コンデンサの基礎知識(1)
~仕組み・使い方・特性~
2018-05-28
コンデンサとは、電気を貯めることができ、貯めた電気を必要な時に放電することができる受動部品です。このページではコンデンサの仕組みとして、構造、電気用図記号、電圧と電流や基本的な使い方、特性を説明します。
コンデンサの基本構造
コンデンサは簡単に言うと、電気を貯めることができ、貯めた電気を必要な時に放出することができる部品です。蓄積できる電気(電荷)は電池と比較すると少ないので、電荷の放出(放電)においては短時間しか電流を供給できませんが、充電(電荷の蓄積)と放電は繰り返すことができます。
コンデンサの模式図を示します。絶縁体(誘電体)を金属板(電極)で平行に挟んだものがコンデンサです。その金属板(電極)間に直流電圧を印加すると電荷が蓄積します。これがコンデンサの蓄電原理です。蓄えられる電荷の量を静電容量と言い、静電容量Cは、絶縁体の誘電率ε、電極の表面積S、絶縁体の厚さdで決まります。
S
d
- C
- 静電容量
- ε
- 絶縁体の誘電率
- S
- 電極 表面積
- d
- 絶縁体の厚さ
静電容量Cは、絶縁体の誘電率εを大きくする、電極の表面積Sを大きくする、絶縁体の厚みdを薄くすることで大きくすることができます。
コンデンサの電気用図記号
回路図に用いる電気用図記号は、国際規格IEC 60617に記されています。日本でも国際規格と合わせた規格としてJIS C 0617が制定されています(1997,1999)。コンデンサの図記号も一部変更されています。教育の場では新記号に統一されましたが、企業の設計現場などの実情は旧記号が未だに使用されている印象があります。以下は、代表的なコンデンサの記号です。
新記号 | 旧JIS記号 | |
---|---|---|
コンデンサ(極性なし) | ||
電解コンデンサ(極性有り) |
コンデンサの電圧と電流
コンデンサは、その内部が絶縁されているため直接的な電流の流れはありませんが、印加される電圧の変動により、充電と放電を行うことで、あたかもコンデンサに電流が流れているように見えます。 コンデンサに流れる電流の大きさは、電圧の時間的変化が大きいほど大きくなり、次式で示されます。
- Ic
- : コンデンサ電流 (A)
- C
- : 静電容量 (F)
- dVc/dt
- : V-t曲線における線の傾き
(例1) 充放電波形の場合
充電されていないコンデンサに抵抗を通じて直流電源からコンデンサに充電させた後、放電させる場合のコンデンサの電圧と電流について説明します。
回路図において、スイッチを充電側にONすると、コンデンサにはV0/R1のピーク電流が流れ、その後はコンデンサの電圧Vcが高くなるに従って電流は低くなり、Vc = V0となると充電が完了して電流がゼロとなります。
次に、スイッチを放電側にONすると、コンデンサにはV0/R2のピーク電流が流れ、その後はコンデンサの電圧Vcが低くなるに従って電流は低くなり、Vc = 0となると放電が完了して電流がゼロとなります。
ここで理解しておく必要があるのは、コンデンサの電流Icの大きさはコンデンサの電圧Vcの変化の大きさに従うということです。
また、スイッチON時には、V0/Rの電流が流れますが、ここでもしR=0ならば理論的には無限大の電流が流れて瞬時に充電や放電が完了することになります。
(例2) 交流波形の場合
コンデンサに交流電圧を印加した場合のコンデンサの電圧と電流について説明します。
例1でコンデンサに流れる電流の大きさはコンデンサの電圧の変化の大きさに従うと述べましたが、これは交流波形の場合でも同じです。
- ① まず電圧が0Vから上昇する時に電流は大きく流れますが、電圧の上昇速度が遅くなるに従い電流は低下し、電圧が最大になった時点(電圧の変化がゼロ)で電流はゼロとなります。
- ② 電圧が最大値から下降を始めると、マイナスの電流が流れ始め、電圧がゼロになったポイント(電圧の変化が最大)で電流は最大となります。
- ③ ,④の領域についても上記と同様に考えれば分かると思います。
また、電圧の変化が大きいと大きな電流が流れるということは、電圧の変化が大きい高周波ほど流れる電流が大きくなることも分かると思います。
この時流れる電流(実効値)は次式で示されます。
- Ic
- : コンデンサ電流 (Arms)
- π
- : 円周率 (3.14)
- f
- : 周波数 (Hz)
- C
- : 静電容量 (F)
- Vc
- : 電源電圧 (Vrms)
コンデンサの基本的な使い方
