MLCCとは?MLCCの課題を導電性高分子コンデンサで解決
2025-06-17

電子機器の高性能化・小型化が進む中で、MLCC(積層セラミックコンデンサ)は中心的な役割を担っています。しかし、容量低下やクラックといった課題も抱えており、用途や環境に応じた適切なコンデンサ選びが求められます。本記事では、MLCCと導電性高分子コンデンサの特性や違い、ハイブリッド構成による最適な設計手法、さらにパナソニック製品の特長や用途別の適用例についてご紹介します。
1. MLCCとは?その基本構造と用途
1-1. MLCCとは
MLCCは、小型でありながら高電圧への対応や高周波特性、長寿命といった優れた特長を持ち、あらゆる電子機器で活用されています。スマートフォン、車載機器、5G通信機器、医療機器など、多様な分野においてノイズ除去や電源バイパス、といった目的で広く採用されています。
また、セラミック誘電体と金属電極を交互に積層した構造をしており、電圧を印加すると電極間に電荷を蓄える仕組みになっています。この静電容量によって電気エネルギーを蓄積・放出するため、電子回路においてノイズ除去の効果を発揮します。構造の単純さと高性能を両立した部品として、多くの電子機器において不可欠です。
1-2. 導電性高分子コンデンサとの違い
MLCCは、セラミック誘電体と金属電極が交互に積層されており、無極性で高電圧や高周波に強く、低ESRが特長です。ただし、静電容量は比較的小さく、用途によっては複数個の並列使用が必要になる場合があります。
一方、導電性高分子コンデンサは、有極性で導電性高分子を電解質とした構造を持ち、大きな容量や優れた温度特性が特長です。高周波特性や高電圧への対応にはやや制限がありますが、MLCCの容量不足や耐熱要求を補う役割があり、電源回路や安定化用途で多く活用されています。
次のグラフはMLCCと導電性高分子コンデンサのインピーダンス特性を比較したものです。グラフからわかるように、共振ポイント付近のインピーダンス(≒ESR)はMLCCのほうが低い一方、約250kHz以下の領域では導電性高分子コンデンサのインピーダンスが低い値を示しています。インピーダンスの交点は各コンデンサの特性値(C、ESR、ESL)によって変わりますが、おおむね300kHz以下の周波数帯であれば、導電性高分子コンデンサはMLCCに匹敵するノイズ吸収効果を発揮すると言えます。

2. MLCCの抱える課題とは?
MLCCは高性能・小型化が進む一方で、DCバイアスによる容量低下や、機械的ストレスによるクラック発生などの課題があります。特に車載や産業機器のような高信頼性が求められる用途では、これらの弱点が大きな設計上のリスクとなることがあります。
2-1. MLCCの進化とその先にある課題
MLCCは高耐圧化や微細化が進み、より高性能で小型の製品開発が進んでいます。EVや5G分野の需要増により、供給不足が課題となっており、メーカーは生産能力の増強や代替材料の開発を進めています。また、将来的にはMLCCの限界を補うために、高分子系コンデンサや薄膜型コンデンサなど、次世代の代替技術への移行も検討されています。
2-2. MLCCの一般的な課題
MLCCは高温や高電圧下で容量が大きく変化するDCバイアス特性を持ち、使用時に容量が低下しやすいという課題があります。下のグラフでは、15VのDC電圧を印加した場合に静電容量が80%も減少しており、さらに高温・低温時には約10%の変動が見られます。

また、基板のひずみや落下の衝撃によってクラックが発生しやすく、製品を長く安全に使うためには、取り付け方法に十分注意する必要があります。
2-3. 導電性高分子コンデンサとの組み合わせによる最適化
MLCCのDCバイアス特性やクラックといった課題を補うために、導電性高分子コンデンサと併用するのが最適です。高分子タイプは低ESRかつ容量変動が少なく、電源ラインの安定性向上に貢献します。車載ECUや通信機器など高信頼性が必要な分野では、MLCCと高分子コンデンサを組み合わせることで高性能な電源回路を構成でき、MLCCの使用数を削減し、部品調達のリスク低減にもつながります。
2-4. パナソニックの導電性高分子コンデンサ
パナソニックのコンデンサは、低ESR・高信頼性設計により、発熱抑制や長寿命化に優れています。高温環境や振動などの過酷な条件にも対応できる製品が多く、AIサーバーや通信基地局、産業機器など、幅広い分野で採用が進んでいます。用途に応じた製品選定が可能であり、パナソニックはSP-Cap、POSCAP、OS-CON、ハイブリッドコンデンサの4種類を展開し、市場をフルカバーしています。
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3. どのコンデンサを選ぶべき?MLCCと導電性高分子コンデンサの適用基準
用途や設計要件に応じて、MLCCと導電性高分子コンデンサを適切に使い分けるのが重要です。MLCCは小型かつ高周波特性・高耐圧に優れており、ノイズ除去に適しています。一方、導電性高分子コンデンサは、大容量の安定供給や優れた温度特性、低ESRといった特長から、安定した電源供給や過酷環境下での使用に適しています。近年では、両方のタイプを組み合わせるハイブリッド設計を行い、信頼性と性能の両立を図るアプローチが増えています。
3-1. 用途別の適用事例
EVでは、高温・高電圧に耐えられるように、ECUの制御回路やインバータ周辺でMLCCが利用されていますが、DCバイアスによる容量低下やクラックが問題になることがあります。電源ラインに導電性高分子コンデンサを組み合わせることで、安定した供給電圧を確保できます。5G通信機器では、信号処理回路にMLCCが使われる一方で、電源部には低ESRで高容量の導電性高分子コンデンサが利用され、電源安定化とノイズ低減を実現します。
3-2. パナソニック製導電性高分子コンデンサの採用メリット
パナソニックの導電性高分子コンデンサは、長寿命・高耐熱設計により、過酷な環境下でも高い信頼性を発揮します。たとえば、BMS(バッテリーマネジメントシステム)では、バッテリーセルの監視や制御において安定した電源供給が求められる中で、電源回路の平滑やノイズ対策としてハイブリッドコンデンサが利用されています。また、通信基地局においては、SP-Capの低ESR特性が電源ノイズを大幅に抑制し、安定した通信動作に貢献しています。これらの採用事例は、MLCCの限界を補完しながらシステム全体の信頼性を高める有効な選択肢として注目されています。
4. まとめ
MLCCは高性能かつ小型で幅広い用途に使われていますが、容量低下やクラックといった課題もあります。用途や環境に応じて導電性高分子コンデンサと組み合わせることで、信頼性と性能を両立できます。パナソニックの導電性高分子コンデンサは高耐熱・長寿命に優れており、さまざまな分野で実績があります。設計用途や要件に合わせ、最適なコンデンサを選定してみてください。