コンデンサの歴史と選び方(後編)

 

コンデンサの歴史と選び方(後編)

2025-6-25

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前回記事では、パナソニックインダストリーが販売する一般電解コンデンサと導電性高分子コンデンサ商品について、その成り立ちと主要な機器への採用背景を振り返りながら2010年代までの商品の歴史を辿ってきました。本記事では、さらに2020年代に入ってから社会の進化を支える最先端の電子機器トレンドに触れ、これまで紹介してきた当社コンデンサの基本的な使い分けのポイントを解説します。

1. これからの電子機器の進化の方向性とコンデンサへの要求

パナソニックは、これまで各時代の先進機器要求への対応を重ねる中で、一般電解コンデンサの進化形である導電性高分子コンデンサを多様に展開し、採用分野・用途を拡大してきました。進行中の2020年代における電子機器の進化の方向性を見ると、特にAIサービスの普及拡大に大きな注目が集まっています。膨大なデータ処理により、AIによる対話、コンテンツ生成が可能になっており、今後は高度な業務代行AI、自律ロボット、自動運転などの普及に向けた開発が進められています。これらを実現するために、高性能なプロセッサの使用量はますます増えていくことが予想されます。

しかしその反面、これらを実現した社会では電力使用量が爆発的に増加することが想定されるため、温暖化など地球環境悪化への懸念がますます深刻なものとなっています。そこでその対策として、再生可能エネルギーを主体とした社会への転換が活発に取り組まれています。化石燃料を使用せず、再エネ発電・蓄電池・電気自動車の間で電気エネルギーを循環させるシステムを構築することで、地球環境悪化につながるCO2の排出量を削減し、持続可能な社会の実現を図るというものです。このような背景から、このエコシステムを構成する個別の電子機器における省エネ化・省資源化への取り組みがますます活発になっており、より効率的なパワー半導体(SiCやGaN)やより信頼性の高い部品の活用が広がっています。

これらの2020年代の社会進化を支える電子機器の目標性能を実現するためには、従来より厳しくなる使用環境において、性能・品質・サイズなどの改善要求に対応したコンデンサが必要とされています。パナソニックの導電性高分子コンデンサは、このような2020年代の最先端電子機器の要求に対応した製品を開発しており、今後の社会を支える電子機器の実現を支えていきます。

図表 パナソニックの導電性高分子コンデンサ商品展開と採用展開まとめ
図表 パナソニックの導電性高分子コンデンサ商品展開と採用展開まとめ

2. 一般電解コンデンサと導電性高分子コンデンサの選び方

歴史的な側面を俯瞰したころで、ここからはこれまでの内容を踏まえながら一般電解コンデンサと導電性高分子コンデンサの基本的な使い分けポイントについて解説します。

2-1. 電気特性とサイズ

コンデンサの選定においては、電気特性・サイズ・信頼性・コストなどの各要件が総合的に評価されますが、その中でまず重要となるのが電気特性とサイズです。機器が求める性能・サイズの実現のために、まずこれらの要求を満たせるコンデンサに絞り込まれます。それほど高性能・高機能を必要としない機器では、使用される半導体の電流が小さいため、コンデンサに求められる電気特性・サイズはそれほど厳しいものではありません。そのため、低コストの一般電解コンデンサが利用可能です。一方で、高性能・高機能を必要とする機器の場合は半導体の電流が大きくなるため、電気特性においては特に低ESRのコンデンサを必要とします。この要求は一般電解コンデンサでは満足することが難しくなるため、導電性高分子コンデンサが使用されます。
 ※電圧変動に敏感な半導体が使用される0.xV~100Vの回路における両者の比較。セラミックコンデンサ併用あり。

導電性高分子コンデンサ商品内での使い分けとしては、実装スペース(面積・高さ)に余裕のある場合はOS-CONやHybrid、余裕のない場合はSP-CapやPOSCAPとなります。特に最先端の高性能な機器はたくさんの回路が詰め込まれたり、小型が求められたりするため、コンデンサの実装スペース(面積・高さ)の余裕が著しく減少し、SP-CapやPOSCAPがより活用される傾向があります。
それぞれの商品の定格の違いにより、活用される回路電圧・電流領域は異なるものとなっています(下記図)が、特に近年は、AI実用化の進展でデータセンターだけでなく、実装スペースに制限のある情報端末においてもAI機能実行のためにプロセッサの高性能化が進み、導電性高分子コンデンサの活用機会が増えています。

図表 回路電圧・電流による使い分け
図表 回路電圧・電流による使い分け

2-2. 信頼性とコスト

電気特性・サイズを満たすコンデンサに絞り込んだ後は、要求される信頼性・コストを満足できるコンデンサを考える必要があります。一般電解コンデンサは、電気特性・サイズの条件を満たしている場合、コスト面で最適な選択肢です。しかし車載・産業機器において、使用温度や機器寿命要求が厳しい場合、一般電解コンデンサでは要求を満たせないと判断されることがあります。また場合によっては、故障リスクとして、一般アルミ電解コンデンサは液漏れ・ドライアップ、一般タンタル電解コンデンサは発火を懸念し、敬遠される場合があります。導電性高分子コンデンサは、このような状況においてしばしば選択されます。温度特性や信頼性において一般電解コンデンサよりも安定しているという特長があるためです。
特に近年は、車載機器だけでなくIoT・エッジコンピューティング・ロボットなどにおいて屋外使用が増加し、情報通信機器ではサステイナビリティ要求の高まりにより従来より長期運用を求められるなど、導電性高分子コンデンサが選ばれるケースが増えています。

図表 使用環境・信頼性による使い分け
図表 使用環境・信頼性による使い分け
図表 使用環境・信頼性による使い分け

2-3. 機器要求とコンデンサの選定傾向

最後に、一般電解コンデンサと導電性高分子コンデンサの使い分けの傾向について簡易的に表にまとめます。機器の各要求が厳しくない場合は一般電解コンデンサが使用され、各要求の度合いが高い先進機器においては大電流・高信頼・小型に対応可能な導電性高分子コンデンサの各商品が最適となっています。

一般電解コンデンサと導電性高分子コンデンサの
一般電解コンデンサと導電性高分子コンデンサの

3. まとめ

コンデンサは時代の変遷とともに進化する機器を支える部品として、一般電解コンデンサから導電性高分子コンデンサへと発展し、性能進化と用途に合わせた最適化を遂げてきました。一般電解コンデンサと導電性コンデンサの選定においては、まず必要な電気特性(電圧、容量、ESRなど)と部品サイズから絞込み、その後信頼性・コスト要件を加味することで、最適な商品を見つけることができます。
パナソニックは幅広いコンデンサ商品をラインアップしており、様々な機器要件に対応したソリューションを提案することができます。また今後も変化する市場ニーズに応えるため、さらなる商品開発とラインアップ拡充により機器の進化に貢献していきます。

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