EV充電器(OBC)向け車載用フィルムコンデンサを紹介
2022-10-21
近年環境対応への意識が高まり、排ガス規制への取り組みがより一層自動車メーカーへ要求されています。それにともない多くの自動車メーカーは、従来の内燃機関を搭載した自動車から電気自動車(EV)へ開発の基軸をシフトしており、EV関連市場は年々拡大しています。ただしEVの普及に向けては、航続距離、充電インフラ、安全性など乗り越えるべき多くの課題があります。今回はそんな次世代EV車の実現に向けて、パナソニックが開発したEV充電器のオンボードチャージャー(OBC)向けフィルムコンデンサを例に紹介します。
OBC向け商品ラインアップ
EVの航続距離を伸ばすために最も重要なコンポーネントであるバッテリーの容量を増やすことは重要なファクターで、そのためにますます高出力のEV充電器の設計が必要になります。パナソニックでは、このようなニーズに応えるべく、大電流対応、高信頼性、高安全性を特長とする車載用フィルムコンデンサECQUA、ECWFG、EZPV シリーズをラインアップし、大電力のOBCの設計・開発に貢献しています。
高信頼性を実現するパナソニックの技術
当社独自の外装封止技術とアルミ蒸着により高次元の耐湿性と耐熱衝撃性を確保し、AEC-Q200に準拠することで、高信頼性を要求される自動車用途に最適な部品を開発しました。
図2と図3は、高耐湿外装+アルミ蒸着(青線)と一般外装+Zn蒸着(赤線)における耐湿負荷試験(85℃ 85% 240VAC)と耐湿ストレス後(60℃ 95% 275VAC 1000h)の高周波ステップアップ負荷試験の結果を示しています。
結果から耐湿負荷試験においては、従来の一般外装+Zn蒸着の場合、Zn蒸着が酸化されて容量減少するとともにtanδ(抵抗成分)も高くなっているのに対し、高耐湿外装+アルミ蒸着では、水分に強く特性劣化がほとんど見られません。
また耐湿ストレス後の高周波ステップアップ負荷試験におけるコンデンサ表面温度の上昇を比較では、従来の一般外装+Zn蒸着の場合は、耐湿ストレスによるtanδ劣化が大きいため、高周波負荷における温度上昇が大きくなり、ショート破壊に至りやすくなるのに対し、高耐湿外装+アルミ蒸着では高周波負荷における温度上昇が小さく不良が生じにくいことが分かります。
高安全性を実現するパナソニックの技術
機器の安全性を担保するため、各部品のライフエンド時の高安全性設計への対応が求められます。このような要求に対し、パナソニックではフィルムコンデンサに保安機構(ヒューズ機能)を備えています。
通常はコンデンサ内部のどこかで絶縁破壊が発生すると全体破壊につながりますが、パナソニックのフィルムコンデンサは高精細なパターン技術により多数のコンデンサセルに分割しており、もし絶縁破壊が発生してもそのセルを切断(ヒューズ機能)して破壊が全体に進行しない構造になっています。蒸着膜にヒューズ部を最適配置して故障モードをオープンに誘導することでショートモードによる発火発煙事故を防止し、セットの高安全化に貢献します(図4)
まとめ
今回はEV充電器の高出力化と安全性に貢献する、大電流・高信頼性・高安全性を特長とするフィルムコンデンサの技術について紹介しました。今後も成長が見込まれるEVを含む環境対応車市場において、各部品への高性能化、また高信頼性および安全性への要求がより一層高まってきます。パナソニック インダストリーでは、幅広い商品ラインアップと高機能なデバイス開発でさらなる機器の性能向上に貢献します。