車載機能の高性能化に伴い、電気回路を流れる電流値やECUの搭載数が増加していきます。車内空間を確保するためには、ECU基板サイズを小型化する必要があります。そのためには基板に実装されている電子部品が大電流に対応でき、かつ部品サイズが小型であることが必要不可欠です。大電流タイプのインダクタは製品サイズの大きなスルーホール実装品が主流で、基板の小型化には不向きです。また、他の部品は面実装品が多く、スルーホール実装と面実装は同時に行うことができないため、基板実装工程を2回行う必要があります。そこで、当社では70Aの大電流に対応し、面実装が可能な「車載用パワーインダクタ」を製品化しました。
大電流対応車載パワーチョークコイルとは
大電流車載パワーチョークコイルの3つの特長
- 大電流対応の面実装タイプとして業界最小クラス
- 優れた耐熱性と耐振動性を実現し、ECUのエンジンへの直接搭載が可能
- 省スペース化による使用部材の削減で環境負荷を低減
大電流対応の面実装タイプとして業界最小クラス
シリーズ | サイズ | 定格電流 |
---|---|---|
PCC-M1280MF | 12.6×13.2×8.0 mm | 20.2∼53.5 A (*1) |
PCC-M15A0MF | 17.2×15.6×10.5 mm | 30∼83 A (*2) |
(*1):高放熱の多層基板(放熱定数を約20 K/W)に実装し直流電流を流した時,全体の温度上昇が40K となる電流の実力値
(*2):高放熱の多層基板(放熱定数を約13.8 K/W)に実装し直流電流を流した時,全体の温度上昇が40K となる電流の実力値
独自の金属磁性材料を用いたメタルコンポジット材料と太銅線を用いた巻線コイルを採用し、
さらに同材料と巻線コイルを隙間なく一体成形したギャップレス一体構造を開発しました。
これにより、コイルの低発熱化と高放熱化を図り、フェライトタイプに比べ体積を半減に抑えつつ20~87Aの大電流対応を実現
金属磁性材一体構造で2倍以上の高放熱
優れた耐熱性と耐振動性を実現し、ECUのエンジンへの直接搭載が可能
- 耐熱性:面実装タイプで160 °C/2000時間
- 耐振動性:面実装タイプで5 Hz ~ 2 kHz/30 G
信頼性試験の結果、製品・半田付部分異常なし
項目 | 条件 | 評価時間 | |
---|---|---|---|
熱衝撃試験 | -40 °C ~ +160 °C | 2000 cyc. | |
振動試験 | 30 G(5 Hz ~ 2 kHz) | XYZ(各2 h) | |
耐熱試験 | 160 °C | 2000 h | |
高温寿命試験 | 160 °C, DC定格電流 | ||
耐湿試験 | 85 °C,85% RH | 2000 h | |
湿中寿命試験 | 85 °C, 85%RH, DC定格電流 | ||
耐寒試験 | -40 °C | 2000 h |
■前処理条件 :85 °C ± 2 °C,85% RH,168 h 後、リフロ-エージング3回
※ 振動条件・リフロー条件などはお客様条件にあわせ個別対応可能
振動条件: 5 Hz ~2 kHz/30 G/XYZ /各2 h
メタルコンポジット材料の組成を工夫することで、160°Cの高耐熱を実現しました。
また、コイルを構成する太銅線を引き出して、端子として活用すると同時に、
底面にカシメ構造を設け端子とメタルコンポジット材料のボディを
固定する独自の構造を採用、基板実装後の耐振動性を向上
省スペース化による使用部材の削減で環境負荷を低減
当社は小型化に適したメタルコンポジットを採用することで、同等性能のフェライトタイプから当社製品への置き換えで、設置面積の省スペース化が可能となり、機器の小型化が図れ、使用部材の削減により環境負荷が可能です。
巻線コイルを構成する銅線を直接端子に活用し,
面実装化のためのヒートマス確保した独自の端子構造技術
使用例
ECUの搭載数増加に伴う,機能統合による容量アップと小型化要求
電動化の加速と機電一体型化による,高信頼性要求
大容量,小型化,高信頼性を要求するアプリケーション
