コンデンサの基礎知識(2)
~種類・特徴・用途~
2018-06-26
前回の記事において、コンデンサの仕組み・使い方・特性を紹介しました。
今回は、前回の続きとして、コンデンサの種類とそれぞれのコンデンサの特徴、用途等について紹介します。
コンデンサの種類
コンデンサには使う材料や構造などによっていろいろな種類があります。また、種類によって特徴が異なり、設計ではこれらの特徴に基づいて選択します。主なコンデンサの種類を下図に示します。
(電解コンデンサ)
可変コンデンサ
コンデンサは固定コンデンサが主流ですが、一定範囲で静電容量が変えられる可変コンデンサもあります。
可変コンデンサは、対向電極面積を変えて静電容量を変化させるものが一般的です。
また、可変コンデンサには、ラジオの選局などで頻繁に変化させるもの(バリアブルコンデンサ)と、回路の組み立て時に一度け調整のため変化させるもの(トリマコンデンサ)があります。
静電容量の変更は、ツマミやドライバーで行いますが、機械的に変化させる構造であるため、静電容量の大きなものを作ることが難しくpF (ピコファラド)レベルの小容量のものとなります。
無極性コンデンサと有極性コンデンサ
固定コンデンサは無極性コンデンサと有極性コンデンサに大別されます。
無極性コンデンサは、コンデンサの端子に印加する電圧の極性が規制されない、つまりどちらの端子がプラスであってもかまわないコンデンサです。無極性コンデンサであれば、ゼロ電位から上下する電圧を印加できるので、交流回路でも直接使用することができます。
無極性コンデンサはセラミックコンデンサとフィルムコンデンサが主流で、他にマイカコンデンサ、紙コンデンサ、空気コンデンサもあります。
それに対して有極性コンデンサは、2つの端子のどちらをプラス側とするかが決まっているコンデンサで、これを間違えて使用するとコンデンサが故障します。そのため、有極性コンデンサは直流電圧またはプラス側でのみ変動する電圧で使用しなければならないという制約があります。 しかし、有極性コンデンサのほうが小形・大容量のコンデンサを得やすいというメリットがあるため広く使われています。 アルミ電解コンデンサ・タンタル電解コンデンサ・導電性高分子(電解)コンデンサ・電気二重層コンデンサがこれにあたります。
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサは、誘電体に高誘電率のセラミックを用いたコンデンサで、以下の特長があります。
- ・無極性
- ・優れた高周波特性(低ESR)
- ・高耐熱
- ・長寿命
もともとは高耐圧/低容量の単板コンデンサでしたが、薄膜積層構造により小形大容量化した積層セラミックコンデンサの出現や、欠点であった温度特性(温度による静電容量の変化率が大きい)を克服した温度補償用の出現によりその使用範囲が大きく拡大し、コンデンサの中で最も多く使用されるコンデンサとなりました。 なお、温度補償用は従来の高誘電率系より形状が大きく大容量化しにくいため、用途により使い分けます。
但し、セラミックコンデンサには、DCバイアス特性(印加電圧により静電容量が大きく変化)や音鳴き(高周波による振動で異音が発生)、温度/機械的衝撃によりクラックが発生しやすいという欠点もあり、使用する上で注意が必要です。
フィルムコンデンサ
フィルムコンデンサは、誘電体にプラスチックフィルムを用いたコンデンサで、以下の特長があります。
- ・無極性
- ・優れた高周波特性(低ESR)
- ・優れた温度特性(温度による静電容量の変化率が小さい)
- ・静電容量の高精度対応可能
- ・長寿命
セラミックコンデンサと比較すると耐熱性は低いものの、優れた温度特性・静電容量の高精度対応可能の項目が追加されており、またDCバイアス特性や音鳴き、温度/機械的衝撃によるクラックの問題もありません。そのためセラミックコンデンサより高性能なコンデンサではありますが、形状が大きく高価という短所があるため、セラミックコンデンサではカバーできない電圧・容量域や高性能/高精度用途で使用されます。
フィルムコンデンサは、使用する誘電体によっても下記の特徴があり、用途によって使い分けを行います。
項目 | PET ポリエチレンテレフタレート |
PP ポリプロピレン |
PPS ポリフェニレンサルファイド |
PEN ポリエチレンナフタレート |
---|---|---|---|---|
フィルム単価 | ◎ | 〇 | × | △ |
小型化 | ◎ | △ | 〇 | ◎ |
耐熱性 | 〇 | △ | ◎ | ◎ |
耐湿性 | △ | ◎ | 〇 | △ |
tanδ(ESR) | 〇 | ◎ | ◎ | 〇 |
使い分け | ・リード線タイプ ・一般用 |
・リード線タイプ ・高周波/大電流用 |
・表面実装タイプ ・低圧 ・フロー/リフロー |
・表面実装タイプ ・中圧 ・リフロー |
