インダクタ(コイル)の種類と選び方
「図解」で構造や特徴の違いを比較(基礎知識2)
公開日:2018-10-01
更新日:2026-04-06
1. インダクタの種類と選定ポイント
インダクタ(コイル)を最適に選定するためには、まずインダクタの基本構造と特性を理解することが大切です。本章では以下の4つのステップで、インダクタ選定に必要な知識を解説します。
1-1. インダクタを構造と形状で分類する
インダクタは、「工法」「実装形態」「コアの形状」という3つの観点から整理できます。
1-1-1. 製造方法による分類
インダクタは製造方法の違いによって大きく以下の3種類に分類できます。
- 巻線型
- 積層型
- 薄膜型
巻線型インダクタは銅線などの導線をコア(磁心)にぐるぐると巻きつけて作られる、最も基本的な構造です。
積層型インダクタはフェライトやセラミックの薄いシートに導体パターンを印刷し、それらを何層も積み重ねて焼結して作られます。
薄膜型インダクタは半導体プロセス技術を応用し、基板上にスパッタや蒸着によって非常に薄い金属膜でコイルパターンを形成するものです。
1-1-2. 実装形態による分類
インダクタは基板への載せ方によって、以下の2種類に大別できます。
- リード型
- 表面実装型
リード型は基板の穴にリード線を通し、裏面からはんだ付けするタイプです。大型コアを使用しやすいため大電流や高電圧が必要な大型機器の回路に利用される傾向がある。
表面実装型は基板の表面にはんだ付けするタイプです。リード型のように基板を貫通する穴が不要で、小型、省スペースに適しています。
1-1-3. コア(磁芯)の有無・形状による分類
コア(磁芯)の有無や形状は、インダクタのノイズ特性やエネルギー効率に大きく影響します。主な分類は以下の3種類です。
- 空芯型
- 開磁路型
- 閉磁路型
空芯型は磁性体コアを使わず、空気や樹脂を芯にするタイプです。磁性体特有のコア損によるロスや電流による磁気飽和が発生しないため、超高周波帯域の信号処理や、インダクタンス値の安定性が求められる精密なフィルタ回路などに使用されます。透磁率の高いコアを持たないため、大きなインダクタンスを得るには不向きですが、その分、電流の大小に左右されず常に一定の特性を維持できるのが強みです。
開磁路型は磁束の通り道がループ状に閉じておらず、磁束の一部が外部(空気中)へ漏れ出す構造です。構造がシンプルで安価なため、磁気干渉が問題にならない一般的な回路や、コストを重視する電源回路などで広く利用されています。漏れ磁束が周辺部品へ悪影響を及ぼす可能性があるため、基板設計時には部品同士の距離を十分に保つなど、配置上の工夫が求められる点には注意が必要です。
閉磁路型は磁束の通り道を、一周つなげてループにした構造です。代表的なものに、ドーナツ型の芯に線を巻くトロイダルコアがあります。端のないループ状の磁路を形成するため、磁束を効率よくコア内部に閉じ込めることが可能です。外部への磁気漏れが少なく、周辺部品へのノイズ干渉を最小限に抑えられるため、部品が密集する高密度基板や、高性能な電源回路に適します。


1-2. 種類別:インダクタンス実現方式と構造の違い
各種インダクタが「どのような構造でインダクタンスを実現しているか」を詳しく見てみましょう。
1-2-1. 巻線型インダクタ
巻線型インダクタでは、エナメル被覆線などの導線をコアに巻き付けたコイルそのものがインダクタンスを生み出します。巻数(ターン数)とコア材料の透磁率によってインダクタンス値が決まり、一般に巻数が多いほど、またコアの透磁率(μ)が高いほどインダクタンスは大きくなります。
高い透磁率・低損失のコアを用いることで、小型でも大きなインダクタンスと低い直流抵抗を両立できます。コア付きの巻線型では直流電流を流したとき磁束をコア内に閉じ込めて効率よく蓄えることができるため、大電流用途のパワーインダクタに適しています。
1-2-2. 積層型インダクタ
積層型インダクタでは、内部に印刷された平面コイルパターンがインダクタンスを生みます。複数の薄いフェライトシートにコイルの一部を印刷し、ビアで層間接続しながら積層することで巻回と同様の効果を持たせています。コイルが断面全体で磁路を形成し、構造的に磁気シールド効果が高いのが特徴です。
巻線構造に比べて微細加工が可能なため、より小型・低背にでき、高周波特性も優れます。ただし内部導体が薄く直流抵抗がやや大きくなる傾向があり、またコア体積が小さいため飽和電流(大電流を流した際にインダクタンスが低下する電流値)は巻線型ほど高くできません。
1-2-3. 薄膜型インダクタ
