データセンターに必須?48V給電の理由と電源設計の課題 (2) ~高性能コンデンサの選定~

2021-08-25

課題解決事例

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データセンターに必須?
48V給電の理由と電源設計の課題 (2)
~高性能コンデンサの選定~

前回の記事では、データセンターにおける48V給電について、48Vから中間電圧に一旦落とした後に2段目の電源で負荷電圧に変換する2段階方式があることを解説しました。(図1)
そこで今回は、主流の方式である2段階方式において、最適なコンデンサの選定で考慮すべきポイントについて解説します。

図1 2段階の電源構成ボードイメージ
図1 2段階の電源構成ボードイメージ

コンデンサ選定時に考慮すべきポイント

1st stageでの考慮点

48V入力部のコンデンサには入力電力の瞬低や、出力側の大電流負荷変動で発生する電圧ドロップを防ぐため、十分な容量が必要となります。容量が必要となった時、まずアルミ電解コンデンサが検討されるのが一般的ですが、用途によっては容量の信頼性について十分に考慮が必要となります。実際に、00年代にはデスクトップPCで一部のアルミ電解コンデンサが原因で動作不具合となる問題が多発しました。長期高温環境で電解液がドライアップし容量が急減したためです。
その対策として有効とされたのが、固体の電解質を使ったOS-CONです。OS-CONは固体電解質を使用しているため容量が減少しにくく、最終製品の長期安定動作・高信頼化に貢献します。(図2)

図2 アルミ電解コンデンサの電解液ドライアップによる容量低下
図2 アルミ電解コンデンサの電解液ドライアップによる容量低下

サーバーをはじめとしたデータセンターの機器はPC以上の高い信頼性が求められ、OS-CONが既に使用されています。データセンターで新たに登場した48Vラインにも固体電解質を使用したOS-CONやHybridコンデンサ(*1)を求める声が増えており、パナソニックは定格63-100Vのラインナップを充実させています。

(*1) Hybridコンデンサ・・・固体電解質と液体電解質の両方を用いたHybridタイプで、液体電解質のみを使用する電解コンデンサのようなドライアップによる大幅な劣化は発生しない。

2nd stageでの考慮点

2nd stageの電源設計において、基板表面の実装面積はますます逼迫しています。高性能化のために、プロセッサのサイズUP、メモリ枚数が増加、アクセラレーターの付加などをする中で、1st stage電源も付加され2nd stageに充てる面積は限られています。そこで、2nd stageの入力バルクコンデンサとして最適なのがパナソニックのOS-CONです。電解コンデンサと比較して小型・大容量で大電流変動に対応するだけではなく、業界トップクラスの低ESR・許容リプル電流特性により小さなサイズ、少ない員数で電源を安定化します。(図3)

図3 OS-CONによる入力側実装面積の削減効果
図3 OS-CONによる入力側実装面積の削減効果

また、パナソニックのPOSCAPは、製品サイズの差により単品ではOS-CONより小容量となりますが、高誘電率のタンタルを使用しているため容量密度で見ると最も優れたコンデンサです。製品高さ1.2-2㎜の低背品のラインナップは基板背面側への実装も可能なため、例えば基板表面に面積余裕のないサーバー、小型・薄型のアクセラレーター・NICカード、薄型SSDの瞬低保護コンデンサとして、十分な容量を提供できるソリューションとなっています。(図4)

高密度アクセラレーター 基板背面側
図4 POSCAPによる小型・高密度基板への対応
図4 POSCAPによる小型・高密度基板への対応

一方、出力側のコンデンサは、前述のように基板表面の実装面積が逼迫していることで、基板背面への実装するケースが増えています。パナソニックのSP-Capは大容量・低ESRを実現しながら製品高さが2㎜と低いため、このトレンドに適応しています。(図5)

図5 SP-Capによる出力側実装面積の節約
図5 SP-Capによる出力側実装面積の節約

基板背面に実装できるコンデンサとしてはMLCCも活用されています。しかし、大電流負荷変動への対策として起こる員数増加は設計における課題の一つとなっています。MLCCは電圧・温度による特性変化や、機械ストレスによる破損などの懸念があり、員数が増えるほど設計が難しくなるためです。また、MLCC員数増加によるコストアップ・供給問題も度々発生しています。SP-Capは温度・電圧安定性に優れた大容量・低ESR特性により、MLCC複数個の働きを1個で行えることで、MLCC員数増加に伴うトラブルを軽減します。

