大電流化と高精度化に対応する電流検出チップ抵抗

2017-11-20

チップ抵抗器

技術情報

大電流化と高精度化に対応する電流検出チップ抵抗

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抵抗器には、用途や使用される環境条件などに適する特性や性能、形状を持たせた様々な種類があります。近年は、小型軽量が基本要求であることから、特に電子機器ではチップ抵抗器が主流になっています。また、高まる省エネ要求、バッテリ駆動機器の台頭、安全性や快適性の確保が重要課題になっていることから、バッテリ管理や電源系の制御や保護に使用される「電流検出抵抗器(シャント抵抗器)」が注目されています。

電流検出抵抗器(シャント抵抗器)とは

電流検出抵抗器は、電流経路に直列に挿入し、オームの法則により生じる電圧降下から電流値を測定するために使われる抵抗器の通称です。抵抗値が高いと電圧降下が大きく同時に損失が増え発熱も大きくなるので、一般に1Ω以下の低い抵抗値の抵抗器が使われます。

なおシャント抵抗器は、主に分流器として電流計と並列に接続し、分流器と電流計の抵抗値の比を利用して、電流計の測定範囲を拡張する目的で使用する抵抗器の呼称でした。しかし近年では、上述の電流検出用途に対してもシャント抵抗器という呼称が使われており、あまり区別されていないようです。

サージおよびESDとは

ここでは、直列に挿入して電流を測定する用途について説明するので、以後、電流検出抵抗器と記述します。ちなみに、抵抗器としての特性や構造の観点からは明確な区別がなく、呼称が違っても要求仕様が合致すればどちらの用途にも使用できます。

電流検出抵抗器の用途

電子機器において、高性能化、安全性向上、省エネ化を進める上で、回路内の電流を検出し制御することは非常に重要です。電流検出抵抗器は、最小限の電力損失で回路の電流を電圧に変換するために使用される部品です。用途は様々ですが、以下に主要な3種類を示します。

過電流検出

故障や過負荷などによって回路に異常な大電流が流れたとき、回路動作を停止するなどの処置を行うための電流検出です。

過電流検出用途の例
  • 電源回路の過電流保護
  • 二次電池の過放電/過充電保護
  • モーターの過電流保護

過電流検出用途の例image
※CSR:Current Sensing Resistor:電流検出抵抗

電流制御

DC/DCコンバータの最大出力電流を制御するためのインダクタのピーク電流検出、三相モーターを駆動するための位相や時間制御のための電流検出などがあります。

電流制御用途の例
  • DC-DCコンバータ
  • インバータ電源
  • 交流モーターの電流制御

電流制御用途の例image

電流管理

電流管理用途の例
  • ノートPCや携帯電話などの二次電池駆動機器の電流管理
  • ハイブリッド自動車の二次電池の電流管理

電流管理用途の例image

電流検出抵抗器に求められる性能とパナソニックの取り組み

近年、電子機器の高機能化が進み、回路内の電流量が増加しているため、より高電力に対応した抵抗器が求められています。 また、回路内の消費電力を抑えるための低抵抗化、過酷な温度環境でも優れた抵抗温度係数を確保する高精度な抵抗器に対するニーズが高まっています。

例えばスマートフォンの充電方式の場合、以前は最大 0.5Aでの充電でしたが、高速充電対応のため大電流化が進み、新方式のUSB PDでは最大5Aでの充電が可能になりました。
また、機器の消費電力も増加傾向にあり、低電圧大電流化と言われるように電流は増加しています。

この大電流化によって、電流検出抵抗器が検出する電流、つまり、電流検出抵抗器に流れる電流も増加しています。当然のことながら、抵抗器に流れる電流が大きくなると損失(I2R)による発熱も増加します。抵抗器の発熱は、自身の抵抗値に変動をもたらし信頼性にも影響を与えます。また、周囲温度の上昇も招き、機器全体の問題となり得ます。

