MLCCの課題を導電性高分子コンデンサで解決

 

MLCCの課題を導電性高分子コンデンサで解決

2018-08-21

MLCCの課題と対策

様々なアプリケーションに広く使われているMLCC(積層セラミックコンデンサ)ですが、MLCC固有の特性に起因した課題を持っています。それらのいくつかは、導電性高分子コンデンサによって対策が可能です。以下に2つの例を示します。

MLCCの課題①: DCバイアス、高温・低温で静電容量が低下するので員数が多くなる

MLCCは、DCバイアスによって静電容量が大きく減少することは既知のMLCCの特性です。また、高温・低温時にも静電容量が低下します。

この例では、15VのDC電圧印加で静電容量は80%も減少しています。また、高温・低温時には10%程度減少します。

例えば、15VのDC電圧印加で47µFほどの静電容量を必要とする場合に上記の減少を見込むと、公称静電容量値の20%をベースにして静電容量を確保することになります。グラフの22µF MLCCの場合だと以下のような計算になります。

22µF×20%=4.4µF  47µF÷4.4µF≅10.7個

この例では、回路が要求する静電容量47µFを確保するのに、公称静電容量22µFのMLCCではトータル公称静電容量220µF以上、員数にして10個以上必要になります。静電容量の大きなMLCCを選択して員数を減らすことは可能ですが、一般のチップタイプ25V耐圧のMLCCは47µF辺りが上限で、大きな静電容量が必要な場合は価格が安い小容量のMLCCを複数個使うスタイルが一般的なアプローチです。

課題①の対策: DCバイアスや温度に対する静電容量の変動がほとんどない導電性高分子コンデンサで代替

導電性高分子コンデンサには、MLCCのようなDCバイアスや温度による静電容量の低下が基本的にほとんどありません。したがって、この例では10個の22µF MLCCを、1個の47µF導電性高分子コンデンサで置き換えることができ、員数削減により実装なども含めたトータルコストを削減可能で、場合によっては実装面積も削減可能です。

具体的な例を紹介します。これはあるHDDの例で、停電時のメモリバックアップとディスクの安全停止のために、12Vで140µFほどの静電容量が必要でした。これを22µFのMLCCで確保するには、DCバイアスによる静電容量の低下を約80%として、36個、公称静電容量792µFを要します。これに対して、導電性高分子コンデンサSP-Capを使用すると47µF×3個で済み、員数、実装面積、トータルコストの削減ができました。これは、SP-Capの例ですが、POSCAPはじめ他の導電性高分子コンデンサでも同じようなアプローチが可能です。

MLCCの課題②: 音鳴き、微振動が発生する

MLCCは電圧がかかると変形(伸縮)する逆圧電効果という特性を持っています。これは、圧電(ピエゾ)効果の逆の現象です。印加電圧がDC電圧であれば変形が生じるだけですが、電圧に周期的な振幅があるとMLCCが周期的に伸縮し基板を振動させます。その振動周波数が可聴帯であれば、キーンといった耳障りな音として聞こえてしまいます。ACアダプタやスイッチング電源の出力などはDC電圧にリプル電圧を含んでいることがあり、リプル周波数が可聴帯の場合は音鳴きが発生する可能性があります。

また、音にはならなくても微振動が機器の動作に影響を与える場合があります。HDDの例では磁気ヘッドに搭載したMLCCの微振動がデータエラーの原因となった例があります。

課題②の対策: 逆圧電効果のない導電性高分子コンデンサで代替

MLCCの音鳴きに関しては、MLCCにおいても対策品が用意されています。変形が少ない材料によるもの、幅より電極間の長さを短くしたLW逆転構造タイプ、金属端子やメタルフレームなどと呼ばれるリードが出たものなどがあります。これらは、いずれも音鳴きや微振動の低減は確認できますが、完全になくなるわけではありません。

それに対して、導電性高分子コンデンサには逆圧電効果はありませんので、音鳴きや微振動は皆無です。MLCCと対策品の金属端子付きMLCC、そして導電性高分子コンデンサの音鳴きを比較した例を示します。

ノートPCにおいてACアダプタからの電圧をDC/DCコンバータにより降圧回路において、入力コンデンサとして使用したMLCCによって音鳴きが発生した例です。金属端子付きのMLCCはMLCCの対策品としては比較的効果が高いと言われており、音鳴きの音圧を低減することが確認できます。グラフは、赤線が通常のMLCC、緑線が金属端子付きMLCCです。