前述したように、コンデンサは、①充電と放電が瞬時にできる、②直流は通さないが交流は通す、③交流は周波数が高いほど通しやすい、という性質を持っており、電気回路ではこれらの性質を利用した使い方をします。
代表的な使い方の回路例を示します。
【放電回路】
放電回路はコンデンサに蓄えた電荷を放電させることで接続されている負荷を動作させる回路です。大電流を瞬時に放電できることから、カメラのストロボや、緊急時のバックアップ電源として使用されます。回路例では、スイッチを電源側に接続するとコンデンサは充電され、電源電圧にまで電荷が蓄積すると充電は止まります。スイッチを負荷(電球)側に接続するとコンデンサは放電を開始し、電球は点灯します。
【平滑回路】
平滑回路は交流を整流した後の脈流を滑らかにし直流に変換する回路です。代表的な例としては電源回路があります。交流の入力電圧をダイオードブリッジで整流(回路例では全波整流)した電圧の波(リプル、脈流)を、コンデンサよってより平坦にします。
【デカップリング回路】
デカップリング回路は名称の通り、信号の結合を分離するためにコンデンサを利用する回路です。この例では、基本の直流に周波数の高い交流成分(ノイズ)を含む信号経路に図のようにコンデンサを入れることで、周波数の高いノイズ成分だけがコンデンサを通過して分離され、以降にノイズが伝わらないようにしています。スイッチング電源でのスイッチングノイズを取り除く用途がこれにあたります。
【カップリング回路】
カップリング回路は、直流成分は通さず交流成分のみを通過させる回路です。オーディオ信号の増幅回路等で、直流成分による影響を排除(DCカットなどとも言う)したい場合に使用されています。
コンデンサの特性
理想的なコンデンサは静電容量成分だけですが、実際のコンデンサは抵抗成分やインダクタンス成分を含んでいます。これらの寄生成分は、コンデンサの性能に大きな影響を与えます。コンデンサの簡易等価回路を図に示します。図が示すように、実際のコンデンサの等価回路にはESR(等価直列抵抗)、ESL(等価直列インダクタンス)が含まれます。また、コンデンサの電極間は理想的には絶縁ですが、実際には若干の漏れ電流が存在します。
これらの成分についてまとめました。
特性項目 | 解説 |
---|---|
静電容量(C) | ・最も基本的な性能である ・製造ばらつき等で若干のばらつきが生じる ⇒静電容量許容差 (±5%, ±10% 等) |
等価直列抵抗(ESR) 誘電正接(tanδ) |
・誘電体の種類による抵抗成分や電極,端子の抵抗成分で決まる値 ・ESR(又はtanδ)が大きいと電流による発熱で故障の要因となる ⇒流せる電流が規制される(許容電流値・またESR(又はtanδ)が大きいとノイズ吸収効果が低減する。 |
絶縁抵抗 (IR) |
・主に誘電体の種類によって決まる漏れ電流の逆数 ・IRが低いと漏れ電流によるロスが大きくなる(アルミ電解コンデンサ等は漏れ電流を規定している) |
等価直列インダクタンス (ESL) |
・主にコンデンサの構造によって発生するインダクタンス成分 ・ESLが大きいと高周波域でインダクタンス成分が優勢となりコンデンサの性能がでなくなる |
加えて、もう1つ重要な特性として、インピーダンスがあります。 インピーダンスは簡単に言うと、交流回路での電圧と電流の比で、直流回路での抵抗に当たるものです。記号はZを用い、単位は抵抗と同じくΩを使います。
コンデンサのインピーダンス(Z)は次式①で表され、インピーダンスの絶対値は次式②で計算できます。
② |Z| =
- Z
- : インピーダンス [Ω]
- R
- : 抵抗成分=ESR [Ω]
- j
- : 虚数
- π
- : 円周率 (3.14)
- f
- : 周波数 [Hz]
- L
- : インダクタンス成分=ESL [H]
- C
- : 静電容量 [F]
この式から、次のことがわかります。
- 1) 周波数が低い領域では、ほぼ静電容量(C)でインピーダンスが決定される。
- 2) 自己共振周波数(2πf L = 1/(2πf C) となる周波数)では、ESRでインピーダンスが決定される。
- 3) 周波数が高い領域では、ほぼESLでインピーダンスが決定される。
これをグラフで示すと右図となります。
- 1) ノイズの周波数とコンデンサの自己共振周波数が近いこと。
- 2) ESRが小さいこと。
- 3) 高周波ノイズの場合、ESLが小さいこと。
コンデンサの種類
コンデンサには使う材料や構造などによっていろいろな種類があります。また、種類によって特徴が異なり、設計ではこれらの特徴に基づいて選択します。主なコンデンサの種類を下図に示します。
(電解コンデンサ)
それぞれのコンデンサの特徴については、次回詳しく説明します。