コンデンサの種類と選び方|用途に合わせた最適なコンデンサを解説
コンデンサの種類と選び方|用途に合わせた最適なコンデンサを解説
2025-06-17

1. コンデンサとは?種類と基本特性
コンデンサは、電荷を蓄えたり放出したりする電子部品であり、用途に応じてさまざまな種類があります。それぞれのコンデンサは異なる特性を持ち、用途ごとに適切な選択が必要です。ここでは、代表的なコンデンサの種類とその基本特性を紹介します。
(電解コンデンサ)
1-1. コンデンサの基本構造と役割
コンデンサの基本構造は、2枚の電極板の間に誘電体(絶縁体)を挟んだものです。電極板間の静電容量により電荷を蓄え、回路特性を調整します。
電源回路の安定化、信号処理の調整、高周波ノイズの除去など、さまざまな用途で活躍します。選定時は容量や定格電圧だけでなく、動作温度や周波数特性も重要です。
小さな部品ですが回路全体の信頼性を左右するため、適切な評価が不可欠です。

S
d
- C
- 静電容量
- ε
- 絶縁体の誘電率
- S
- 電極 表面積
- d
- 絶縁体の厚さ
静電容量Cは、絶縁体の誘電率εを大きくする、電極の表面積Sを大きくする、絶縁体の厚みdを薄くすることで大きくすることができます。
1-2. コンデンサの種類と分類
固定容量コンデンサとしては、電解コンデンサ(アルミ、導電性高分子、タンタル)、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサの3種類がよく取り上げられます。
電解コンデンサ(アルミ、導電性高分子、タンタル)
- 容量
大容量を確保しやすいです。アルミ電解コンデンサは有限寿命品で、電解液が蒸発・透過していくため時間とともに容量が低下し、ESRが上昇します。 - 耐電圧
中~高電圧品があり、電源平滑用途などに対応します。リップル電流を扱う回路でも用いられます。 - 温度特性
温度が高いほど電解液の劣化が進みやすく、アルミ電解コンデンサには「10℃2倍則」が適用されます。 - 主要用途
電源平滑やバルク容量確保、リップル電流の吸収などに用いられ、導電性高分子コンデンサは低ESR・高耐熱性を活かして車載や産業機器で安定動作を実現します。

フィルムコンデンサ
- 容量
セラミックコンデンサより大きめの容量を得られる場合が多く、高精度な容量を実現できます。 - 耐電圧
中~高電圧帯にも対応しやすく、高耐圧品も存在します。 - 温度特性
温度特性・周波数特性が安定していて熱による容量変化が少ない一方、セラミックコンデンサより耐熱性はやや劣ります。 - 主要用途
高速回路やオーディオ機器など安定性が求められる用途に使われ、高精度・高耐圧が必要な場面で活躍し、DCバイアス特性やクラックの問題がないためセラミックではカバーできない電圧・容量域にも対応します。

セラミックコンデンサ
- 容量
小型・大容量化が進み、高誘電率系は容量が大きいが温度特性が不安定で、温度補償用は安定性が高いが大容量化しにくいです。 - 耐電圧
低電圧から高電圧までラインアップがあり、DCバイアス下では実効容量が低下しやすい傾向があります。 - 温度特性
高誘電率系は温度や電圧による容量変化が大きく、温度補償用は容量変化が少なく安定しています。 - 主要用途
高周波特性に優れ、小型化が容易なためデカップリングやノイズ対策など幅広い用途で使用され、温度補償用は精密回路やフィルタ回路など安定性が求められる場面で活躍します。

1-3. コンデンサの用途別分類
コンデンサは、瞬時の充放電、直流遮断と交流通過、さらに高周波信号の伝達に優れる性質を持っています。これらの特性を活かし、さまざまな電気回路で重要な役割を果たしています。以下、代表的な回路例を紹介します。
【カップリング回路】

