コンデンサによるノイズ対策:導電性高分子コンデンサの有効性

 

コンデンサによるノイズ対策:導電性高分子コンデンサの有効性

公開日:2018-01-22
更新日:2026-03-05

image コンデンサによるノイズ対策:導電性高分子コンデンサの有効性

1. コンデンサによるノイズ対策の役割と原理【基本】

1-1. コンデンサによるノイズ除去の基本原理

コンデンサによるノイズ対策では、周波数が低い領域ではインピーダンスが高く、周波数が高い領域ではインピーダンスが低いというコンデンサの特性を利用します。電源ラインとグランド間にコンデンサを接続し、ノイズをグランド側に流すことで後段回路(負荷側)へノイズが伝わることを防ぎます。

ERJPCグラフ

ノイズをグランドへバイパスするためバイパスコンデンサとよばれたり、前段後段の各回路を分離するということで、デカップリングコンデンサと呼ばれたりすることがあります。多くのノイズは高周波の交流なので、コンデンサのこの基本特性をノイズ対策に利用することができます。

1-2. ノイズコンデンサ選定の3つの基本原則

コンデンサによるノイズ対策が十分な効果を発揮するには、いくつかの注意点があります。

1-2-1. 周波数に応じた低インピーダンス特性の選択

理想コンデンサはC(容量成分)のみの構成ですが、実際のコンデンサはR(抵抗成分)やL(インダクタンス成分)を含んでいます。 等価回路上は右図に示すようにESR(等価直列抵抗)、ESL(等価直列インダクタンス)として表されます。  コンデンサのインピーダンスは周波数によって変化し、周波数の低い領域では周波数が高くなるにつれて、インピーダンスは減少していきます。共振周波数(1/(2πfC)=2πfL となる周波数)付近でインピーダンスは最小となり、以降周波数が高くなるとインピーダンスも大きくなります。 そのためノイズを効果的に低減するためには、対象とするノイズの周波数帯域において、インピーダンスが低いコンデンサを選択することが重要です。

ERJPCグラフ
1-2-2. コンデンサとノイズ源(IC)との距離を短くする

基板レイアウト設計の注意点としてよく言われることです。ノイズの周波数域に最適なコンデンサを選んだとしても、実装における配線が適切でないとノイズは大きくなってしまいます。ノイズ源(IC)とコンデンサの距離はできるだけ短くする必要があります。両者間の距離が長くなると、配線が持つインピーダンス(主に抵抗成分・インダクタンス成分)によってノイズが大きくなってしまうためです。高周波ノイズほど両者の距離の開きによるノイズ増加は顕著となります。また、この時コンデンサ内部配線の長さにも着目する必要があります。一般的に円筒型のコンデンサは内部配線が長いため、角型コンデンサより高周波ノイズが大きくなります。

ERJPCグラフ

2. スイッチング電源のリプルノイズ対策【実務応用】

ノイズ源は様々なものがありますが、ここでは一般的なノイズ源であるスイッチング電源を例にコンデンサによるノイズ対策の機能を見てみましょう。スイッチング電源は負荷にエネルギーを供給する不可欠な回路ですが、同時に主要なノイズ源の一つです。

電源出力につながる負荷の誤動作を防止するために、特に低電圧回路の場合は出力リプル電圧ノイズは小さく抑える必要があります。スイッチング電源の出力リプル電圧(ΔVo)は、負荷にきれいな直流電流を渡すために出力コンデンサが出力リプル電流(⊿IL)を平滑(充放電)する際に発生します。出力リプル電圧(ΔVo)は、出力リプル電流(ΔIL)がコンデンサのインピーダンス(Z)を通過することで発生します。つまり、ΔVo=ΔIL・Zというオームの法則です。出力コンデンサのインピーダンス(Z)を小さくすれば、出力リプル電圧を小さくできることがわかります。

上記で示した図の通り、コンデンサのインピーダンスは、周波数領域の違いによって静電容量・ESR・ESLの成分から構成され、それぞれZC=1/2πfC、ZR=ESR、ZL=2πfLという関係式となっています。式より、静電容量を大きくしたりESR・ESLを小さくするとインピーダンスが小さくなることわかります。

出力にアルミ電解コンデンサ等を使用した場合、容量成分としては十分に大きく、コンデンサのESRによってリプル電圧が決定される場合があります。そのため、出力にアルミ電解コンデンサ等比較的静電容量の大きなコンデンサを使用してスイッチング電源の出力リプル電圧を低く抑えるにはESRの低い出力コンデンサを選ぶ必要があります。また、スイッチ動作をする以上、ESLもリプル電圧の構成要素になりますので、同様に低い必要があります。

