コンデンサの基礎知識とハイブリッドコンデンサ

2017-12-18

LCフィルタ

技術情報

コンデンサの基礎知識とハイブリッドコンデンサ


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コンデンサの基礎知識

コンデンサは、抵抗、コイルと並ぶ三大受動部品の1つです。シンプルな部品ですが、コンデンサが使われていない電気・電子回路は、まずないと言っていいでしょう。PCやスマートフォンといった先端機器は、コンデンサがないと回路が成立しないばかりか、コアとなるCPUや通信チップにとってコンデンサは最も重要な外付け部品の1つと言えます。

コンデンサとは

コンデンサとは、内部電極表面に電荷を蓄えることのできる電子部品です。蓄えることのできる電荷は、電池に比べて少ないため短時間しか電流を供給できませんが、何回でも繰り返して使え、瞬間的に大きな電流を取り出すことができます。

絶縁体(誘電体)を金属板(電極)で平行に挟むとコンデンサになります。その金属板(電極)間に直流電圧を印加すると、電荷を貯めることができます。これがコンデンサの原理です。蓄えられる電荷の量を静電容量と言い、静電容量Cは、絶縁体の誘電率ε、電極の表面積S、絶縁体の厚さdで決まります。

コンデンサとは

静電容量Cは、絶縁体の誘電率εを大きくする、電極の表面積Sを大きくする、絶縁体の厚みdを薄くすることで大きくなります。ただし、絶縁体の厚みdを薄くするとコンデンサの耐電圧(定格電圧)は低くなります。

コンデンサの働き

コンデンサは、①充電と放電が瞬時にできる、②直流は通さないが交流は通す、③周波数が高いほどよく通すという性質を持っており、電気回路ではこれらの性質を利用した使われ方をします。

代表的な使われ方の回路例を示します。

放電回路

放電回路はコンデンサに蓄えた電荷を放電させることで接続されている負荷を動作させる回路です。大電流を瞬時に放電できることから、カメラのストロボや、緊急時のバックアップ電源として使用されます。

放電回路

平滑回路

平滑回路は交流を直流に変換する回路です。電源のブリッジ回路等により全波整流された波形の変動幅を抑える用途に使用しています。

平滑回路

デカップリング回路

デカップリング回路はその名前のとおり前段で発生した変動(ノイズ)を後段の回路に伝播させない目的で使用します。スイッチング電源でのスイッチングノイズを取り除く用途がこれにあたります。

デカップリング回路

カップリング回路

カップリング回路は逆に前段回路の信号から変化分(交流成分)のみを抽出し後段回路に伝播させます。オーディオ信号の回路等に使用されています。

カップリング回路

コンデンサの特性

理想的なコンデンサは静電容量成分だけですが、実際のコンデンサは抵抗成分やインダクタンス成分を含んでいます。これらの寄生成分は、コンデンサの性能に大きな影響を与えます。コンデンサの簡易等価回路を図に示します。図が示すように、実際のコンデンサの等価回路にはESR(等価直列抵抗)、ESL(等価直列インダクタンス)が含まれます。また、コンデンサの電極間は理想的には絶縁ですが、実際には若干の漏れ電流が存在します。

コンデンサの特性

これらの成分についてまとめました。

特性項目 解説
静電容量(C) ・最も基本的な性能である
・製造ばらつき等で若干のばらつきが生じる
静電容量許容差 (±5%, ±10% 等)
等価直列抵抗 (ESR)
誘電正接 (tanδ)
・誘電体の種類による抵抗成分や電極,端子の抵抗成分で決まる値
・ESR(又はtanδ)が大きいと電流による発熱で故障の要因となる
流せる電流が規制される(許容電流値)
・またESR(又はtanδ)が大きいとノイズ吸収効果が低減する。
絶縁抵抗 (IR) ・主に誘電体の種類によって決まる漏れ電流の逆数
・IRが低いと漏れ電流によるロスが大きくなる
(アルミ電解コンデンサ等は漏れ電流を規定している)
等価直列インダクタンス(ESL) ・主にコンデンサの構造によって発生するインダクタンス成分
・ESLが大きいと高周波域でインダクタンス成分が優勢となりコンデンサの性能がでなくなる