このように、バランスの良いSP-Capを使用することで、実装面積制限が厳しい中においても十分に安定性の高い電源設計の簡易化が可能となります。SP-Capは導電性高分子コンデンサの中で最も優れた低ESR特性を持ち、最も多くの場合において最適となりますが、小型・大容量特性が重視される場合には、前述のように容量密度に優れたPOSCAPが有効となります。

導電性高分子コンデンサの安定性

ここまで見てきたように、導電性高分子コンデンサは、アルミ電解コンデンサやMLCCで設計した際に生じる特性の不安定要素を補うコンデンサとして有効なため、様々な機器設計において「設計しやすい」、「小型化できる」、「高信頼化に役に立つ」等の声を頂いています。(図6, 図7)
技術進化が進む中で、コンデンサも更なる進化が求められています。パナソニックは導電性高分子コンデンサの主要サプライヤーとして改善・改良を続け、今後もデータセンター機器をはじめとする様々な用途や使用条件に応じて最適な製品・ソリューションを提案し電源設計をサポートしていきます。

図6 導電性高分子コンデンサの利点 (vs MLCC)
図6 導電性高分子コンデンサの利点 (vs MLCC)
図7 導電性高分子コンデンサの利点 (vs 一般アルミ電解・タンタルコンデンサ)
図7 導電性高分子コンデンサの利点 (vs 一般アルミ電解・タンタルコンデンサ)

リファレンスボードへの採用事例(Texas Instruments様)

48Vデータセンター機器におけるパナソニックの導電性高分子コンデンサの有用性を示す例として、世界随一のアナログICメーカーとして知られるTexas Instruments様設計のデータセンター向け最新電源リファレンスボードへの採用事例を紹介します。

対象ソリューション1 (1st stage)

Texas Instruments様製
データセンター・通信機器向けソリューション

設計番号: PMP22510
https://www.ti.com/tool/PMP22510
省面積・高効率(ピーク95%)で48Vから中間電圧へ変換
仕様:60Vin max (48V typ)
- 1.8-5V 40A max
Controller IC: TPS53667

採用されているパナソニック商品

① ハイブリッドコンデンサ
品番: EEHZA1J100P
(63V,10μF,120mΩ,ø10xH10.2mm)
② メタルコンポジットインダクタ
品番: ETQP5M1R0YLC
(1.0μH,2.3mΩ,Isat 37.8A,10.9x10xH5mm)
図8 リファレンスボード採用事例1
図8 リファレンスボード採用事例1
画像提供:
Texas Instruments

対象ソリューション2 (2nd stage)

Texas Instruments様製
データセンター・通信機器向けソリューション

設計番号: PMP21887
https://www.ti.com/tool/PMP21887
最新アクセラレーター, スイッチのASIC等から要求される大電流に対応。
仕様:14Vin max (12Vin typ)
- 0.85V 600A max
Controller IC: TPS536C7

採用されているパナソニック商品

① SP-Cap
品番: EEFSX0D471E4
(2.5V,470μF,4.5mΩ,7.3x4.3xH2mm)
② ハイブリッドコンデンサ
品番: EEHZA1V271P
(35V,270μF,20mΩ,ø10xH10.2mm)
図9 リファレンスボード採用事例2
図9 リファレンスボード採用事例2
画像提供:
Texas Instruments

対象ソリューション3 (1段階方式+2段階方式1段目)

Texas Instruments様製
データセンター・通信機器向けソリューション

設計番号: PMP4486
https://www.ti.com/tool/PMP4486
GaNを使用し高密度・高効率で48Vから負荷電圧および中間電圧へ変換。
仕様:60Vin max (48V typ.)
- 1V 40A, 12V 10A, 29V 10A
Controller IC: UCD3138A

採用されているパナソニック商品

① POSCAP
品番: 2TPE470MAJGB
(2V,470μF,11mΩ,3.5x2.8xH2mm)
② ハイブリッドコンデンサ
品番: EEHZA1V680XP
(35V,68μF,35mΩ,ø6.3xH8mm)
② アルミ電解コンデンサ
品番: EEVFK1K101Q
(80V,100μF,320mΩ,ø12.5xH13.5mm)
図10 リファレンスボード採用事例3
図10 リファレンスボード採用事例3
画像提供:
Texas Instruments

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