金属端子付きの10µF MLCCを8個使った構成を、導電性高分子コンデンサSP-Cap 33µF 1個で代替し、音鳴きを確認しましたが、当然のことながらSP-Capにはまったく音鳴きや微振動は発生せず、完全に音鳴きの問題を解決することができました。こちらもSP-Capの例ですが、他の導電性高分子コンデンサでも同様の対策が可能です。

パナソニックの導電性高分子コンデンサ

導電性高分子コンデンサは電解質に導電性高分子を使用することで、低ESR、優れた高周波特性、温度、電圧に依存しない安定した特性を実現したコンデンサです。パナソニックは、導電性高分子コンデンサを各種取り揃え、導電性高分子コンデンサの市場を4種類の商品でフルカバーしています。

(https://industrial.panasonic.com/jp/products/capacitors/polymer-capacitors)

名称/形状 アルミポリマー(積層) タンタルポリマー アルミポリマー(巻回)
アルミハイブリッド
主な特長
  • 業界トップクラスの超低ESR
  • ・リプル、ノイズ低減効果大
  • ・高周波特性に優れMLCC代替に最適
  • 小形、大容量、低ESR
  • ・小形・省スペースに貢献
  • ・小形・大容量のためMLCC代替に最適
  • 高耐圧、高リプル電流対応、低ESR
  • ・高耐圧レンジまで広くリプルノイズ低減に貢献
  • 高信頼性、高耐圧、低ESR
  • ・アルミ電解コンの小形化や長寿命化に貢献
商品レンジ
  • 定格電圧
  • 静電容量
  • ESR
  • サイズ(面積)
  • サイズ(高さ)
  • 2V~35V
  • 10µF~560µF
  • 40mΩ~3mΩ
  • 7343
  • 2mm~1mm
  • 2V~35V
  • 10µF~1500µF
  • 300mΩ~5mΩ
  • 7343~2012
  • 4mm~1mm
  • 2V~100V
  • 10µF~2700µF
  • 200mΩ~8mΩ
  • -
  • 13mm~4.5mm
  • 25V~80V
  • 10µF~470µF
  • 120mΩ~20mΩ
  • -
  • 10mm~6mm

まとめ

MLCC固有の特性に関連した課題と導電性高分子コンデンサによる対策に関して2つの例を挙げました。

1つは、MLCCではDCバイアスと温度による静電容量の低下分を考慮して、要求される静電容量となる様に使用員数を設定しなければなりません。また、1個の静電容量がそれほど大きくはないので、比較的静電容量が小さいMLCCを数多く配置する必要があります。これに対して、導電性高分子コンデンサはDCバイアスや温度による静電容量の変動がほとんどないのと、静電容量が大きなものもあるので、MLCCから置き換えることでコンデンサの員数、実装面積、トータルコストを削減可能です。

もう1つは、MLCCの逆圧電効果による音鳴きと微振動に対する対策です。MLCCにも対策品がありますが、導電性高分子コンデンサには逆圧電効果はないので、代替によってこの問題を完全に解決することができます。

事例に関しては、代表として導電性高分子コンデンサのSP-Capによる代替を示しましたが、要求事項や条件によって、SP-Cap、POSCAP、OS-CON、Hybridの4種類の導電性高分子コンデンサから最適なものを選択できます。

詳細データの提供

パナソニックではウェブサイトから導電性高分子コンデンサをはじめ、その他の電子デバイスの詳細データを提供しています。

■特性ビューア

(https://util01.industrial.panasonic.com/jp/utilities/ds/chr-vw/)
特性ビューアは、選択した部品の各種特性を周波数軸、温度軸等でグラフ表示するツールです。使用周波数領域における特性値変化等の部品特性が容易に確認できるので、部品選定ツールとして役立ちます。

導電性高分子コンデンサのSP-Cap、POSCAPの例では、インピーダンス|Z|、抵抗成分ESR、静電容量C、インダクタンス成分ESLの周波数特性が表示可能です。

例:EEFSX0D471E4(SXシリーズ、2V470μF、ESR4.5mΩ)

■シミュレーション用データ

(https://industrial.panasonic.com/jp/downloads/simulation-data)
個別品番毎に、周波数特性データ(PDF)、等価回路モデル(SPICEモデル)、Sパラメータをダウンロードできます。

例:EEFSX0D471**(SXシリーズ、2V470μF)

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