受動部品の認定用信頼性試験規格AEC-Q200とは?

 

受動部品の認定用信頼性試験規格AEC-Q200とは?
受動部品を対象としたAEC-Q200について解説。さらに、パナソニックのAEC-Q200対応品についてもご紹介

2023-09-29

自動車には、多数の電子部品で構成されるECU (電子制御ユニット)が搭載されています。自動車が過酷な環境下で走行を行っても、電子部品は故障することなく正常に動作していなければなりません。このため車載向けの電子部品は、民生品のものと比較して、より厳しい品質条件が要求されます。
車載向け半導体デバイスの品質管理規格を定めているのがAEC規格と呼ばれるものです。AEC規格にはさまざまな種類がありますが、今回は受動部品を対象としたAEC-Q200について解説します。さらに、パナソニックのAEC-Q200対応品についてもご紹介します。

AEC規格のAEC-Q200とは

AEC規格とは

AEC(Automotive Electronics Council:車載電子部品評議会)は、米国の3大自動車メーカーを中心として大手電子部品メーカーが参加して1990年代に設立された団体です。ここでは、車載向け電子部品の規格や品質の共通規格が策定されています。特にAECのコンポーネント技術委員会(AEC Component Technical Committee)では、電子部品の信頼性や認定基準の取り決めが行われています。

AEC規格とは、車載向け電子部品の信頼性における世界基準の規格です。定められた基準をクリアしなければ、自動車関係メーカーはその部品を買いません。AEC規格の種類は電子部品ごとで異なっており、受動部品を対象にした規格が「AEC-Q200」です。受動部品とは、供給される電力を消費したり、蓄積したり、放出したりする部品のことを指します。

  • AEC-Q100 集積回路(IC)
  • AEC-Q101 ディスクリート半導体(コンデンサ、トランジスタ、ダイオードなど)
  • AEC-Q102 ディスクリートオプトエレクトロニクス半導体(LEDなど)
  • AEC-Q103 車載センサー
  • AEC-Q104 マルチチップモジュール(複数のペアチップやICなどを搭載したもの)
  • AEC-Q200 受動部品(抵抗、キャパシタ、インダクタなど)

AEC-Q200のグレード

AEC規格は製品の使用温度範囲によってグレードが分かれ、それぞれ部品の使用できる場所が異なります。AEC-Q200には5つのグレードがあり、グレードの数字が低いものほど低温と高温に耐えなければなりません。

表1 グレードの保証温度範囲と適応箇所例

グレード 温度範囲 代表的な適応箇所の例
低温度 高温度
0 -50°C +150°C 全ての取付箇所
1 -40°C +125°C エンジンルームの大部分
2 -40°C +105°C 乗員ルームの高温箇所
3 -40°C +85°C 乗員ルームの大部分
4 0°C +70°C 電装用以外

AEC-Q200の試験項目

自動車が過酷な環境でも安全に走行を行うためには、電子部品が故障せずに正常に動作を続ける必要があります。AEC-Q200準拠品として市場に出すためには、厳しい条件下で行われる環境試験や電気的試験をクリアしなければなりません。AEC-Q200の認証対象となる受動部品と、適用する試験項目は下表の通りです。

試験対象はコンデンサ、抵抗、バリスタ、水晶振動子など多岐にわたり、部品ごとに試験項目が決められています。部品の種類がリード部品かSMD(Surface Mount Device:表面実装部品)かによっても、実施する試験項目が異なります。さらに、同じコンデンサでも品種によって、試験項目が異なるため注意が必要です。

表2 AEC-Q200の部品別試験表
(「AEC-Q200 REV E STRESS TEST QUALIFICATION FOR PASSIVE COMPONENTS」より抜粋)
試験
No.
ストレス・試験 コンポーネント
タンタルおよび
ニオブコンデンサ
セラミックコンデンサ アルミ電解コンデンサ フィルムコンデンサ 磁性部品 ネットワーク 抵抗器 サーミスタ トリマコンデンサ/
可変抵抗器
バリスタ 水晶振動子 セラミック発振子 EMIサプレッサ/フィルタ ポリマーリセッタ
ブルヒューズ
ヒューズ 電気二重層コンデンサ
テーブル番号
12345678910111213141516
1電気的性能
(試験前後)
3高温 (耐熱性) 試験  
4温度サイクル
5内部破壊解析              
7湿中負荷
8高温作動
9外観検査
10外形寸法
11端子強度
12耐溶剤性
13物理的衝撃
14振動
15はんだ耐熱性 
17ESD     
18はんだ付け性
19電気的特性
20可燃性   
21基板固着性(SMD) 
22端子強度(SMD)
24難燃性               
25回転寿命               
27サージ電圧               
30電源線トランジェント
イミュニティ試験
              
