ローパスフィルタとは?LCフィルタの種類とカットオフ周波数の計算
公開日:2018-07-23
更新日:2026-10-15
ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)とは、カットオフ周波数より低い周波数成分を通過させ、それより高い周波数の成分を減衰させるフィルタ回路です。「低域通過フィルタ」「ハイカットフィルタ」とも呼ばれ、電源や信号の回路に重畳する高周波ノイズの低減の目的で、音響、電子回路、画像処理など幅広い分野で基礎技術として使われています。その中でも、コイル(L)とコンデンサ(C)を組み合わせて作ったものをLCローパスフィルタと呼び、電力ロスが少なく大きな電流も扱えるという特徴があります。
本記事では、カットオフ周波数の計算方法や減衰特性(dB/dec)、RC・LC・RLフィルタの違い、LCフィルタの回路構成と部品選定について解説します。
1. LCフィルタの種類
LCフィルタを大別すると3種類になります。
① ローパスフィルタ(LPF)
直流や低周波の信号を通過させ、高周波の信号をカットするフィルタ回路です。
最も広く使われるフィルタ回路であり、主に高周波ノイズのカットに使用されます。
またオーディオでは低音用スピーカーの高音/中音成分カットに使用されます。
② ハイパスフィルタ(HPF)
直流や低周波の信号をカットし、高周波の信号を通過させるフィルタ回路です。
可聴域の低周波ノイズのカットや高音用スピーカーの中音/低音成分カットなどに使用されます。
③ バンドパスフィルタ(BPF)
特定の周波数の信号のみ通過させ、それ以外の周波数の信号をカットするフィルタ回路です。
ラジオの選局(周波数合せ)や中音用スピーカーの低音/高音成分カットなどに使用されます。
2. ローパスフィルタの特性とカットオフ周波数
ローパスフィルタの特性は、通過帯域、カットオフ周波数、阻止帯域での減衰量、位相などで評価します。本章では、カットオフ周波数の定義と計算式、減衰特性、位相と時定数、フィルタ方式による違いを順に解説します。
2-1. カットオフ周波数とは
カットオフ周波数(遮断周波数)とは、一般に通過帯域のゲインに対して振幅が1/√2(約0.707)、すなわち約−3dBとなる周波数です。通過帯域と阻止帯域の境目にあたります。
RCローパスフィルタでは、通過帯域と減衰域の目安として次の式を用います。
- 1次RCフィルタ:fc=1/(2πCR)[Hz]
- 理想LC回路の共振周波数:f0=1/(2π√(LC))[Hz]
※f0は設計時の基準になりますが、カットオフ周波数と常に一致するわけではありません。
たとえば、R=1kΩ、C=1μFのRCフィルタでは、fc=1/(2π×1×10³×1×10⁻⁶)≒159Hzとなります。
一方、LCフィルタの実際の−3 dB周波数は、L・Cの値だけでなく、回路構成、入出力インピーダンス、負荷、Q値、部品の寄生成分などに左右されます。
パナソニック インダストリーの「LCフィルタシミュレーター」では、L形・π形・T形の回路と実際の部品品番を選び、設定条件に基づく減衰特性をグラフで確認できます。フィルタ設計や部品選定の際に、ぜひご活用ください。
2-2. 減衰特性(−20dB/decと−40dB/dec)
ローパスフィルタは、カットオフ周波数より高い周波数を完全に遮断するのではなく、周波数が高くなるにつれて減衰させる回路です。理想的な応答の高周波側では、1極あたりの漸近的な傾きが−20dB/decとなります。このため、1次RCローパスフィルタは−20dB/dec、2次LCローパスフィルタは−40dB/decが目安です。
decはディケード(decade)の略で、1decは周波数が10倍になる範囲です。漸近線上では、−20dB/decが振幅比1/10に、−40dB/decが1/100に相当します。
π形・T形の減衰勾配は、使用する素子の数や回路の極数、終端条件によって異なります。そのため、構成名だけで判断せず、回路全体の条件を踏まえて確認する必要があります。
2-3. 位相の遅れと時定数
ローパスフィルタを通過した信号には、振幅の変化に加えて位相遅れも生じます。1次RCローパスフィルタの位相はθ=−tan⁻¹(2πfCR)で表され、カットオフ周波数では−45°、十分に高い周波数では−90°に漸近する特性です。これらの角度は1次RC回路に対する値で、高次フィルタでは次数や応答形式によって位相特性が変わります。
1次RC回路では、抵抗と静電容量の積である時定数τ=CRがステップ入力に対する応答の速さを表す指標となります。カットオフ周波数とはfc=1/(2πτ)の関係にあり、時定数が大きいほどカットオフ周波数は低くなるため、出力波形の立ち上がりは緩やかです。
この位相の遅れは、電源回路などのフィードバックループの安定性にも影響を与える要素の一つです。詳しくは以下の記事をご覧ください。
2-4. RCフィルタ・LCフィルタ・RLフィルタの違い