薄膜型インダクタでは、フォトリソグラフィ技術により形成した精密な金属パターンがコイルとなります。積層型がスクリーン印刷によるパターン形成なのに対し、薄膜型はスパッタやメッキでさらに薄い導体膜を作り込むため、より微細で高精度なコイルを実現できます。この構造によりインダクタンス値のばらつきが小さく高い周波数でも安定した特性が得られます。
薄膜型は主に数十MHz〜数百MHz以上の高周波用小信号インダクタに用いられ、狭い公差や高いQ値が要求される共振回路などで威力を発揮します。一方、大電流を流せるほど太い導体層や大きな巻数を確保しづらいため、パワー用途にはあまり使われません。
1-3. 用途別:最適なインダクタの種類を選ぶ選定基準
インダクタを選定する際は、用途(使用する回路や目的)に応じて選ぶべき種類が分かれます。以下に主な観点と選定基準を示します。
1-3-1. 大電流・低損失向け(電源回路)
DC-DCコンバータなど電源には、巻線型のパワーインダクタが適しています。大きな電流が流れる電源用途では、磁気飽和を起こしにくく、定格電流(直流重畳許容電流)が十分高いものを選びます。
さらに、電源用では直流抵抗(DCR)が低く損失が小さいことも重要です。DCRを低く抑えることで、電力ロスと発熱を最小限に抑えられます。カタログの定格電流(温度上昇および直流重畳)を確認し、回路の最大電流より十分余裕のあるインダクタを選んでください。
1-3-2. 高周波・信号品質向け(フィルタ回路)
RFフィルタやインピーダンスマッチング用途では、積層型や薄膜型のチップインダクタが適しています。これらは数百MHz〜数GHz帯でも自己共振周波数(SRF)が高く、インダクタとして動作する範囲が広い製品が多いです。
高周波ではインダクタのQ値(品質係数)が回路性能に影響するため、データシートで指定周波数のQ値が高い製品を選ぶのが望ましいでしょう。例えばフィルタ回路ではQ値が高いほど選択度が上がり挿入損失が低減します。また、高周波用インダクタは小さなインダクタンス値(数nH〜数μH)で実装されるため、公差(許容差)が小さい薄膜チップなどが有利です。
1-3-3. 小型・省スペース向け(高密度実装)
スマートフォンやウェアラブル機器では部品の小型・低背化が求められるため、積層型や薄膜型の超小型チップインダクタが選択肢になります。巻線型でも小型品はありますが、積層・薄膜技術の方が高密度実装に向いています。例えば1~3mm角サイズのインダクタはほとんどが積層チップ構造です。
ただし小型になるほど飽和電流値は低下する傾向があるため、想定電流を十分に流せるか確認が必要です。また、小型化により内部導体が細くなると直流抵抗が増大し、発熱しやすくなる側面もあります。サイズを優先する際は、定格電流だけでなく、実動作時の温度上昇についてもデータシートで十分に注意を払う必要があります。
1-3-4. 低コスト・量産性向け(汎用機器)
大量生産される民生機器向けには、積層型インダクタがコスト面で有利です。積層チップインダクタは生産技術が確立しており、一括焼成による量産が可能なため低コストで提供されています。
一方、巻線型は素材となるコアや巻線工程のコストがかかり、大電流品ほど価格が上がる傾向があります。薄膜型は高度な製造プロセスを要するため一般に高価ですが、必要とする性能次第では投資に見合う価値を提供します。コストと性能のバランスを見て種類を選定してください。
以上のように、用途に応じて「どの特性を優先すべきか」を考え、それを満たすインダクタの種類を選ぶことが大切です。例えば「高周波ノイズを除去したい」なら高周波特性に優れた積層/薄膜型、「数十アンペアの電流を平滑化したい」なら飽和しにくい巻線型という具合に絞り込めます。
最終的にはデータシートの特性値を比較しながら、インダクタンス値、定格電流、直流抵抗、サイズなどが設計要件を満たす最適な部品を選定しましょう。
1-4. シミュレーションによる選定の最終検証
用途に合わせてインダクタの種類を絞り込んだ後は、シミュレーションを活用して選定の妥当性を確認することが望ましいです。カタログのスペック値だけでは見えにくい、動作回路における動的な挙動を事前に把握できるため、手戻りの少ない設計が可能になります。
主に利用されるシミュレーションには以下の2種類があります。
回路シミュレーション
主に電源回路の設計において、効率やリップル電圧、負荷応答特性を確認するために使用します。インダクタの直流抵抗や、電流によってインダクタンスが変化する直流重畳特性を反映したSPICEモデルを用いることで、実機に近い挙動をパソコン上で再現可能です。過負荷時に磁気飽和が起きていないか、発熱が許容範囲内に収まるかといった検証が可能です。
