高性能化、安全性向上、省エネ化を促進する高精度チップ抵抗器
2018-02-05
技術情報第6話において電流検出チップ抵抗器について紹介しましたが、今回は高精度チップ抵抗器について紹介します。
高精度抵抗器とは
高精度抵抗器とは、厳密な定義や種類はありませんが、一般的に抵抗値精度(許容差)が高く、温度係数(TCR)が小さい抵抗器のことを言います。また、精密抵抗器と呼ぶこともあります。抵抗器の初期精度は製造時の調整工程によって高くすることが可能です。しかし、抵抗値は温度などの環境条件によって変動するので、温度係数が小さく温度変動に対しても安定した精度を維持できる性能を備えている必要があります。
高精度抵抗器の用途
高精度抵抗器が必要になるのは、抵抗器の高い精度を利用して測定や制御などを高精度に行う場合です。例えば、以下に示したオペアンプによる反転増幅器の出力電圧VOUTは、記載の式で決まります。また、電圧レギュレータのVOUTも同様です。式が示す通り、オペアンプや電圧レギュレータが誤差なく理想的だとすれば、いずれも2つの抵抗器の比が所望の出力電圧を決定します。この場合、相対的に同値であればよいという考え方もありますが、2つの抵抗の絶対精度が高く温度係数が小さければ、確認や調整といった工程が軽減できます。また、電流検出用途においては、抵抗器の精度がそのまま電圧変換の誤差となって表れます。
薄膜チップ抵抗器の優位性
電子機器において、高性能化、安全性向上、省エネ化を促進するには、制御の精度を高めることが非常に重要になります。パナソニックの高精度チップ抵抗器は、薄膜チップ抵抗器と厚膜チップ抵抗器で構成されていますが、より高精度な薄膜チップ抵抗器が主流です。
以下に薄膜チップ抵抗器と厚膜チップ抵抗器の構造と特長の比較を示します。 薄膜チップ抵抗器と厚膜チップ抵抗器では、基本構造はほぼ同一ですが、抵抗体材料と抵抗体形成方法に大きな違いがあります。 薄膜チップ抵抗器は、スパッタリングにより極薄の金属合金膜を均一に形成することで、高精度でかつ低TCRを実現しています。 それに対し厚膜チップ抵抗器は、印刷により導電粒子とガラスの混合物を塗布した後に焼結して抵抗体を形成するため、抵抗体厚みの不均一による抵抗値ばらつきが大きく、またガラス (絶縁体)による電流散乱が大きいことでTCRやノイズも大きくなります。但し、抵抗体材料の見直しやトリミング技術の進展により、厚膜チップ抵抗器でも±0.1%までの高精度化が可能になりました。
また以下に、薄膜チップ抵抗器と厚膜チップ抵抗器の精度とTCRの数値イメージと、特性と性能の比較を示します。 図が示すように、薄膜チップ抵抗器は厚膜チップ抵抗器より高精度でTCRが小さくなっています。信頼性に関しても、薄膜チップ抵抗器の経時変化率が非常に小さく、長寿命であると言えます。なお、薄膜チップ抵抗器はノイズが非常に小さいという特長もあり、スマートフォンやオーディオ機器への使用で高音質化が期待できます。
パナソニックの高精度化技術
パナソニックでは、薄膜チップ抵抗器の基板材料源流からの最適化と当社生産技術研究所で培ったスパッタ技術を展開した超低TCRと、フォトリソグラフィによる微細なパターン形成技術による超高精度を実現しました。 更に当社独自の高耐久性抵抗材料/電極構造の採用により、高信頼性と熱衝撃耐性も確保し、これらにより車載向け薄膜チップ抵抗として要求される高耐久性と高精度を実現しました。