慣性センサの基礎知識 ~ジャイロセンサ、加速度センサ~

 

フィルムコンデンサの基礎知識
~特性・用途~

2022-02-18

コンデンサの用途として需要が拡大しているのが、EV/HEVや太陽光/風力発電システムなど環境関連機器のインバータ用です。DC 500Vを超えるような高電圧に耐え、数十年もの長寿命、そして安全性が求められるこの分野では、フィルムコンデンサの需要が高まっています。

フィルムコンデンサの優れた特長

コンデンサの特性(性能)を表す指標として、以下のものがあります。電気をどれだけ貯められるかを表す「静電容量」、貯めた電気を押し出す強さを表す「定格電圧」、貯めた電気を漏らさず保持できる能力を表す「絶縁抵抗」、電圧にどれだけ耐えられるかを表す「破壊強度」、電気を貯めたり放出したりする際の電流の大きさを表す「定格電流」、電気を貯めたり放出したりする際のロス(抵抗)を表す「損失」です。

フィルムコンデンサは、ほかのコンデンサと比較して上記の特性の多くに強みを持っています。

図1 コンデンサの種類と特長

温度変化による容量変化が小さい

コンデンサの静電容量は温度によって変化します。例えば、セラミックコンデンサでは温度が変化すると誘電体の誘電率が変わり、結果として静電容量が変動します。また、アルミ電解コンデンサは温度変化によって電解液の電気伝導度や電極の抵抗が変わるため、こちらも静電容量が変化します。

セラミックコンデンサやアルミ電解コンデンサは、温度変化によって静電容量が10%以上変動しますが、同じ温度範囲におけるフィルムコンデンサの静電容量は数%程度しか変動しません。

絶縁抵抗が高い

フィルムコンデンサは、誘電体としてPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などが使われますが、セラミックコンデンサやアルミ電解コンデンサと比較して、絶縁抵抗が高く、貯めた電気を保持する能力が高いという特長があります。コンデンサは温度が上がると、一般的に絶縁抵抗が下がるのですが、温度が高くなっても、ほかのコンデンサと比べてフィルムコンデンサの絶縁抵抗下がりにくく、性能を維持します。

また、フィルムコンデンサはほかのコンデンサと比較して、電気を出し入れする際の損失が小さいという特長を持っています。中でもPPの誘電体を使ったフィルムコンデンサは損失が非常に小さい上に、温度が変化しても損失は小さいままという点で優れています。

極性がない

コンデンサには極性があるものとないものがあり、例えばアルミ電解コンデンサには極性があるため直流のみで使用しますが、フィルムコンデンサには極性がなく、直流でも交流でも使用できます。

故障が少なく長寿命

フィルムコンデンサの誘電体であるプラスチックフィルムは、物性が安定しているため他のコンデンサと比較して故障が少なく、寿命が長いという特長があります。

バイアス特性変化がない

セラミックコンデンサでは印加電圧が変化すると静電容量も変化しますが、フィルムコンデンサは印加電圧が変化しても静電容量はほとんど変化しません。この特性を生かして、オーディオ回路でフィルムコンデンサを使用した場合、ひずみが少なく音質が向上するメリットがあります。

優れた耐電圧特性、耐リプル電流性

アルミ電解コンデンサの耐電圧が500V程度なのに対して、フィルムコンデンサでは4000V近い高耐電圧対応の製品をつくることができます。用途として、太陽光発電システムで650V、HEV用では48~750V、鉄道車両用なら1000~3000Vという高電圧を扱うインバータ電源が使われます。そうしたインバータ電源の電圧安定化用(ノイズの除去、平滑化)としてフィルムコンデンサは不可欠となります。

フィルムコンデンサは耐リプル電流性(許容電流)にも優れており、大電流が流れても自己発熱しにくいという特長を持っています。

フィルム材料別の特性比較

ここまでフィルムコンデンサに優位性のある特性についてご紹介してきました。さらにフィルムコンデンサの中で、フィルム材料の違いによる特性を比較していきます。フィルム材料としてPP、PET、PPS、PENで比較すると、PPは耐電圧、誘電損失、絶縁抵抗、比重、コストの面でほかの3つよりも優れており、誘電率だけは他より低いのですが、総合的に見るとPPが優位で、一般的なフィルムコンデンサでは、PPを使ったものが多くなっています。