スイッチング電源の出力リプル電圧の構成要素

図 スイッチング電源の出力リプル電圧の構成要素

コンデンサの特性の違いによるΔVo(出力リプル電圧)の例

図 コンデンサの特性の違いによる出力リプル電圧(ΔVo)の例

3. 導電性高分子コンデンサの特性と選定知識

パナソニックでは、ノイズ対策に最適なコンデンサとして、優れた特性を持つ導電性高分子コンデンサのラインアップ(SP-Cap、POSCAP、OS-CON、Hybrid)を用意しています。その中からSP-CapとPOSCAPを紹介します。

SP-Capはアルミ電解コンデンサの一種で、陽極はアルミ、誘導体は酸化アルミです。POSCAPは陽極にタンタル、誘導体に酸化タンタルを用いた、タンタル固体電解コンデンサの一種です。どちらも電解質には、導電性高分子(ポリピロール、ポリチオフェン)を使っています。この導電性高分子の電導度は約100 S/cmで、通常のアルミ電解コンデンサに使われる電解液の10,000倍、タンタル電解コンデンサに使用している二酸化マンガンの1,000倍です。この導電性高分子を用いることにより、非常に低いESRを実現しました。 中でも、SP-Capは業界トップクラスの超低ESRが特長で、POSCAPは小型、大容量が特長です。

図 SP-CapとPOSCAPの特長と構造_01
図 SP-CapとPOSCAPの特長と構造_02

図 SP-CapとPOSCAPの特長と構造

3-1. SP-Cap/POSCAPの電気特性

3-1-1. 電解コンデンサとの特性比較

先に説明したように、SP-Cap/POSCAPは一般の電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ)と比較して、非常に低ESRであるという特長を持っています。 下のグラフは、同一静電容量のアルミ電解、タンタル電解コンデンサとSP-Cap/POSCAPのESR、インピーダンスの周波数特性を比較したものです。SP-Cap/POSCAPは非常に低ESRであるため、特に共振点付近でのインピーダンスは他の電解コンデンサに比べ大幅に低くなります。

SP-Cap/POSCAPの電気特性

そのため、1個のSP-Cap/POSCAPで複数個のアルミ電解やタンタル電解コンデンサと同等以上のリプル低減効果が期待できます。以下は、330uFのアルミ電解コンデンサ20個、タンタル電解コンデンサ10個をSP-Cap個で置き換えた場合のリプル低減効果の比較例です。このように1個のSP-Capでも十分なリプル低減効果が得られることから、数量、スペース、コストの大幅削減が可能です。

種類 員数 リプル電圧 リプル波形
コンデンサなし
入力:
300kHz
670mVpp
アルミ電解コンデンサ
インピーダンス:
Typ.120mΩ
(@300kHz)
20 pcs
(6600µF)
24
[mVpp]
タンタル電解コンデンサ
インピーダンス:
Typ.55mΩ
(@300kHz)
10 pcs
(3300µF)
16
[mVpp]
インピーダンス:
Typ.55mΩ
(@300kHz)
1 pcs
(330µF)
14
[mVpp]

図 各コンデンサのリプル低減効果の比較

3-1-2. MLCCとの特性比較と適切な使い分け

次に低ESR,ESLでノイズ除去用途に多く採用されているMLCC(積層セラミックコンデンサ)との比較を行います。ノイズ除去として非常に優れた特性を持つMLCCですが、設計時に配慮が必要なMLCC固有の特性も持っています。

1. 静電容量の安定性
DCバイアスと温度特性による静電容量の減少は既知の事実です。以下にDCバイアス特性と温度特性の比較を示しています。 特にDCバイアス特性では、電圧によっては定格容量の-80%程度まで静電容量が低下する場合があります。 温度変化に対しても数十%という大きな静電容量変化が起こります。 このような特性のMLCCに対しSP-Cap/POSCAPは静電容量がほとんど変化せず、非常に安定した特性を持っています。

静電容量の安定性_01
静電容量の安定性_02

2. 圧電(ピエゾ)効果による音鳴き
MLCCは誘電体に圧電効果がある材料を使用しているため、印加される電圧が周期的に変化した場合コンデンサが微振動を起こし、実装している基板が共鳴し可聴帯の音が生じる“音鳴き”が発生します。SP-Cap/POSCAPに使用している誘電体は圧電効果がないため、音鳴きは発生しません。
実際にNotePCやモニタでMLCCの音鳴き対策としてSP-Cap/POSCAPが多数採用されています。またこれ以外にもMLCCにより発生する微振動が機器の制御や測定結果に影響を及ぼす可能性がある場合の対策としてもSP-Cap/POSCAPを使用することは有効です。