高周波シミュレーション
主にRF(無線)回路のマッチングやフィルタ特性の検証に使用します。周波数ごとの減衰量や反射特性を把握するために、部品固有の周波数特性データであるSパラメータを活用します。インダクタンス値だけでなく、自己共振周波数や寄生成分の影響を含めた精密な解析が行えるため、GHz帯のような高周波設計には不可欠なステップです。
カタログ上のスペック確認だけでなく、シミュレーションによる挙動の検証を実施することで、設計の精度と信頼性を高めた製品開発につながります。
パナソニックでは回路シミュレーション用データ(SPICE、Sパラメータなど)ご提供していますので、ぜひご活用ください。
2. インダクタの基本的な働き
インダクタは、基本的に以下の働きをします。
- ① 相互誘導:電流が流れると磁界が発生し、逆に磁界が変化すると電流が流れる。
- ② エネルギー蓄積:電気エネルギーを磁気エネルギーに変化させて蓄える。
- ③ 交流の阻止:直流は通すが交流は通しにくく、周波数が高いほど通しにくくなる。
①と②は電流の磁気作用と逆の電磁誘導による特性です。③はインダクタの直流・交流特性でインピーダンスに起因する特性です。これらの特性がどのように利用されているか、それぞれの具体例を示します。
2-1. ①相互誘導の利用例:トランス
インダクタの特性①は、コイルに流れる電流による電磁誘導の現象です。二つのコイル(一次巻線と二次巻線)を磁気的に結合させると、一方のコイルの電流変化が他方に電圧を誘起します。これは変圧器(トランス)と同じ原理で、相互誘導と呼ばれます。
図1に示すように一次側と二次側にそれぞれ巻線を持つ構造では、一次側巻線に交流電流を流すと磁芯に交番磁界が発生し、その影響で二次側巻線に電圧(誘導起電力)が生じます。この作用を利用すると、一次側と二次側の巻数比に応じて任意の電圧に変換することができます。つまりインダクタの相互誘導により、電圧の昇圧・降圧や絶縁を行うのがトランスの基本原理です。
2-2. ②エネルギー蓄積の利用例:リアクトル
特性②は、インダクタが電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄積できることです。これは単一のコイル内で起こる自己誘導という現象です。代表的な応用例がスイッチング電源のインダクタ(リアクトル)です。例えばDC/DCコンバータの回路で、インダクタにスイッチング素子を介して電流を供給すると、インダクタに磁界が発生してエネルギーが磁気的に蓄えられます。スイッチがオフになるとインダクタの電流が途絶えますが、それまで蓄積されていた磁気エネルギーが放出されて電流を維持しようとします。このときインダクタ両端には自己誘導による電圧が発生し、回路にエネルギーを供給します。結果として、断続的なエネルギー供給を平均化し滑らかな直流に変換する役割を果たし、インダクタ自身がエネルギーバッファとして機能しているのです。
2-3. ③交流の阻止の利用例:フィルタ
特性③は、インダクタが交流成分を通しにくくする性質です。インダクタの持つインピーダンス(リアクタンス)は周波数に比例して大きくなるため、高周波の電流ほど流れにくくなります。
例えば直流電源ラインにインダクタを直列挿入すると、高周波ノイズだけを効果的にブロックすることができます。これはローパスフィルタ(低域通過フィルタ)の基本で、コンデンサを並列に接続した組み合わせで使われます。逆にコンデンサを直列に、インダクタを並列に組めばハイパスフィルタ(高域通過フィルタ)となり、所定の高周波のみを通すことも可能です。このように、周波数に応じてインダクタのインピーダンスが変化する性質を利用して不要な周波数帯を除去できるのです。
インダクタとコンデンサを適切に組み合わせれば、特定の周波数だけを通す共振回路(バンドパスフィルタ)も構成できます。またインダクタは直流を通す性質も持つため、信号の直流成分は阻害せずに交流成分だけ減衰させるチョークコイル(ノイズフィルタ)としても動作します。
3. インダクタの基本的な働き
3-1. 理想のインダクタと実際のインダクタ(インピーダンス特性)
理想のインダクタとは、インダクタンス以外の成分はまったく持たず、エネルギー損失がないものです。 しかしながら、実際のインダクタには、インダクタンス以外に抵抗成分(直流抵抗:DCR)と静電容量(寄生容量:Cp)を持っています(等価回路参照)。 抵抗は、巻線やコアが持つ抵抗成分です。静電容量は主に巻線の線間容量です。
