能動部品と受動部品

 

能動部品と受動部品

2021-12-10

回路を構成する電子デバイスというと、トランジスタやコンデンサ、抵抗器などを思い描く方が多いのではないでしょうか。そうした電子デバイスは、「能動部品」と、「受動部品」の大きく2種類に分類されます。
能動部品は、供給される電気的なエネルギーを増幅したり、整流したり、変換したり、能動的に影響を与える部品のことです。
一方、受動部品は、供給される電気的なエネルギーを消費したり、貯めたり、放出したり、受動的な動作をする部品のことです。
この記事では能動部品と受動部品の概要と、それぞれの代表的な電子デバイスとその特徴について解説します。

電子デバイスの分類

能動部品とは

能動部品は、半導体材料によってできている半導体デバイスです。代表的な部品としてダイオードやトランジスタがあり、供給される電流(信号)を増幅したり、整流したり、変換したりという「能動的」な仕事をする電子デバイスです。
半導体とは、導体(鉄や銅、金、銀など)と絶縁体(ゴムやセラミックスなど)の中間的な抵抗率を持った物質(シリコン、ゲルマニウムやそれらの化合物など)です。 半導体デバイスは、単機能を持つディスクリート(ダイオード、トランジスタ)、発光デバイス(LED、レーザ)や受光デバイス(フォトダイオード、撮像素子)などの光半導体、温度や圧力、加速度、磁気などを検知できるセンサ、複数の機能を搭載させた集積回路(IC)などに分類されます。ここでは最も基本的なダイオードやトランジスタと、近年重要性が高まっている集積回路(IC)について説明します。

図 半導体デバイスの分類

ダイオード

ダイオードは、半導体のp型とn型の組合せと、半導体と金属など2種類の材料を接合することで、一方向には電流を通しますが、その逆向きの電流は遮断する性質(整流特性)を持つ部品です。LED(発光ダイオード)もダイオードの一種で、光を発することが注目されますが一方向にしか電流を流さない特性は同じです。また、ダイオードに加える逆方向電流が一定の電圧を超えると電流が流れますが、流れる電流を増やしても電圧は変化しない性質(ツェナー現象)があります。
これらの性質を利用し回路設計では、交流電力から一方向の電圧(順方向電圧)成分だけを取り出す整流回路、同様の原理でラジオの電波から音声成分を取り出す検波回路、直流電圧を一定の値に保つ電圧制御などに利用されます。

トランジスタ

トランジスタは、p型とn型の半導体を交互に接合したもので、ベース(B)、コレクタ(C)、エミッタ(E)と呼ばれる3つの端子を持つ半導体デバイスです。
3つの端子のうちベース-エミッタの間に少し電流を流すと、コレクタ-エミッタの間にはそれよりもずっと大きな電流が流れる増幅の性質と、同様の原理でベース-エミッタ間の電流を変化させると、コレクタとエミッタ間の電流が大きく変化することを利用したスイッチングの性質の2つの働きがあります。
回路設計におけるトランジスタの応用範囲は非常に広く、上記特性をそのまま利用した増幅回路、スイッチング回路のほか、電源電圧の変動を抑えて安定させる定電圧回路、入力と出力の電圧を論理演算として利用する論理回路などとして使われます。

集積回路(IC)

集積回路(IC)は、フォトリソグラフィと呼ばれる半導体加工技術を利用し、半導体ウェハ上に微細なトランジスタやダイオードなど、複数の電子部品を基板上に形成したものです。大きく分けてデジタル信号を扱うデジタルICと、アナログ信号を扱うアナログICがあります。機能としては、複雑なデータの演算や変換処理、データの記憶など電子機器の制御の中枢を担っている部品と言えます。
ICの微細加工技術の進化により、高速大容量のデータ処理や機器の小型化など、電子機器の高機能化が進んでいます。その進化にともなって周辺の電子部品に対しての高精度制御、高信頼性、小型化などの要求が高まっています。