ローパスフィルタは、使用する部品の組み合わせによってRC・LC・RLなどに分類できます。RCフィルタは抵抗とコンデンサによる1次回路で、簡素に構成できる一方、直列抵抗による電圧降下と損失があるため、大電流の電源ラインには一般に不向きです。
LCフィルタはインダクタとコンデンサによる2次回路で、理想的には−40dB/decの漸減勾配を持ち、RCより通過損失を抑えやすい方式です。RLローパスフィルタは抵抗とインダクタを直列に接続し、出力を抵抗側から取り出します。3方式の違いを、以下にまとめます。
| 項目 | RCフィルタ | LCフィルタ | RLフィルタ |
|---|---|---|---|
| 構成部品 | 抵抗+コンデンサ | インダクタ+コンデンサ | 抵抗+インダクタ(出力は抵抗側) |
| 次数と減衰の傾き | 1次・−20dB/dec | 2次・−40dB/dec | 1次・−20dB/dec |
| 損失 | 抵抗による損失あり | 比較的小さい (DCR・磁心損失あり) |
抵抗による損失あり |
| コスト | 比較的低い | 比較的高い | 比較的低い |
| 主な用途 | センサ信号など小信号の処理 | 電源ラインのノイズ除去 | 出力を抵抗側から取り出す小信号回路など |
3. ローパスフィルタの種類
コンデンサとインダクタは、それぞれ単独でもノイズ除去効果がありますが、2つの部品を組み合わせることで、大きなノイズ除去効果が得られます。直列接続したインダクタは高周波ノイズを遮断し、並列接続されたコンデンサで高周波ノイズをバイパスさせるように働きます。
しかし、入力側と出力側のそれぞれの外部インピーダンスの高低によってもノイズ除去効果は変わります。例えば低インピーダンスのコンデンサでノイズをバイパスしようとしても、出力インピーダンスがそれ以上に低ければ、ノイズは負荷側に流れてしまいます。また逆に、高インピーダンスのインダクタでノイズを遮断しようとしても、出力インピーダンスがそれ以上に高ければ、ノイズは負荷側に流れてしまいます。そのため、外部インピーダンスが高い場合はコンデンサを近傍に配置し、外部インピーダンスが低い場合はインダクタを近傍に配置します。
このように、外部インピーダンスを考慮して、ローパスフィルタは以下の4種類を使い分けます。
① L形フィルタ(1)
入力インピーダンス ⇒ 高
出力インピーダンス ⇒ 低 の場合

② L形フィルタ(2)
入力インピーダンス ⇒ 低
出力インピーダンス ⇒ 高 の場合

③ π形フィルタ
入力インピーダンス ⇒ 高
出力インピーダンス ⇒ 高 の場合

④ T形フィルタ
入力インピーダンス ⇒ 低
出力インピーダンス ⇒ 低 の場合

但し、L形よりもπ形・T形のノイズ除去効果が大きいので、そのことも考慮して回路の選定を行います。
[補足]パッシブフィルタとアクティブフィルタ
ここまで紹介したL形・π形・T形は、インダクタやコンデンサなどの受動素子で構成するパッシブフィルタです。これに対し、オペアンプなどの能動素子を組み合わせたものをアクティブフィルタといい、代表例にサレンキー型(Sallen-Key)ローパスフィルタがあります。
アクティブフィルタは、信号を増幅するゲインを持たせられる一方、動作用電源が必要です。また、使用できる周波数や信号振幅は、オペアンプの利得帯域幅、スルーレート、電源電圧などに制約されます。
一般に、大電力を扱う電源ラインや高周波のノイズ対策にはパッシブフィルタ、小信号の増幅とフィルタリングを同時に行う用途にはアクティブフィルタが適しています。
4. ローパスフィルタにおける部品選定
信号回路において信号波形からノイズを除去しようとする場合は、信号の周波数では減衰せずノイズの周波数で減衰が大きくなる部品定数を選定する必要があります。 電源回路において直流電圧からノイズを除去しようとする場合は、直流の減衰はゼロなので、ノイズの周波数の減衰量だけを考えます。
フィルタの減衰特性(周波数による減衰量の変化)は計算で求めることができますが、実際のコンデンサとインダクタには、純粋な静電容量やインダクタンス以外に性能を左右する成分が含まれるため、単純には計算できません。
L型フィルタにおいて、コンデンサとインダクタの実際の等価回路に基づく回路図を示します。
コンデンサには静電容量(C)の他に等価直列抵抗(ESR)と等価直列インダクタンス(ESL)を含んでおり、インダクタにはインダクタンス(L)の他に直流抵抗(DCR)と寄生容量(Cp)を含んでいます。
コンデンサがC成分だけなら、周波数が高くなるほどインピーダンスが低くなりノイズ吸収効果が大きくなりますが、実際のコンデンサではESRによってインピーダンスの下限値が決まってしまい、更に高周波域ではESLによってインピーダンスが高くなりノイズを吸収しにくくなります。
また、インダクタンスがL成分だけなら、周波数が高くなるほどインピーダンスが高くなりノイズ遮断効果が大きくなりますが、実際にはインダクタに含まれるCpによって高周波域ではインピーダンスが低下し、ノイズの遮断効果が低下します。
