コンデンサによるノイズ対策:導電性高分子コンデンサの有効性

2018-01-22

ノイズ対策

技術情報

コンデンサによるノイズ対策:導電性高分子コンデンサの有効性


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コンデンサによるノイズ対策

コンデンサによるノイズ対策では、周波数が低い領域ではインピーダンスが高く、周波数が高い領域ではインピーダンスが低いというコンデンサの特性を利用します。電源ラインとグランド間にコンデンサを接続し、ノイズをグランド側に流すことで後段回路(負荷側)へノイズが伝わることを防ぎます。

コンデンサによるノイズ対策の注意点

ノイズをグランドへバイパスするためバイパスコンデンサとよばれたり、前段後段の各回路を分離するということで、デカップリングコンデンサと呼ばれたりすることがあります。多くのノイズは高周波の交流なので、コンデンサのこの基本特性をノイズ対策に利用することができます。

コンデンサには上記の他に、電源電圧を一定に保つ役割を持っています。急峻な負荷変動が発生(電源ラインに流れる電流が急激に変化)した場合、電源の応答が追従できない場合があります。 この時にコンデンサに蓄えられた電荷で負荷電流を共有することで電源電圧の変動を抑制できます。

コンデンサによるノイズ対策の注意点

コンデンサによるノイズ対策が十分な効果を発揮するには、いくつかの注意点があります。

① ノイズの周波数域において、インピーダンスが低いコンデンサを選択する

理想コンデンサはC(容量成分)のみの構成ですが、実際のコンデンサはR(抵抗成分)やL(インダクタンス成分)を含んでいます。 等価回路上は右図に示すようにESR(等価直列抵抗)、ESL(等価直列インダクタンス)として表されます。  コンデンサのインピーダンスは周波数によって変化し、周波数の低い領域では周波数が高くなるにつれて、インピーダンスは減少していきます。共振周波数(1/(2πfC)=2πfL となる周波数)付近でインピーダンスは最小となり、以降周波数が高くなるとインピーダンスも大きくなります。 そのため対象とするノイズの周波数域において、インピーダンスが低いコンデンサを選択することが重要です。

ノイズの周波数域において、インピーダンスが低いコンデンサを選択する

② ノイズ電流の流れる範囲を小さく限定する(コンデンサをICなどの負荷の近くに配置する)
③ 実装基板のパターンのインダクタンスを小さくする(ICではピンとコンデンサの間をできるだけ短くする)

この2つは、基板レイアウト設計でよく言われることです。ノイズの流出、流入を最小限にするには、コンデンサは負荷のできるだけ近くに接続してノイズをバイパス/デカップリングする必要があります。また、コンデンサのリードも含めてラインインダクタンスは、スパイクノイズを発生させる場合があるので、極力小さくする=配線(リード)を短くします。

スイッチング電源の出力リプルノイズ対策

スイッチング電源の出力電圧に含まれるリプルノイズは、電子回路において抑制すべき重要なノイズです。 降圧スイッチング電源の出力リプル電圧ΔVoは、インダクタに流れる電流のリプル成分⊿ILと出力コンデンサの静電容量、ESR、ESLによって発生します。出力リプル電圧を抑えるには出力コンデンサの静電容量を大きくする、ESRを下げる等が有効です。出力にアルミ電解コンデンサ等を使用した場合、容量成分としては十分に大きく、コンデンサのESRによってリプル電圧が決定される場合があります。そのため、出力にアルミ電解コンデンサ等比較的静電容量の大きなコンデンサを使用してスイッチング電源の出力リプル電圧を低く抑えるには、ESRの低い出力コンデンサを選ぶ必要があります。また、スイッチ動作をする以上、ESLもリプル電圧の構成要素になりますので、同様に低い必要があります。

スイッチング電源の出力リプルノイズ対策

導電性高分子コンデンサ

パナソニックでは、ノイズ対策に最適なコンデンサとして、優れた特性を持つ導電性高分子コンデンサのラインアップ(SP-Cap、POSCAP、OS-CON、Hybrid capacitor)を用意しています。その中からSP-CapとPOSCAPを紹介します。

