④ コモンモードノイズの抑制例
コモンモードノイズフィルタは差動信号のスキューを改善し、コモンモードノイズを抑制する効果を発揮します。
コモンモードノイズフィルタは、一対のコイルが磁気結合した状態になっており、内部磁束の変化を打ち消すように働きます。
図4-1 に示すように、スキューにより信号の立上り部に基づく磁束に変化がおきた場合に、それを打ち消す
ように、もう1つのコイルに誘導起電力が誘起され、スキューを低減しコモンモードノイズを低減します。
当社コモンモードノイズフィルタによるコモンモードノイズの抑制例を示します。
図4-2 はUSB2.0 の放射ノイズの抑制効果を示したもので、コモンモードノイズフィルタをつけることで
高調波ノイズが抑制されていることが分かります。
このように、PCB 基板上での伝送線路の引き回し等で発生したスキューを改善することができます。通常、コモンモードノイズフィルタが出力コネクタの側に配置される理由は、出力端でのスキュー改善とコモンモードノイズ抑制があります。
⑤ スマートフォンに代表される近年のノイズ問題
スマートフォンやタブレットに代表される携帯端末には、カメラやLCD を制御する MIPI やUSB といったデ ジタル信号ラインがあります。また狭い筐体内にセルラー/WiFi/Bluetooth/GPS といった無線通信機能 が搭載されています。
図5-1 に示すように近年のデジタル差動データ通信の伝送周波数帯は、無線通信のバンドとオーバー ラップしていることが分かります。これにより、デジタル信号ラインからのノイズが無線通信用のアンテナに 飛び込み、受信感度劣化が発生することが問題となっています。
図5-2 には、アンテナに近接させた差動伝送ラインにスキューを入れたときのセルラー通信の受信感度の測 定結果(横軸に電波強度、縦軸にビットエラーレート)を示します。差動信号にスキューが無いときには、 弱い電波強度でもビットエラーレートが低く受信できていますが、差動信号のスキューを増やす、つまりコモン モードノイズが増加することで受信感度が劣化していることが分かります。
このような背景から、デジタル信号ラインからのノイズによる自家中毒対策のひとつとして、近年コモンモードノイズフィルタがスマートフォンやタブレットで広く使われています。
また、このような用途で使用する場合には無線通信バンド帯域に入るノイズ発生を抑制するため、コモン モードノイズフィルタのノイズ減衰特性(周波数特性)がフィルタ選定の際に、重視されています。