- 電動ポンプ系入力フィルタ
- 電動ファン入力フィルタ
- エンジン直噴入力フィルタ
- ブレーキシステム入力フィルタ
- EGR入力フィルタ
- 電動コンプレッサ入力フィルタ
- EPS 入力フィルタ
- ボディ電動系入力フィルタ
回路図
ラインアップ
シリーズ | 品番 | インダクタンス*1 | 直流抵抗 at 20 ℃ (mΩ) |
定格電流 (A) Typ. | サイズ [LxWxH] (mm) |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
L0 (μH) |
許容差 (%) |
Typ. (max.) |
許容差 (%) |
△T= 40 K*2 ( ) 内*3 |
△L= –30 %*4 |
|||
PCC-M1280MF | ETQP8MR33JFA | 0.33 | ± 20% | 0.7 (0.77) | ± 10% | 53.5 (44.4) |
84.5 | 13.2×12.6×8.0 |
ETQP8MR68JFA | 0.68 | ± 20% | 1.1 (1.21) | ± 10% | 42.6 (35.4) |
56.9 | 13.2×12.6×8.0 | |
ETQP8M1R0JFA | 1.0 | ± 20% | 1.36 (1.50) | ± 10% | 38.3 (31.8) |
44.4 | 13.2×12.6×8.0 | |
ETQP8M1R5JFA | 1.5 | ± 20% | 1.8 (1.98) | ± 10% | 33.3 (27.7) |
29.9 | 13.2×12.6×8.0 | |
ETQP8M2R5JFA | 2.5 | ± 20% | 2.6 (2.86) | ± 10% | 27.7 (23.0) |
32.1 | 13.2×12.6×8.0 | |
ETQP8M3R3JFA | 3.3 | ± 20% | 3.6 (3.96) | ± 10% | 23.6 (19.6) |
27.6 | 13.1×12.6×8.0 | |
ETQP8M4R7JFA | 4.7 | ± 20% | 4.9 (5.39) | ± 10% | 20.2 (16.8) |
24.7 | 13.1×12.6×8.0 | |
PCC-M15A0MF | ETQPAMR33JFW | 0.33 | ± 20% | 0.42 (0.48) | ± 15% | 83 (69) |
103 | 17.2×15.6×10.5 |
ETQPAMR68JFW | 0.68 | ± 20% | 0.70 (0.77) | ± 15% | 65 (53) |
71 | 17.2×15.6×10.5 | |
▲ETQPAM1R0JFW | 1.0 | ± 20% | 0.88 (0.97) | ± 15% | 57 (47) |
52 | 17.2×15.6×10.5 | |
▲ETQPAM1R5JFW | 1.5 | ± 20% | 1.10 (1.21) | ± 10% | 52 (43) |
43 | 17.2×15.6×10.5 | |
▲ETQPAM2R5JFW | 2.5 | ± 20% | 1.70 (1.87) | ± 10% | 42 (34) |
41 | 17.2×15.6×10.5 | |
▲ETQPAM3R3JFW | 3.3 | ± 20% | 2.40 (2.64) | ± 10% | 35 (29) |
37 | 17.2×15.6×10.5 | |
▲ETQPAM4R7JFW | 4.7 | ± 20% | 3.10 (3.41) | ± 10% | 31 (26) |
30 | 17.2×15.6×10.5 |
*1: インダクタンスの測定周波数は100 kHz。
*2: 高放熱の多層基板 に実装し直流電流を流した時、 全体の温度上昇が40Kとなる電流の実力値。
*3: FR4 t=1.6 mm 4 層基板に実装し直流電流を流した時、全体の温度上昇が40K となる電流の実力値。
*4: 直流電流を流した時、初期L 値からインダクタンス変化が‒30 % となる電流値。