図2 各種誘電体フィルムの特長

コンデンサ市場とアプリケーション

EV/HEVや太陽光/風力発電システムに使われるインバータをはじめとして、環境関連市場は世界的に大きく伸びていることは、皆さんご存じの通りです。中でも、ハイパワー領域(DC500Vを超える高電圧、大容量)の需要は特に拡大しています。インバータ用コンデンサの性能として、高耐電圧かつ長寿命、高信頼性が要求されるためフィルムコンデンサが多く採用されています。

ここまでフィルムコンデンサの優位性を紹介してきましたが、すべての特性において優れているというわけではありません。

その一つとして、単位体積あたりの静電容量が挙げられます。同体積でフィルムコンデンサとアルミ電解コンデンサを比較すると、おおよそ100分の1と大きな差があります。このため大きな静電容量が必要な用途においてはアルミ電解コンデンサ等が採用されており、必要なスペックによってコンデンサの使い分けがされています。

特に伸びている環境関連市場における環境対応車(EV/HEV用)や太陽光発電、風力発電においては、機器の高電圧、大容量の要求が高まっています。その流れのなかで、高電圧用途においては、フィルムコンデンサが最適といえるでしょう。

パナソニックのフィルムコンデンサ:ラインアップ

パナソニックが提供しているフィルムコンデンサのラインアップをご紹介します。大きく分けて、汎用商品とカスタム商品の2つがあります。汎用商品は低圧と中高圧およびその他に分けられ、さらに低圧は面実装と積層、中高圧は汎用ディスクリートと雑音防止用があります。カスタム商品は、EV/HEV用、太陽光発電などの社会インフラ用、白物家電用の3つがあります。

汎用商品は島根県松江市にある拠点で、開発と生産を行っています。カスタム製品は富山県砺波市の拠点で開発と生産をしています。この国内の2拠点に加えて、中国広東省に汎用商品からカスタム商品まで生産する拠点、ヨーロッパのスロバキアに現在は車載用専用商品の生産拠点があります。

図3 フィルムキャパシタの生産拠点と商品マトリックス

パナソニックのフィルムコンデンサ:特長

パナソニックが最も得意としている分野がインバータ電源用のフィルムコンデンサです。EV/HEV用で使われるコンデンサにおいては50%を超えるシェアがあり、EV/HEV用で培った技術をそれ以外の商品、主に環境関連業界向け商品に展開しています。他社のフィルムコンデンサ商品との比較において、耐湿性、安全性、長寿命といった特長を持っています。

高耐湿性

フィルムコンデンサの主な劣化要因は電極の酸化が挙げられます。パナソニックでは、外装ケース材料や充填樹脂材料、高耐湿メタリコン(コンデンサの内部電極とリード端子を接続するための金属被覆)を開発し、外部から素子内部に水分が侵入しにくくする「封止技術」と、高耐湿性を持つ蒸着金属の使用や内部電極の加工技術を工夫して、水分が素子に到達しても電極の腐食を抑制する「耐候技術」によって、高い耐湿信頼性を実現しています。


図4 フィルムコンデンサ構造と耐湿試験

高安全性、長寿命

パナソニックでは化学フィルムメーカーと協力して、高耐圧や高耐熱のPPフィルムを開発しています。また、コンデンサ内部に独自のパターン技術により保安機構を備えています。この保安機構により、通常はコンデンサ内部のどこかでいったん絶縁破壊が起きてしまうと全体破壊につながりますが、パナソニックのフィルムコンデンサは多数のコンデンサセルに分かれており、もし絶縁破壊が発生してもそのセルを切断(ヒューズ機能)して破壊が全体に進行しない構造になっています。このヒューズ機能は、蒸着工程を自社内に持ち高精細なパターン蒸着技術を磨いてきたからこそ実現できたものになります。

図5 フィルムコンデンサのヒューズ機能

まとめ

パナソニックのインバータ電源用フィルムコンデンサが搭載された多数のEV/HEVは、世界のさまざまな気候の地域で使用されてきました。このEV/HEV向けインバータ電源用フィルムコンデンサから得た多くの知見が、高耐湿性、高安全性、長寿命という付加価値を持った高信頼性コンデンサの実現につながっています。パナソニックのフィルムコンデンサが持つ付加価値は、太陽光発電/風力発電システムをはじめとした環境関連機器において市場/お客様の要望にも合致するものです。今後ますます需要が拡大する環境関連機器の進化に、いっそう貢献するべく注力していきます。

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