図4のグラフは、理想インダクタと実際のインダクタの周波数に対するインピーダンス特性のイメージです。 理想のインダクタは周波数が高くなるにしたがってインピーダンスが直線的に増加します。 しかし実際のインダクタは、寄生容量により自己共振現象が発生し、それより高い周波数ではインピーダンスが低下して本来のインダクタとして機能しなくなります。 また、抵抗成分やインピーダンスの低下により損失が発生してしまいます。
インダクタのインピーダンス(Z)は、次式で表されます。
Z=R+1/(1/jωL+jωC)
また、インピーダンスの絶対値は次式で計算できます。
|Z|=√ R2+1/(1/ωL-ωC) 2
- Z
- : インピーダンス [Ω]
- R
- : 直流抵抗成分(DCR)[Ω]
- C
- : 寄生容量(Cp)[F]
- j
- : 虚数
- ω
- : 2πf
(π:円周率(3.14)、
f:周波数 [Hz]) - L
- : インダクタンス [H]
3-2. 磁気飽和特性
インダクタは、流れる電流が磁気飽和許容電流(直流重畳許容電流)の最大値を超えると磁気飽和を起こし、インダクタンスが減少します。 インダクタが飽和すると、上述のインピーダンス式からわかるようにインピーダンスは小さくなり、インダクタに流れる電流が異常に大きくなります。 例えば、DC/DCコンバータでは効率の低下や異常動作が起こる可能性があります。 磁気飽和許容電流は、インダクタの重要特性の1つです。
3-3. 交流抵抗(ACR)
インピーダンスの項では簡易的に直流抵抗(DCR)のみを説明しましたが、実使用上のインダクタには、この他にもコアの渦電流損を発生させる抵抗成分と、 表皮効果と近接効果により増加した導線の抵抗成分も含まれており、これを交流抵抗(ACR)と言います。 この交流抵抗(ACR)は、周波数に比例し値が大きくなり、高周波における電力損失や部品の温度上昇に大きく影響するため、実使用上は考慮する必要があります。(渦電流損、表皮効果、近接効果については別途解説します)
3-4. その他特性
上記以外のインダクタの特性や関連する用語についてまとめました。
- Q値
- : ある周波数におけるインダクタの誘導性リアクタンスと抵抗の比で、 インダクタの性能を示す指数です。Q値が高ければ高いほど、理想的インダクタに近づきます。 誘導性リアクタンスXL(=ωL=2ΠfL)をACRで割った値で、周波数に対してどれだけの損失があるかを示しており、 算式からACRが小さいとQが高くなることがわかります。
- 銅損
- : 導線に電流が流れるときの抵抗成分による損失を銅損と言います
- 鉄損
- : コアに磁束が通るときのコア内に生じる損失(ヒステリシス損と渦電流損)を鉄損と言います。
- 表皮効果
- : 導体に流れる電流の周波数を高くすると電流は導体の表面だけを流れるようになり、 表面部分の電流密度が高くなり抵抗値が増加します。これを表皮効果と言います。
- 近接効果
- : 複数の導線が近接している場合、巻線それぞれの形成する磁場が渦電流を誘導し、 高周波では導体内の電流が近接する導線と接する狭い領域に集中して流れるため近接部分の電流密度が高くなり抵抗値が増加します。 これを近接効果と言います。
- 渦電流損
- : 電磁誘導より変化する磁場は導体のコアの中に渦状の電流を発生させます。 この電流を発生したエネルギーはコア材の電気抵抗によって熱に変換され損失となります。 これを渦電流損と言います。
- ヒステリシス損
- : コア内の磁場を変化もしくは反転させると、ヒステリシス(コア素材のBH図で示されるヒステリシスループ)をともなってもとの状態に戻ります。 このヒステリシスの動きのために消費するエネルギーが熱として損失します。 これをヒステリシス損と言い、ヒステリシス損はヒステリシスループの面積に比例します。
4. インダクタの主要スペック
図表10にインダクタの主要なスペックを示します。 前章でインダクタの様々な特性を説明しましたが、すべての特性がスペックとして規定されているわけではありません。 ここでは、インダクタのデータシートに規定がある代表的なものをまとめました。 ただし、項目の有無や規定条件はメーカーや商品によって異なりますので、データシートの注記などをよく確認する必要があります。
| スペック項目 | 意味/条件など |
|---|---|
| インダクタンス(L値)[μH] | 規定周波数における公称インダクタンス |
| 直流抵抗(DCR)[Ω] | インダクタを構成する導体(銅線)の抵抗成分 |
| 定格電流:温度上昇(ΔT)[A] | 直流電流印加時の温度上昇が40Kに至る電流定格値 |
| 定格電流:直流重畳(ΔL)[A] | 直流電流印加時(直流重畳)にL値が初期値から規定の率に低下する定格電流 |