PETとPPはリード線タイプの誘電体であり、以前は小形で低価格のPETが一般用で、優れた高周波特性(低ESR)のPPが高周波/大電流用という棲み分けでしたが、PPは高安全・高耐湿性という特徴もあり、またPPフィルムコンデンサの小型化技術の進展もあり、現在はPPが多く使用されています。
PPSとPENは高耐熱の特長から表面実装用フィルムコンデンサに使用されています。それらの電気特性は、PENがPETに近く、PPSがPPに近い特性を示します。
アルミ電解コンデンサ
アルミ電解コンデンサは、陽極のアルミ箔の表面に誘電体となるアルミ酸化皮膜を形成させ、電解質(陰極)に電解液(溶媒に電解質を溶かした液体)を用いた構造です。
アルミ電解コンデンサは大容量であることが特長ですが、これはアルミ箔の表面をエッチングにより凹凸を形成することで電極表面積(S)を大きくし、さらに酸化皮膜の厚み(d)をオングストロームレベルの極薄で形成することで実現しています。
しかし、セラミックコンデンサやフィルムコンデンサと比較し、等価直列抵抗(ESR)が高くなります。
アルミ電解コンデンサは有限寿命品です。これは、電解液が温度により気化して封口ゴムから徐々に透過していくため、時間とともに容量が低下、ESRが上昇し、最終的にはオープン状態(電解液のドライアップ)になります。
アルミ電解コンデンサの寿命予測には一般的に「10℃2倍則」が適用できます。
タンタル電解コンデンサ
タンタル電解コンデンサの基本構造はアルミ電解コンデンサとほぼ同一であり、陽極となるタンタル金属粉の焼結体の表面に誘電体となる五酸化タンタルを形成させ、電解質として二酸化マンガン(固体)を用いた構造です。
タンタル電解コンデンサはアルミ電解コンデンサよりも小型で周波数特性に優れ、寿命が長い(電解質が固体)という特長があります。
しかし、故障モードがショートであり発火に至る危険性があるため、安全対策が必要です。
導電性高分子コンデンサ
導電性高分子コンデンサは、電解コンデンサの電解質を導電性高分子(固体)としたものです。
導電性高分子の電気伝導率は、アルミ電解コンデンサの電解液の10000倍、タンタル電解コンデンサの二酸化マンガンの1000倍と大変高く等価直列抵抗(ESR)が低いため、リプル吸収用途において他の電解コンデンサより有利となります。
そのため、他の電解コンデンサから導電性高分子コンデンサへの置き換えが進んでいますが、高価であることと定格電圧の高い製品が無いため、用途に応じて他の電解コンデンサと使い分けます。
電気二重層コンデンサ
電気二重層コンデンサは、アルミ電解コンデンサと二次電池(バッテリー)の中間の容量を持つ特殊なコンデンサであり、その容量密度はアルミ電解コンデンサの約1000倍以上で、二次電池の1/10程度です。
電気二重層コンデンサには電解コンデンサのような誘電体はありません。その代わりに電極と電解液の界⾯に形成される電気二重層を誘電体の機能として利⽤しています。これが電気二重層コンデンサの名前の由来です。
電気二重層コンデンサの充放電は、正・負極に⽤いた活性炭の電極表⾯のイオンの吸着・脱着を利⽤したものです。 この充放電による⼆重層の変化を下図に⽰します。
電気二重層コンデンサを二次電池と比較すると以下のような特長があります。
- ・充放電サイクル数が特性劣化に殆ど影響しない (メンテナンスフリー)
- ・充放電が簡単(0Vまで放電可能、端子電圧でエネルギー量が分かる、微少電流・大電流充電可能)
- ・電池のような規制(回収、廃棄、関税)の対象外
そのため、停電時のICメモリのデータ保護など、バックアップ用電源として利用されます。
コンデンサの種類と特徴まとめ
これまで各種コンデンサの特徴について解説しましたが、それぞれのコンデンサを対比してまとめると下表となります。
項目 | ※セラミック | フィルム | アルミ電解 | タンタル電解 | 導電性高分子 | 電気二重層 |
---|---|---|---|---|---|---|
高容量 | △ | × | 〇 | 〇 | △ | ◎ |
高電圧対応 | 〇 | ◎ | 〇 | △ | △ | × |
長寿命 | ◎ | ◎ | △ | 〇 | 〇 | △ |
温度特性 | △ | ◎ | △ | 〇 | ◎ | △ |
低ESR | ◎ | ◎ | × | △ | 〇 | × |
極性 | なし | なし | あり | あり | あり | あり |
その他 | DCバイアスによる 容量変化大 |
高精度 価格が安い |
価格が高い 小形状が無い |
故障時に発火 しやすい |
||
主要用途 | ・カップリング用 ・デカップリング用 ・平滑用 |
・電源ノイズ吸収用 ・放電回路用 ・共振用 ・力率改善用 |
・平滑用 ・デカップリング用 |
・カップリング用 ・デカップリング用 |
・平滑用 ・デカップリング用 |
・バックアップ用 |
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(電解コンデンサ)