電流と消費電力

パナソニックでは、電子機器の大電流化による発熱に対応する電流検出チップ抵抗器の開発に取り組んでいます。発熱と損失を抑える目的で、「低抵抗化」を推進しています。さらに、温度変化が生じたとしても抵抗値の変動を最小限に維持できるように「温度係数(TCR)の向上」を図っています。

低抵抗化

前述のように抵抗器の発熱は、損失(I2R)に依存します。したがって、抵抗値を低くすることで発熱を下げることが可能です。右の図は、4Aの電流を流したときの抵抗値による発熱の違いを示しています。例えば10mΩの抵抗器を2.5mΩに低減することで、発熱を33℃減少させることが可能です。

低抵抗化 image

パナソニックは、従来より抵抗値の低い電流検出チップ抵抗器を開発し、それを使用することで抵抗器の発熱を低減する提案を行っています。その具体的な施策は以下のような内容です。

<厚膜タイプ>
・抵抗体を基板の両面に形成する構造や、製品形状を長辺形状にすることで低抵抗化を実現。
・抵抗体材料をAgPdから比抵抗値の低いCuNi系に変更。
<金属板タイプ>
・基板に抵抗体ペーストを印刷する構造から、金属板/箔を抵抗体として用いる構造を開発。これにより抵抗体厚みを厚くすることができ、印刷構造では実現できなかった5mΩ以下の抵抗値範囲まで品揃えを拡大。

温度係数(TCR)の向上

精度の高い電流測定は、抵抗器の温度係数が小さければ、抵抗器の温度が変動しても抵抗値の変動が少なく高精度を維持できます。そのため、例えば携帯機器のバッテリ残量データの誤差を少なくし、緻密な制御と管理によりバッテリでの機器稼働時間の延長を可能にします。

しかしながら、先の「低抵抗化」と「温度係数」は相反する関係にあり、抵抗値を下げると温度係数が悪化し精度も悪化することが課題でした。

温度係数(TCR)の向上 image

パナソニックでは、抵抗体や端子電極材料の改良等によりこの課題を克服し、低抵抗でありながら低温度係数の電流検出チップ抵抗器を商品化しています。

電流検出抵抗器の使い方のポイント

電流検出は、オームの法則に基づき、抵抗器に流れる電流によって生じる電圧を測定し、電流=電圧÷抵抗値から算出します。したがって、電流検出抵抗器の値によって検出電圧の大きさ、つまり電流-電圧変換の変換利得が決まります。変換される電圧は、その回路において制御しやすい電圧値である必要があります。この点を含めて、代表的な電流検出抵抗器の使い方に関するポイントをまとめました。

抵抗値の選定

電流検出抵抗器の抵抗値は損失(I2R)を低減させるため小さいほうが望ましいですが、ノイズなどの影響を受けにくくするには逆に抵抗値を高くして検出電圧を大きくする必要があります。電流検出抵抗器の抵抗値はこれらの相反する要件の妥協点を見出して決定します。

定格電力の選定

電流検出抵抗器の定格電力の選定では、定常時の最大電流に加えて突入電流なども考慮して選択する必要があります。定格を超えると発熱により抵抗器が損傷する恐れがあります。

温度係数(TCR)の選定

電流検出抵抗器が損失(I2R)による発熱や周囲温度の変化により抵抗値が変動することで電流検出誤差が発生します。そのため、測定値の必要精度を満足する温度係数(TCR)のものを選択する必要があります。

電圧検出用配線

実装基板において、電流検出抵抗器の両端の電圧検出用配線は、抵抗器が直列に挿入されているラインの配線を含まないように抵抗器両端の直近から引き出すようにしてください。配線の銅箔抵抗は約5mΩ/1cmと言われており(35μm厚1mm幅)、一般に電流検出抵抗器の抵抗値は数十ミリΩから数百ミリΩなので、銅箔抵抗が追加されると大きな誤差となります。なお、ケルビン接続の使用も有効です。

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