圧電(ピエゾ)効果による音鳴き

3-2. 導電性高分子コンデンサの安全性と信頼性

タンタル電解コンデンサ等の固体電解質のコンデンサでは、コンデンサンのショート、発火ということが懸念事項として挙げられます。

SP-Cap/POSCAPでは、誘電体に導電性高分子を使用していることにより故障の発生を抑制し、高い信頼性を実現しています。電解コンデンサでは外部ストレス等により誘電体酸化皮膜に損傷が生じることがあります。一般のタンタル電解コンデンサでは、この損傷部分を起点にショート、発火に至る場合があります。導電性高分子を使用した場合も損傷部分には漏れ電流が集中し局部的にジュール熱が生じます。ただし損傷部分の導電性高分子材料は300℃程度の比較的低い熱で絶縁物化し、電流を抑制します。 このように一般のタンタル電解コンデンサと比較して非常に安全性の高いコンデンサと言えます。

図 POSCAPの絶縁回復メカニズム

図 POSCAPの絶縁回復メカニズム

4. よくある質問

  • Q1. コンデンサがノイズ対策部品となる理由を教えてください
    A.コンデンサには、直流は通さず交流は通しやすい、という性質があるからです。
    ノイズの主な部分は、直流電源に混ざった高周波の交流成分です。そこで電源ラインとグランドの間にコンデンサをつなぐと、必要な直流は通さずに不要なノイズ電流だけをグランドへバイパスできます。この性質により、コンデンサはノイズだけを分離・除去できます。
    直流電源に混ざった高周波の交流成分
  • Q2. パスコン(バイパスコンデンサ)とは?役割を教えてください
    A. パスコンとは、ノイズをグランドへバイパスさせるコンデンサです。電源ラインの高周波ノイズがIC内部へ侵入することを阻止する役割を持ちます。
    ICの電源ピンの近くに配置され、ICに入る直前でコンデンサを経由してグランドへ流すことが可能です。ノイズを内部に入れないよう、横道に迂回(バイパス)させて守る役割からバイパスコンデンサと呼ばれます。
  • Q3.パスコンとデカップリングコンデンサの違いは何ですか?
    A. 実体は同じコンデンサですが、目的によって呼び分けます。パスコンはノイズ除去に着目した呼称です。一方、デカップリングコンデンサは回路間の分離に着目します。
    ICが急激に電流を消費した際、デカップリングコンデンサが瞬時に電荷を供給し、電源電圧の変動を最小限に抑えることが可能です。この働きにより、電圧の乱れが電源ラインを通じて他の回路へ波及(カップリング)するのを防ぐため、デカップリングコンデンサと呼ばれます。
    パスコンとデカップリングコンデンサの違い
  • Q4. コンデンサを複数並列接続する場合、注意すべき点はありますか?
    A.異なる容量のコンデンサを組み合わせる際に発生する反共振に注意が必要です。コンデンサは、周波数が高くなるとコイルとしての性質を示し、高周波ノイズを除去できません。そこで大容量と小容量のコンデンサを組み合わせ、広い帯域のノイズを除去します。
    しかし大容量側がコイル、小容量側がコンデンサとして機能する周波数帯が重なると、互いに共鳴し合う並列共振回路が形成されます。この共振が起きる周波数では、インピーダンスが急増しノイズを除去できません。事前にシミュレーションを行い反共振が起きるか確認することが大切です。
    導電性高分子コンデンサは電源(VR)のコイルのインピーダンスとMLCCのインピーダンスにより発生する反共振を効果的に抑えるために使用されている場合があります。
    コンデンサを複数並列接続する場合の注意点
  • Q5. ノイズ対策で積層セラミックコンデンサ(MLCC)と導電性高分子コンデンサはどのように使い分けるべきですか?
    A. 導電性高分子コンデンサとMLCCは併用されます。低周波側を前者、高周波側を後者のインピーダンスでカバーすることで電圧安定化が図られます。IC直近の高周波ノイズ除去にはMLCCが最適です。一方で、導電性高分子コンデンサは特に低周波に必要な安定した大容量を少ない員数で確保できます。MLCCにも大容量品がありますが、温度・電圧印可による容量低下や音鳴り、クラック、コストへの考慮などの観点から、汎用的には導電性高分子コンデンサが採用される傾向があります。
    積層セラミックコンデンサ(MLCC)と導電性高分子コンデンサの使い分け

5. この記事に関する製品情報

6. この記事に関連するタグ

↑Page top

ご不明点、お困りごとはございませんか? お問い合わせはこちら