32短絡電流耐久試験               
33故障電流耐久試験               
34寿命末期の状態検証               
35ジャンプスタート耐性               
36ロードダンプ耐性               

AEC-Q200対応品のご紹介

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

電解質には、導電性ポリマーと電解液を融合させたものを使用。大きなリプル電流を印加できるだけでなく、漏れ電流を抑えることで機器の高信頼化が期待できます。耐振動構造品 (ø6~)にも対応可能。最高使用温度150℃に対応。小形で高い信頼性が求められるECUや、通信基地局などの利用に最適です。

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アルミ電解コンデンサ(表面実装形)

業界トップクラスの高耐熱、長寿命、低インピーダンス、高リプルのコンデンサを取りそろえており、電子機器の電源への利用が最適です。一般電子機器から車載電装用途まで適用しており、耐振動構造品 (ø8以上)、最高使用温度125℃にも対応。 RoHS指令(2011/65/EU)や鉛フリーはんだ付けにも対応しています。

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自動車用・産業インフラ用フィルムコンデンサ

xEV(電動車)、産業インフラ用のインバータ回路の平滑、スナバ、ノイズ抑制のために高圧大電流に対応したコンデンサです。電極には独自蒸着技術の保安機構付きフィルムが採用されています。最高使用温度110℃に対応。 AEC-Q200に準拠したxEV充電回路用フィルムコンデンサのシリーズは以下の通りです。

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チップ抵抗器

高耐熱チップ抵抗器から抵抗ネットワークまで各種ラインアップを取りそろえています。最高使用温度175℃に対応(grade 0)。

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車載用パワーインダクタ

小形ながら大電流に対応しており、ECUの電源回路の省スペース化を実現します。フェライトタイプのパワーインダクタよりも、高い周波数帯において損失の少ないことが特長。最高使用温度160℃に対応。優れた耐熱性と耐振動性により、厳しい環境下におかれるECUの使用に最適です。

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NTCサーミスタ(チップ形)

面実装タイプ(0402・0603・1005・1608サイズ)で、広い範囲の抵抗温度係数と抵抗値を取りそろえています。積層構造と独自の外電形成技術により高い信頼性を実現しており、150°Cまで使用可能な高耐熱の車載対応品もあります。

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ESDサプレッサ

ESDサプレッサは、静電気から電子機器を保護するための電子部品です。高電圧が印加されない通常使用時には、高速差動信号回路や高周波回路の信号品質の確保に貢献します。高耐量ESDサプレッサ(EZAEG3W11AV)がAEC-Q200に準拠しています。最高使用温度125℃に対応。

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チップバリスタ

バリスタとは可変抵抗器のことを指します。印加電圧の大きさによって抵抗値が変化する特性を生かして、雷サージや静電気から電子機器を保護する電子部品です。 独自のセラミック材料・プロセス技術により、優れた静電気保護効果を実現。電源から高速信号ラインまで幅広い用途で使用できます。車載用のチップバリスタのみAEC-Q200に準拠しています。最高使用温度150℃に対応。

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ZNRサージアブソーバ

ZNRサージアブソーバとは、有害なサージ電圧を吸収して電子機器の破壊を防ぐための電子部品です。OA機器から自動車まで、あらゆる用途で数多く使用されています。SMDタイプHFシリーズがAEC-Q200に準拠しています。最高使用温度150℃に対応。

商品ページはこちら(ZNRサージアブソーバ)

まとめ

AEC規格は車載向け電子部品の信頼性における世界基準の規格で、中でもAEC-Q200は受動部品を対象としたものです。厳しい条件下で行われる試験をクリアして、ようやくAEC-Q200準拠品として市場へ送り出せるのです。パナソニックでは、AEC-Q200準拠品を数多く取りそろえて、車載向け製品の開発に貢献します。

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AEC-Q200
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