「インダクタンス」は、当然の必須の項目で、決められた周波数における値が示されており、例えば±30%といった許容差を持ちます。
「直流抵抗」は、先にも説明した通り巻線の抵抗が主たるもので、±20%などの許容差が示されています。 同じく抵抗成分として説明した交流抵抗(ACR)は、スペックに示されていない場合が多いので必要に応じてメーカーに確認することになります。
「定格電流」には、2つの項目があります。 「温度上昇」は、直流電流印加時の温度上昇が40Kになる電流定格が規定されていることが多いですが、 メーカーや製品によって条件が異なる場合があります。 もう1つの「直流重畳電流」は、一般にはインダクタンスが-30%になる電流の最大値が示されていることが多いですが、 やはりメーカーや製品によっては条件が異なります。
定格電流は重要なスペックですが、必ず両方が提示されているとは限りません。 どちらか1つの場合はその定格にしたがうことになりますが、場合によってはメーカーに確認することが必要かもしれません。
その他に、「自己共振周波数」が規定されている場合があります。先の説明したように、 インダクタとして機能する限界の周波数を示しています。
5. よくある質問
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Q1. 高周波インダクタの選び方を教えてくださいA.高周波で使用するインダクタを選ぶ際は、寄生容量が小さい積層型や薄膜型のチップインダクタが適しています。選定時の重要なポイントは、自己共振周波数(SRF)とQ値です。SRFが低いとインピーダンスが確保できず、Q値が低いと信号損失の原因になるからです。用途(フィルタなのかマッチングなのか)にもよりますが、一般に動作周波数の少なくとも倍以上のSRFを持ち、かつその周波数で高いQ値を持つ製品が望ましいです。
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Q2. 巻線インダクタを取り扱う際の注意点はありますか?A. 内部の銅線やコアは機械的ストレスに弱いため、落下衝撃や基板たわみによるコア割れ・断線に十分注意してください。実装時は適切なランドパターンを使用し、部品に過度な応力がかからないように配慮する必要があります。また、磁気的に開放構造の製品は他部品への磁気干渉を起こしやすいため、周囲との距離を確保するか、シールドタイプ(閉磁路)を選定する対策も有効です。保管時は高温多湿・直射日光を避けることで、テープ材やコア材の劣化を防ぎ、安定して長期間使用できます。
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Q3. 使用温度範囲の定義を教えてくださいA. 規定性能を満たして安全に動作できる範囲ですが、上限温度は「周囲温度 + 自己発熱(温度上昇分)」の合計で考える必要があります。つまり、「周囲温度 + 自己発熱(温度上昇分)」の合計が、カタログ記載の上限温度を超えないように設計しなければなりません。定格電流付近で使用する場合は自己発熱が大きくなるため、その分だけ周囲温度のマージンを確保する必要があります。使用温度範囲は安全・信頼性に直結するため、必ずデータシート記載の範囲内でご使用ください。
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Q4. 他社品から置き換えの際の注意点はありますか?A.カタログスペックだけでなく、特性カーブや形状の互換性を必ず確認してください。同じ公称値でも、コア材質の違いにより実動作時の特性が異なる場合があるからです。可能であれば置き換え候補のサンプル品を取り寄せ、実際の回路で動作確認・比較評価することをおすすめします。パナソニックでは他社品番から適合する当社インダクタを検索できるクロスリファレンスツールも提供していますので、ぜひご活用ください。
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Q5. インダクタ(コイル)は安全規格(IEC/UL規格など)の認定を取得されていますか?A. 一般的に、インダクタ単体についてのIECやULといった安全規格認証は存在しない場合が多いです。インダクタは受動部品であり、単体で安全規格の対象になりにくいからです。ただし、インダクタに使われている材料(コアやワイヤーの絶縁被膜など)がUL規格の難燃性試験に適合しているケースはあります。最終的な安全認証は、インダクタを組み込んだ機器全体として取得する必要があります。