加えて、もう1つ重要な特性として、インピーダンスがあります。
インピーダンスは簡単に言うと、交流回路での電圧と電流の比で、直流回路での抵抗に当たるものです。記号はZを用い、単位は抵抗と同じくΩを使います。

コンデンサのインピーダンス(Z)は、次式で表されます。
Z = R + j 2πf L+ 1/(j 2πf C)
またインピーダンスの絶対値は次式で計算できます。
|Z| =√R2+(2πf L - 1/(2πf C))2
Z
インピーダンス [Ω]
R
抵抗成分=ESR [Ω]
j
虚数
π
円周率 (3.14)
f
周波数 [Hz]
L
インダクタンス成分=ESL [H]
C
静電容量 [F]

この式から、次のことがわかります。

  1. 周波数が低い領域では、ほぼ静電容量(C)でインピーダンスが決定される。
  2. 自己共振周波数(2πf L = 1/(2πf C) となる周波数)では、ESRでインピーダンスが決定される。
  3. 周波数が高い領域では、ほぼESLでインピーダンスが決定される。

これをグラフで示すと右図となります。
コンデンサのインピーダンスZは、自己共振周波数までは容量性(C)で低下しますが、自己共振周波数ではCやESLの影響がゼロとなりESRのみとなり、それを過ぎると誘導性(ESL)になり周波数とともに増加します。

コンデンサの Z=インピーダンス

コンデンサをその主要用途であるノイズ吸収(デカップリング)で使用する場合、インピーダンスでノイズ吸収効果が決まるため、以下のポイントで部品選定する必要があります。

  1. ノイズの周波数とコンデンサの自己共振周波数が近いこと。
  2. ESRが小さいこと。
  3. 高周波ノイズの場合、ESLが小さいこと。

コンデンサの種類と特徴

コンデンサには使う材料や構造などによっていろいろな種類があります。また、種類によって特徴が異なります。設計での選択は、これらの特徴に基づきます。

上記の他に、アルミ電解コンデンサと導電性高分子コンデンサを融合させ、それぞれの特長を兼ね備えた導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサが近年注目されています。

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサは、電解質に導電性高分子と電解液を融合させたコンデンサで、小型で高信頼が求められる、自動車関連の機器や通信基地局などに最適なコンデンサです。

アルミ電解コンデンサについて

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサは、名称が示す通りアルミ電解コンデンサの仲間です。導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの理解を深めるために、最初にアルミ電解コンデンサについて簡単に説明します。

アルミ電解コンデンサは、陽極のアルミ箔の表面に絶縁体(誘電体)となる酸化皮膜を形成させ、電解質(陰極)に電解液(溶媒に電解質を溶かした液体)を用いた構造です。

アルミ電解コンデンサは大容量であることが特長ですが、これはアルミ箔の表面をエッチングにより凹凸を形成することで電極表面積(S)を大きくし、さらに酸化皮膜の厚み(d)をオングストロームレベルの極薄で形成することで実現しています。

アルミ電解コンデンサについて

アルミ電解コンデンサは有限寿命品です。これは、電解液が温度により気化して封口ゴムから徐々に透過していくため、時間とともに容量が低下、ESRが上昇し、最終的にはオープン状態(電解液のドライアップ)になります。

アルミ電解コンデンサの寿命予測には一般的に「10℃2倍則」が適用できます。

アルミ電解コンデンサの寿命予測

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサとは

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(以下、ハイブリッドコンデンサ)は、導電性高分子と電解液を融合したハイブリッド電解質を採用し、導電性高分子コンデンサとアルミ電解コンデンサの長所を併せた優れた性能を持っています。小型でありながら高耐圧、大容量、低ESR、高リプル電流、長寿命を実現しています。なお、最終的な故障モードはアルミ電解コンデンサと同じオープンモードで、寿命推定式も10℃2倍則が適用されます。