導電性高分子コンデンサ

SP-Capはアルミ電解コンデンサの一種で、陽極はアルミ、誘導体は酸化アルミです。POSCAPは陽極にタンタル、誘導体に酸化タンタルを用いた、タンタル固体電解コンデンサの一種です。どちらも電解質には、導電性高分子(ポリピロール、ポリチオフェン)を使っています。この導電性高分子の電導度は約100 S/cmで、通常のアルミ電解コンデンサに使われる電解液の10,000倍、タンタル電解コンデンサに使用している二酸化マンガンの1,000倍です。この導電性高分子を用いることにより、非常に低いESRを実現しました。 中でも、SP-Capは業界トップクラスの超低ESRが特長で、POSCAPは小型、大容量が特長です。

SP-Cap/POSCAPの電気特性

電解コンデンサとの比較

先に説明したように、SP-Cap/POSCAPは一般の電解コンデンサ(アルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ)と比較して、非常に低ESRであるという特長を持っています。 右のグラフは、同一静電容量のアルミ電解、タンタル電解コンデンサとSP-Cap/POSCAPのESR、インピーダンスの周波数特性を比較したものです。SP-Cap/POSCAPは非常に低ESRであるため、特に共振点付近でのインピーダンスは他の電解コンデンサに比べ大幅に低くなります。

SP-Cap/POSCAPの電気特性

そのため、1個のSP-Cap/POSCAPで複数個のアルミ電解やタンタル電解コンデンサと同等以上のリプル低減効果が期待できます。以下は、330uFのアルミ電解コンデンサ20個、タンタル電解コンデンサ10個をSP-Cap1個で置き換えた場合のリプル低減効果の比較例です。このように1個のSP-Capでも十分なリプル低減効果が得られることから、数量、スペース、コストの大幅削減が可能です。

MLCCとの比較

次に低ESR,ESLでノイズ除去用途に多く採用されているMLCC(積層セラミックコンデンサ)との比較を行います。ノイズ除去として非常に優れた特性を持つMLCCですが、設計時に配慮が必要なMLCC固有の特性も持っています。

1. 静電容量の安定性

DCバイアスと温度特性による静電容量の減少は既知の事実です。以下にDCバイアス特性と温度特性の比較を示しています。 特にDCバイアス特性では、電圧によっては定格容量の-80%程度まで静電容量が低下する場合があります。 温度変化に対しても数十%という大きな静電容量変化が起こります。 このような特性のMLCCに対しSP-Cap/POSCAPは静電容量がほとんど変化せず、非常に安定した特性を持っています。

静電容量の安定性

2. 圧電(ピエゾ)効果による音鳴き

MLCCは誘電体に圧電効果がある材料を使用しているため、印加される電圧が周期的に変化した場合コンデンサが微振動を起こし、実装している基板が共鳴し可聴帯の音が生じる音鳴きが発生します。SP-Cap/POSCAPに使用している誘電体は圧電効果がないため、音鳴きは発生しません。
 実際にNotePCやモニタでMLCCの音鳴き対策としてSP-Cap/POSCAPが多数採用されています。またこれ以外にもMLCCにより発生する微振動が機器の制御や測定結果に影響を及ぼす可能性がある場合の対策としてもSP-Cap/POSCAPを使用することは有効です。

圧電(ピエゾ)効果による音鳴き

安全性

タンタル電解コンデンサ等の固体電解質のコンデンサでは、コンデンサンのショート、発火ということが懸念事項として挙げられます。
SP-Cap/POSCAPでは、誘電体に導電性高分子を使用していることにより故障の発生を抑制し、高い信頼性を実現しています。電解コンデンサでは外部ストレス等により誘電体酸化皮膜に損傷が生じることがあります。一般のタンタル電解コンデンサでは、この損傷部分を起点にショート、発火に至る場合があります。導電性高分子を使用した場合も損傷部分には漏れ電流が集中し局部的にジュール熱が生じます。ただし損傷部分の導電性高分子材料は300℃程度の比較的低い熱で絶縁物化し、電流を抑制します。 このように一般のタンタル電解コンデンサと比較して非常に安全性の高いコンデンサと言えます。

<POSCAPの絶縁回復メカニズム>

POSCAPの絶縁回復メカニズム

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