更に、それぞれの成分も周波数によって値が変化するので、これらの要因を全て考慮して部品選定することはかなり難しくなります。
そのため、LCフィルタではシミュレーションツールを使用して部品選定する方法がよく用いられます。
一般的にシミュレーションツールでは、部品の品番別に提供されているSパラメーターやSPICEモデルを用いて、周波数毎の正確な減衰量を算出できます。
また、コンデンサのESR(等価直列抵抗)は、フィルタの減衰特性そのものにも影響します。ESRの影響と低ESRコンデンサの効果については、以下の記事で詳しく解説しています。
ローパスフィルタにおける低ESRコンデンサの効果と注意点
5. シミュレーションツールを用いた部品選定事例
パナソニック インダストリーがWeb公開している「産業・車載用LCフィルタ シミュレーター」を用いて、車載ECUからラジオノイズを流出させないことを目的としたLCフィルタの部品選定事例を紹介します。
ラジオノイズにはAM帯(1MHz付近)とFM帯(80MHz付近)があり、この2つの周波数帯域での減衰量が-60dB以上を満足する部品を選定します。
なお、前提条件として入力/出力インピーダンスは50Ωとします。
- ターゲット周波数 :1MHz, 80MHz
- ターゲット減衰量 :-60dB
- 入力/出力インピーダンス :50Ω
1) 回路を選択
L形、π形、T形の中から選択します。
今回はπ型を選択し、入力/出力インピーダンスを50Ωに設定します。
2) 部品を選択
登録されている部品の中から任意のコンデンサ品番とインダクタ品番を選択します。
今回は①100μFのコンデンサと10μHのインダクタ、②10μFのコンデンサと1μHのインダクタの2条件でシミュレーションしました。
| 部品構成① | |
|---|---|
| 回路番号 | 品番 |
| C11 | EEHZA1H101P |
| 部品構成② | |
|---|---|
| 回路番号 | 品番 |
| L21 | ETQP5M100YFM |
| 部品構成③ | |
|---|---|
| 回路番号 | 品番 |
| C31 | EEHZA1H101P |
| 部品構成① | |
|---|---|
| 回路番号 | 品番 |
| C11 | EEHZA1J100P |
| 部品構成② | |
|---|---|
| 回路番号 | 品番 |
| L21 | ETQP3M1R0KVP |
| 部品構成③ | |
|---|---|
| 回路番号 | 品番 |
| C31 | EEHZA1J100P |
3) シミュレーション結果
シミュレーションの結果、目標値を満足したのは選定②の組合せでした。 実際には回路や部品の様々な組み合わせをシミュレーションし、最適な部品を選定します。
今回のシミュレーションでは、C値とL値が大きい組合せよりもC値とL値が小さい組合せのほうが目標値を満足する結果となりました。これは高周波域でコンデンサのESLとインダクタのCpの影響が大きく表れたことによります。
低周波域(概ね0.1MHz以下)ではESLやCpの影響は小さく、ほぼC値とL値だけで減衰量が決まるため、C値やL値が大きい①の減衰量が大きくなります。しかし、FM帯(80MHz)のような高周波域ではESLやCpの値が大きい①の減衰量が小さくなるため、減衰量が逆転しました。
(同一仕様の部品であれば、C値が大きいものがESLも大きく、またL値が大きいものがCpも大きくなります)
このように、LCフィルタの設計においては、コンデンサのESLやインダクタのCpを考慮した部品選定をしなければ、予測と違う結果になるので注意が必要です。
6. ローパスフィルタの用途・使用例
ローパスフィルタの代表的な用途を4つ紹介します。
- ① 電源ラインの高周波ノイズ除去
電源ラインに重畳した高周波ノイズを減衰させます。比較的大きな電流を扱う場合は、定格と損失を確認したうえでLCフィルタが用いられます。 - ② スイッチング電源出力の平滑化
出力に残るリプルを減衰させ、滑らかな直流に近づけます。電力変換回路ではLCフィルタが用いられます。 - ③ センサ信号の安定化
センサ信号の微小ノイズや、スイッチ入力のチャタリングを抑えて信号を安定させます。必要な帯域や減衰量に応じて、RCフィルタなどを選びます。 - ④ A/D変換前のアンチエイリアシング
A/D変換前に、ナイキスト周波数(サンプリング周波数の1/2)を超える不要成分を十分に減衰させ、折り返し雑音を防ぎます。信号帯域、遷移帯域、必要減衰量に応じて、RCフィルタや高次のアクティブフィルタなどを選びます。
7. この記事に関する製品情報
8. LCフィルタシミュレーター
産業・車載用に適したパナソニック インダストリーのパワーインダクタとアルミ電解コンデンサでフィルタを構成した場合の減衰量特性がシミュレーションできるコンテンツです。産業・車載用フィルタの部品選定に是非ご活用ください。
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