プロセッサとは?
プロセッサは半導体材料を用いて作られた半導体デバイスであり、微細で膨大な回路から成るIC(集積回路)の一種です。プロセッサは様々な機器に搭載され、大量の計算処理をおこなうことにより、様々な機能を実現することができます。
プロセッサの代表例としては、パソコンやスマートフォンなどに使用されているCPU(もしくはSoC)がよく知られています。動画・ SNS ・ゲームなど、全てのアプリケーションはプロセッサの計算処理によって実現しています。プロセッサはエレクトロニクス製品の頭脳と見なされており、アプリケーションをより快適に利用するために、その処理性能向上の度合いは製品スペックにおいて最も注目される要素の一つです。
プロセッサの処理性能向上
ではプロセッサの処理性能はどのようにして向上してきたのでしょうか。その大きな要因の一つとしてよく語られるのが回路の微細化です。プロセッサ内部には微細で膨大な数のトランジスタがあります。トランジスタは計算を行う回路の最小単位であり、論理回路として適切に組み合わせることで、数が多いほど高速に計算処理を実行できます。
回路の微細化とは、このトランジスタのサイズが小さくなることで、より多くのトランジスタを内蔵できるようになることを意味します。この進化については、1965年に「製造技術の発展によってプロセッサのトランジスタ数は1年半ごとに2倍になる」というムーアの法則が提唱され、実際に微細加工技術の発展を主な要因としてトランジスタの数は急激に増加していきました。1970年当初は数千個だったトランジスタ数は、現在は多いもので数百~数千億個にも達しています。
回路微細化効果の活用には主に以下の2つの方向性があります。
- 高性能化
高性能化を目指す場合、回路微細化によってサイズ・電力を同等に保ちながら高性能化できます。
高性能化 = 回路数増加(電流増加↑) x 回路微細化(回路サイズ縮小↓・電圧低下↓)
⇒ サイズ同等・電力横ばい - 小型化・省電力化
処理性能が同等でよい場合、回路微細化によってサイズ・電力を小さくできます。
性能同等 = 回路数横ばい (電流横ばい →) x 回路微細化(回路サイズ縮↓・電圧低下↓)
⇒ サイズ縮小・電力低下
ただし、微細化によってトランジスタ数が2倍になったとして、処理性能も単純に2倍となるわけではありません。処理性能はコア数やクロック周波数などの回路構成・動作の設計や、ARMやX86などの命令セットの拡張などによっても差が出ます。また、OSやアプリケーションなどのソフトウェア設計の最適化も性能向上に大きく寄与します。
ユーザーに魅力的な高性能スペックを打ち出すため、新しいプロセッサの開発においてはこれらの要素が複合的に検討されます。 例えば、下記実例ではトランジスタ数は1.4倍程度ですが、各要素の最適化によって内臓GPUにおいては1.6倍の性能向上を果たしています。
また以下の事例のように、最適化された新しいプロセッサは、非常に効果的なユーザー体験の改善をもたらすことがわかります。
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このように、各要素の進化・最適化によってプロセッサの性能向上は今日も続いていますが、微細化の進化については不安要素が語られています。微細化による性能向上効果は2000年代後半から鈍化しているという話や、開発ターゲットが1nm以下に差し掛かりいよいよ微細化の物理限界が近づいているという話などです。そのため、高性能化のためのプロセッサ設計においては、微細化に頼らないアプローチが一層盛んになっています。例えば、回路を積層することでトランジスタ増加ペースを維持したり、処理要求集中時にだけ動作周波数をブーストしたり、処理内容応じて最適化した高効率コアを設けるなどの事例があります。このように、微細化以外の改善や微細化の残された伸びしろによってプロセッサの性能は今後も継続的に向上していくことが期待されますが、一方では従来のプロセッサとは違う新たな原理による大幅な高性能化も研究されています。特に有望なものとして、量子コンピュータや光コンピュータがあり、これらの技術によるブレイクスルーも注目 していきたい内容の一つです。
プロセッサの用途展開
最後に、プロセッサの用途展開について概観します。前述の通り、パソコンやスマートフォンはプロセッサの主要用途のひとつですが、プロセッサの用途はそれらにとどまりません。これら情報端末の利便性は、その裏で大量のデータを計算・保存し、高速で私たちにつなぐ情報通信インフラがあってこそ、今や私たちの日常となった情報化社会は発展してきたのです。
振り返ると、私たち消費者が情報端末で扱うデータは、無線通信技術の発展とともに「文字・音声」→「画像」→「動画」へと大容量化し、情報端末を使用する世界人口も大きく増加してきました。その中で、情報通信インフラは、より多人数からのより大容量なデータ処理要求に高速に対応するために、より高性能なプロセッサが年々展開されてきました。特に、情報通信インフラの上流に当たるクラウドデータセンターにおいては、多くのユーザーの膨大なデータが計算・保存・通信されるため、高電力で高性能なプロセッサが多数使用されています。
そしてこれから2020年代後半にかけては、ますます高性能なプロセッサが必要になることが見込まれています。それは、更なる社会利便性向上・社会問題解決のために、AI・自律ロボット・自動運転など高度な情報処理を必要とするアプリケーションの普及が目指されているからです。
私たちパナソニッククループでは、「より良いくらし」「持続可能な地球環境」の両立を目指した活動を行っています。
特にAIについては、昨今の生成AIアプリケーションの急速な具体化により、その性能を決めるプロセッサへの注目度は以前にも増して大きいものとなりました。AIは近い将来、あらゆる分野で人間を凌駕し社会の興亡を左右するとの予測も出るなど、国レベルでの開発競争が激化していることがよく報じられています。このような背景により、プロセッサの需要は長期的に増加していくことが見込まれています。
今回の記事では、プロセッサについて、どのような物であるか、性能を向上させる要素は何か、そしてその用途展開など、プロセッサの概要理解に必要な内容について触れてきました。次回記事では、用途に応じて使い分けられるプロセッサの種類(CPU、GPU、FPGA、ASIC、etc)の特長と、その使われ方について解説していきます。