【デカップリング回路】

【放電回路】

【平滑回路】

【バックアップ用途】

2. 用途別の選定ポイントと注意点
コンデンサは回路内で多様な働きを担い、その用途に応じて必要となる特性が異なります。目的に合わせて選定すると回路の安定度が高まりやすくなります。以下では主な用途ごとに推奨されるコンデンサの種類をまとめます。
カップリング(直流バイアス電圧除去)用途
- 電解コンデンサ
大容量が必要な場合や低周波(オーディオ帯域含む)のカップリングに使用されます。 - セラミックコンデンサ
高周波信号のカップリングに適しており、サイズを最小限に抑えたい場合に選ばれます。 - フィルムコンデンサ
音響用(オーディオ向け)カップリングで、安定した容量と低ノイズ特性が求められる場合に使用されます。
デカップリング(ノイズ除去)用途
- 電解コンデンサ
大容量で低周波成分の除去に寄与することもありますが、一般的には高周波ノイズ除去には向かないことが多いです。 - セラミックコンデンサ
高周波成分のノイズを効果的に除去できるため、IC近傍の電源安定化に多用されます。 - フィルムコンデンサ
温度・周波数特性が安定しているため、中間~低周波帯のノイズ抑制やフィルタリングに利用されます。
放電用途
- 電解コンデンサ
大容量を必要とする放電回路に用いられることが多いですが、急激な放電には寿命や安全性の面で注意が必要です。 - セラミックコンデンサ
高速な放電特性と安定した動作が求められる回路で、使用されることがあります。 - フィルムコンデンサ
温度安定性と信頼性が高く、一定の放電特性が要求される用途に適しています。
平滑用途
- 電解コンデンサ
整流後の波形を滑らかにするために大容量が必要なため、主に使用されます。 - セラミックコンデンサ
高周波ノイズの除去を補助する目的で使用されることがあり、複数並列での利用も一般的です。 - フィルムコンデンサ
温度・周波数特性が安定しているため、精度の高い電源平滑化が求められる回路に適しています。
バックアップ(電池)用途
- 電解コンデンサ
大容量で短期間のバックアップに用いられることがありますが、長期間のバックアップ用途では寿命や信頼性の課題があります。 - セラミックコンデンサ
小容量ながら高信頼性なため、バッテリーバックアップ回路で補助的に利用されることがあります。 - フィルムコンデンサ
長期間安定した特性を維持できるため、バックアップ用途での補助コンデンサとして信頼性が求められる場面に使用されます。
3. 技術資料と製品情報の活用法
コンデンサを適切に選定するには、まず製品カタログやデータシートなどの技術資料を活用し、仕様を正確に把握することが欠かせません。
購入時には型番や耐圧・耐熱性などの要件を必ず確認し、回路条件に合うかを見極めることが重要です。
ここでは、技術資料の活用方法や選定時のチェックポイントを紹介します。
3-1. データシートの見方
製品選定時には、定格電圧や容量、動作温度範囲、寿命、ESR(等価直列抵抗)などの確認が必要です。
高温環境やリプル電流が大きい回路では定格を超えると性能が急速に低下します。
データシートのグラフや表を参考に余裕をもった製品選択をすることで、長期的な安定動作を実現できます。各パラメータと使用条件を丁寧に照合することが重要です。
また、より精度の高い部品選定を行うために、パナソニックでは各商品ごとの回路シミュレーションデータも提供しています。シミュレーションを活用することで、使用環境におけるコンデンサの動作特性を事前に確認でき、最適な製品選定につながります。
3-2. 購入時の注意事項
実際に部品を購入する段階では、型番の違いが容量や寸法、耐圧に影響を与えることがあり、注意が必要です。同じシリーズでも文字や記号の違いで仕様が変わるため、購入前にデータシートや製品一覧を必ず照合してください。
製品選定で不明な点がある場合は、パナソニックの公式サポートにお問い合わせください。最適なコンデンサを確保することで、回路の信頼性向上と長寿命化が期待できます。
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