受動部品とは

受動部品は、供給される電力を消費したり、蓄積したり、放出したりといった「受動的」な仕事をする、基礎的かつ必要不可欠な電子デバイスです。代表的な受動部品としては、抵抗器、コンデンサ、コイルなどが挙げられます。

抵抗器:R

抵抗器は、供給される電力を消費することで、回路に流れる電流を一定に保ったり変化させる働きをします。
電源と抵抗器だけで構成された単純な回路を考えてみましょう。電源はそのままに、抵抗の値を大きいものにすれば回路を流れる電流は小さくなり、逆に抵抗を小さくすれば電流は大きくなります。オームの法則を習うときに出てくる、とても分かりやすい例ですね。
実際の回路設計においては、ほかの部品に定格以上の電流を流さないよう制限する、欲しい電流や電圧を得るため分圧・分流、回路を流れる電流を測定するといった目的で使われています。

※さらに詳しい解説を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください
抵抗器の基礎知識 ~役割・単位と記号・規格~

図 抵抗器の性質

コンデンサ(キャパシタ):C

コンデンサは、供給される電力(電荷)を蓄えたり放出したりする受動部品ですが、直流は通さないが交流は通し、特に高周波側でよく通す性質を持ちます。
コンデンサに直流を流した場合、電荷を蓄えられるだけ蓄えた後は流れなくなります。交流を流した場合は、電流の向きが変わるたびに電荷を蓄えたり放出したりを繰り返すので、実質的に交流を流していると見なすことができます。コンデンサがどれだけの電荷を蓄えられるかを静電容量といいますが、静電容量が大きいほど、また交流の周波数が低周波側より高周波側の方がよく流れます。
回路設計においては、蓄えた電力を一気に放出することで大電流を発生させる放電回路、電圧の変動を吸収して安定させる平滑回路、直流と交流が合わさった電流の直流成分を遮断して交流成分(信号成分)を取り出すカップリング回路、逆に交流成分(ノイズ)を遮断するデカップリング回路などに使われます。

※さらに詳しい解説を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください
コンデンサの基礎知識(1) ~仕組み・使い方・特性~
コンデンサの基礎知識(2) ~種類・特徴・用途~

図 コンデンサの性質

インダクタ(コイル):L

コイルは、電気(電流)を磁界に変換、または磁界を電流に変換する働きを持ちますが、直流はそのまま通すが交流は遮断し、高周波になるほど電流を通しにくいという性質を持ちます。直流と交流に対する性質が、コンデンサとは逆です。
配線に電流を流すと磁界が発生しますが、コイルは導線をぐるぐる巻いた構造によって電気エネルギーを磁界として蓄えるのです。直流はコイルを導線と同様に通過しますが、交流は電流の変化によってコイルに大きな変化する磁界を発生させ、コイルの自己誘導によって抵抗器のような働きをします。
回路設計では、電流をオン・オフする機能を持ったスイッチング素子と組み合わせて、供給される電力から目的に合った電圧を得る昇圧回路・降圧回路や、反対の性質を持つコンデンサと組み合わせて、異なる周波数が混ざり合った交流から狙った周波数成分だけを取り出すローパスフィルタ・ハイパスフィルタに使用されます。

※さらに詳しい解説を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください
インダクタ(コイル)の基礎知識(1) ~基本構造・記号・電圧と電流~
インダクタ(コイル)の基礎知識(2) ~特性・種類~

図 コイルの性質

社会の発展に大きく寄与する電子デバイス

古くはラジオやテレビから、近年ではAI、ビックデータ活用の進化、クルマの電動化・自動運転やロボティクスなど、エレクトロニクス技術は他の分野では類を見ないスピードで進化し続けています。
そして、その進化を支えているのが、回路基板に搭載されている多種多様な能動部品や受動部品などの電子デバイスなのです。
今後も、とどまることのない電子機器やクルマの進化にともなって、電子デバイスの高性能化や小型軽量化、さらに耐熱性や長寿命など信頼性への要求が高まっています。

当社では、受動部品を中心に電子機器やクルマの進化に合わせた高性能・小型軽量・高信頼の製品をラインアップしており、皆様の機器設計に貢献します。

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