電源回路の基礎知識(3)~スイッチング・レギュレータの設計手順~

 

TCUとは外部ネットワークに対し、車と外部との情報通信を双方向で行うための通信ユニットです。今後の自動運転車やコネクテッドカーの普及に伴い、TCU搭載数の増加が見込まれています。本記事ではTCUの機能とシステム構成について解説し、TCUを構成している電子部品のラインアップについてもご紹介します。

TCUとは

TCU(Telematics Control Unit)とは、ECUからの要求に対して、車と外部との情報通信を双方向で行うための通信ユニットです(図1)。無線モジュールによって外部のネットワーク環境に接続します。各種通信により、車両機能の改善、運転支援(安全走行)、快適性の向上(ナビのアシストなど)を担います。

TCUを搭載することにより、車両緊急通報システム(eCall)やOTA(Over the Air)が実現可能となります。eCallとは、車に事故が発生した際に、車の状態や位置情報を救急センターに送信するシステムです。一方で、OTAとは無線通信でデータの送受信を行うための技術を指します。

図1 TCUと各機器の接続について
図1 TCUと各機器の接続について

TCUの市場トレンド

TCUの搭載数は、車両台数の約半数だといわれています。今後、自動運転の進歩やコネクテッドカーの普及に伴い、TCU搭載数の増加が見込まれています。高い情報処理性能が要求されるため、今後は5GやDSRCのような多種の通信方式に対応していかなければなりません。

TCUと他機器との間で大量のデータを送受信するためには、通信の高速化が必要不可欠です。情報処理量の増加に伴い、消費電力も増加する傾向にあります。つまり、TCUを構成する電子部品には、「大電流化」「低損失化」「高周波数」「小型化」が要求されるようになります。

TCUのシステム構成

1. 概要

TCUとその周辺機器は、以下図2のように接続されています。TCUの内部は、車載の各種ECUとの通信を行うトランシーバー回路と、外部との通信を行う無線モジュール、双方向のデータの処理を行うマイコン、それらの回路を動作させるために必要なDC/DCコンバータ電源回路で構成されています。また、車には鉛バッテリー(電圧12V)が搭載されており、鉛バッテリーからTCU含む各種機器へ電源を供給しています。事故などで鉛バッテリーが故障した場合は、システム全体がダウンしてしまうのでしょうか? 実はTCUにはバックアップ用電源が用意されており、鉛バッテリーからの供給がなくなっても、一定時間はシステムが動きつづけるようになっています。この仕組みを利用したものが「eCall」で、事故で車の大半のシステムがダウンしても、TCUだけはバックアップ電源を利用して緊急通報を救急センターへ送信します。

図2 TCUのシステム構成
図2 TCUのシステム構成

2. DC/DCコンバータ

DC/DCコンバータとは、直流電圧を異なる直流電圧に変換する回路です。例えばバッテリー電圧のような高い電圧から、マイコンや通信モジュールなど、それぞれの回路に必要な電圧値に変換する役割があります。DC/DCコンバータは図3に示すように、主にFET、コイル、コンデンサから構成されています。入力部のノイズ除去と、出力部の平滑には導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、電圧変換には車載用パワーインダクタ、電圧計測にはチップ抵抗(高精度チップ抵抗器)を用いるのが一般的です。

【使用される部品】

ノイズ除去、スイッチング・平滑 ―― 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

POINT
  1. ❶ 大容量&低ESR&高リプル性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 容量特性の高周波対応により、回路の高周波スイッチング化で発生するノイズの広帯域&高周波除去に貢献

電圧変換 ―― 車載用パワーインダクタ

POINT
  1. ❶ 金属磁性材での低損失&大電流性能により、回路の小型・大電力化(低電圧&大電流)に貢献
  2. ❷ 損失特性の高周波化(低ACR)により、回路の高周波スイッチング化における損失抑制に貢献

電圧計測 ―― チップ抵抗(高精度チップ抵抗器)

POINT
  1. ❶ 薄膜構造での抵抗値公差、低TCR性能により、回路の出力特性の高精度制御化に貢献
図3 DC/DCコンバータで使用される部品
図3 DC/DCコンバータで使用される部品

3. トランシーバー I/F

図4に示すように、トランシーバー回路では、2本の線を使って外部の機器との通信を行います(CAN、Ethernetなど)。ここで注意しなければならないのが静電気とノイズです。通信線から静電気やノイズが混入すると、最悪の場合は電子部品の故障につながるためです。静電気対策用としてチップバリスタESDサプレッサで構成するのが一般的です。

【使用される部品】

静電気対策 ―― チップバリスタESDサプレッサ

POINT
  1. ❶ 幅広い容量特性ラインナップにより、回路の通信品質を維持しながら静電気(ESD)ノイズの抑制に貢献
  2. ❷ チップバリスタは、8~250pFの容量特性により、低速から高速の通信速度に対応
  3. ❸ ESDサプレッサは、0.1pFの容量特性により、高速の通信速度に対応
図4 トランシーバーIFで使用される部品
図4 トランシーバーIFで使用される部品

まとめ

自動運転車やコネクテッドカーの普及により、TCUの搭載数は増加する見込みです。こうした車は大量のデータ通信を行うために、5GやDSRCのような通信方式に対応していく必要があります。TCUが大量のデータを扱うためには、構成されている電子部品が「大電流」「低損失」「高周波」「小型」でなければなりません。パナソニックインダストリーでは、TCU向けとしてさまざまな要求に応える幅広い商品ラインアップと、高機能なデバイスを取りそろえています(表1)。

表1 商品ラインアップと特長一覧
部品 特長 大電流 低損失 高周波 小型化
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ 低ESR
高信頼性
車載用パワーインダクタ 大電流、低損失
高信頼性
チップ抵抗(高精度チップ抵抗器) 高精度、高耐熱      
チップバリスタ 小形・軽量化      
ESDサプレッサ 低静電容量
超高速データ I/F
   

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