLowに個別に配置するため、個々の静電容量差の影響で、高速通信での信号品質の安定性担保が困難でした。
新製品は、独自の2in1構造とプロセス設計で、1個の1608サイズの部品に2ライン用のESD対策の機能を実現することで、差動伝送ラインのHighとLowの静電容量差を1.0pF以下(当社従来品を2個使った場合に比べて1/5以下)に抑え、高い通信品質を実現しました。

2. 高いESD保護性能とEMC性能を両立(EMC試験で高い通信安定性を確保)
新製品は、1968年に当社が開発したバリスタ材料をベースに改良を加え設計した商品で、高いESD保護性能(25kV 10回@150pF 330Ω)を持ちます。従来使用されているツェナーダイオードでは、EMS試験の1種であるBCI試験で通信エラーが発生しやすい傾向がありますが、新製品では同試験において高い通信安定性を維持できます。
CAN-FD評価ボードを用い,ドーターボードに同じ構成・仕様のサンプルを準備し対向通信させBCIノイズによる通信エラーの有無及びCAN-H/L,Rxdの波形観測を実施。
EMC試験条件:1MHz~505MHz/200mA
注入時間: 2秒 注入回数: 1回 注入箇所: ECUから150mm
CAN-FD通信 :通信レート 5Mbps

試験サンプル | 試験結果 (通信エラー有無) |
|
---|---|---|
チップ型積層バリスタ |
![]() |
Pass |
ツェナーダイオード (CAN-FD用) |
![]() |
Fail |
3. 部品点数削減により、お客様の工程における材料・エネルギーの削減に貢献
新製品(1608サイズ 1.6mm x 0.8mm )を1個使用した場合、当社従来品(1005サイズ 1.0mm x 0.5mm)を 2個使用した場合と比べて、同等の性能でありながら、実装点数を半減することができます。部品点数削減により、お客様の組み立て工程での実装材料、実装時のエネルギーを削減し、環境負荷の軽減に貢献します。

アプリケーション

仕様
製品品番 | EZJPRV270RM |
---|---|
最大許容回路電圧 | DC 16V |
パリスタ電圧 | 27V (24.3 ~ 32.4V) |
静電容量 | 15pF±3.0pF@1MHz |
静電容量差 | 1.0pF max. |
制限電圧 | 60V max. |
ESD耐性 | IEC61000-4-2 150pF/330Ω 接触放電 25kV |