チップ抵抗器の「抵抗値」の読み方を完全攻略!
2025-11-25
1. はじめに:チップ抵抗器とは?
チップ抵抗器は、電子回路において電流を制御するための基本的な電子部品です。表面実装型(SMD)として設計され、プリント基板(PCB)に直接はんだ付けされることで、コンパクトな回路設計が可能になります。スマートフォン、家電、産業機器など、スペースが限られた電子機器に広く使用されています。
チップ抵抗器の主な役割は、電流制限、電圧分圧、信号整形などであり、回路の安定性と安全性に直結します。その性能を正しく理解するには、「抵抗値」を正確に読み取ることが不可欠です。誤った抵抗値を使用すると、回路の誤動作や故障の原因になります。
この記事では、チップ抵抗器に捺印された数字や記号から抵抗値を正しく読み取る方法を、初心者にもわかりやすく解説します。
2. 捺印の基本:数字と記号の意味
チップ抵抗器の表面には、通常3桁または4桁の数字が捺印されており、これが抵抗値を表しています。リード付き抵抗器のカラーコードとは異なり、小型化のため数字表記が採用されています。
たとえば「103」という3桁の場合は、「10 × 10³」を意味し、抵抗値は10,000Ω(10kΩ)となります。最初の2桁が有効数字、最後の1桁が乗数(10の何乗か)を示すというルールです。
4桁の場合は「1004」などがあり、これは「100 × 10⁴」を意味し、抵抗値は1,000,000Ω(1 MΩ)です。最初の3桁が有効数字、最後の1桁が乗数を示します。
抵抗値の単位はΩ(オーム)で、kΩ(キロオーム)やMΩ(メガオーム)もよく使われます。
3. 特殊な捺印:ゼロオームと小数点表記
一部のチップ抵抗器には、通常とは異なる特殊な捺印が使われます。
ゼロオーム抵抗- 捺印:「000」「0」など
- 意味:抵抗値 ≒ 0Ω(ジャンパーとして使用)
- 「R」は小数点の代用として使われます。
これらの表記は、特に低抵抗値や精密用途でよく見られます。誤読を防ぐため、各メーカのデータシートなどで確認が必要です。
4. よく使われる捺印パターンと読み方
チップ抵抗器には、実際によく見かける捺印とその抵抗値がいくつかあります。たとえば「472」は「47 × 10²」で、抵抗値は4.7kΩです。「6800」は「680 × 10⁰」で、680Ωを意味します。これらのパターンは、E系列(後述)に基づいた標準的な抵抗値であり、回路設計で頻繁に使用されます。捺印「000」はゼロオーム抵抗、「104」は100kΩ、「222」は2.2kΩなど、読み方のルールを覚えておくと、実装部品の確認やトラブルシューティングがスムーズになります。
| 捺印 | 抵抗値 | 読み方 |
|---|---|---|
| 472 | 4.7kΩ | 47 × 10² |
| 104 | 100kΩ | 10 × 10⁴ |
| 222 | 2.2kΩ | 22 × 10² |
| 6800 | 680Ω | 680 × 10⁰ |
| 000 | 0Ω | ゼロオーム抵抗 |
小型部品では視認性が低いため、抵抗値の読み取りミスが設計ミスにつながることもあります。正確な読み方を習得することが、信頼性の高い回路設計には不可欠です。
5. E系列と抵抗値の関係
抵抗器の抵抗値は、E系列と呼ばれる抵抗器の標準抵抗値を体系的に分類した規格(IEC 60063)に基づいて設計されています。
E系列には「E6」「E12」「E24」「E48」「E96」「E192」などがあり、それぞれ精度と使用目的が異なります。たとえば、E6は±20%の精度で、6種類の抵抗値が1桁ごとに存在します。E12は±10%、E24は±5%と精度が高くなり、選択肢も増えます。E96やE192は±1%以下の高精度抵抗器に使われ、計測機器や高信頼性回路に適しています。
E系列は、抵抗値のばらつきを抑え、設計の標準化を図るために重要な役割を果たします。
| 系列 | 精度 | 一般的な用途例 |
|---|---|---|
| E6 | ±20% | 一般用途 |
| E12 | ±10% | 家電・民生機器 |
| E24 | ±5% | 汎用電子回路 |
| E48 | ±2% | 産業機器・制御回路 |
| E96 | ±1% | 高精度回路 |
| E192 | ±0.5~0.1% | 計測・医療機器 |
E系列を理解することで、必要な精度に応じた抵抗値の選定が可能になります。捺印の読み方と合わせて、E系列の知識は上級者への第一歩です。
6.まとめ
チップ抵抗器の抵抗値を正しく読み取ることは、電子回路設計の基本中の基本です。捺印のルールやE系列の理解を深めることで、部品選定の精度が向上し、トラブルの防止にもつながります。この記事を参考に、ぜひ実際の部品で読み方を練習してみてください。