以下に、一般のアルミ電解コンデンサとハイブリッドコンデンサの基本構造の比較を示します。両者は基本的に同じ構造ですが、前記したように電解質が違います。

一般のアルミ電解コンデンサとハイブリッドコンデンサの基本構造の比較

ハイブリッドコンデンサの特長

ハイブリッドコンデンサの最大の特長は、従来のアルミ電解コンデンサと比較し低ESRで高リプル電流を流せる点にあります。
低ESRであれば単にノイズ吸収効果が大きいだけでなく、ESRによるエネルギー損失が小さくなり、さらにそのエネルギー損失による自己温度上昇が低くなります。
自己温度上昇が低いとコンデンサの寿命が長くなりますし、同一寿命で考えれば低ESRのほうが大きな電流が流せると言えます。

右のグラフは、アルミ電解コンデンサとハイブリッドコンデンサにて、ESRの周波数特性を比較したものです。
アルミ電解コンデンサは、一般的に容量の大きなものほどサイズが大きくなり、ESRは低くなります。しかし、低ESRが特長のハイブリッドコンデンサではアルミ電解コンデンサと比較して低容量、小型サイズのコンデンサでも同等のESRの値を得ることができます。
ハイブリッドコンデンサなら47μFでもアルミ電解コンデンサの330μFより低ESRです。
そのため、アルミ電解コンデンサの330μFの代替品としてハイブリッドコンデンサの47μFが使用可能となります。

周波数特性グラフ

例として、スイッチング電源の出力平滑にアルミ電解コンデンサ330μFを使用した場合とハイブリッドコンデンサ47μFを使用した場合を比較します。、右図のようにハイブリッドコンデンサ47μFを使用したほうが出力リプル電圧を低く抑えることが出来ます。
また、形状でもø10×10.2mmからø6.3×5.8mmへと大幅な小型化が図れることがわかります

スイッチング電源の出力平滑にアルミ電解コンデンサ330μFを使用した場合とハイブリッドコンデンサ47μFを使用した場合を比較

ハイブリッドコンデンサの使用事例

これまで説明してきたように、ハイブリッドコンデンサは、従来のアルミ電解コンデンサのメリット(安全性、低LC)を残しつつ、弱点であった低温特性やESR特性,高リプル対応を、導電性高分子の採用で改善したコンデンサです。これらの特長を生かし、安全性や信頼性が求められる車載機器や産業機器用途を中心に採用が拡大しています。
最後に、ハイブリッドコンデンサの採用による員数削減や小型化の事例を紹介します。

最初は、汎用電源の出力コンデンサを、ラジアルリード220μFのアルミ電解×1+MLCC×5という構成から、47μFのハイブリッドコンデンサ1個で置き換えた例です。ハイブリッドコンデンサは面実装タイプです。部品点数と実装面積の削減、完全面実装化に加え、短絡故障モードのMLCCを使わないことで信頼性も向上しています。

汎用電源の事例

次に、エンジンECUとEPSモータ制御回路の電源の事例を紹介します。エンジンECUの例では、DC/DCコンバータの入力に使用するアルミ電解コンデンサをハイブリッドコンデンサに置き換えています。員数を半分にでき、実装面積も大幅に削減できています。 EPSモータ制御のほうは、平滑用の置き換えで、ラジアルリードタイプを面実装に、そして、実装面積と高さを削減し、信頼性とリプル電流定格が向上した例です。

エンジンECUとEPSモータ制御回路の電源の事例

ハイブリッドコンデンサのメリットが非常に大きいことがわかる例だと思います。

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産業・車載用に適した当社のパワーインダクタとアルミ電解コンデンサでフィルタを構成した場合の減衰量特性がシミュレーションできるコンテンツです。産業・車載用フィルタの部品選定に是非ご活用ください。

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