業界で求められる技術やデバイス(2) ~車載ECUにおける採用事例~

 

業界が求める技術やデバイス(2)
車載ECUにおける採用事例

2021-05-27

車の電動化や自動運転が進むにつれ、車載ECUの搭載数が飛躍的に増加し、スペース確保のためにECUの小型化が重要課題となってきました。
ECUを構成する電子部品には半導体チップだけでなく、その半導体チップに供給する電力や信号からノイズを除去したり波形を平滑したりするコンデンサやインダクタなどの受動部品が多数使われています。
そこで今回は車載電源回路やモータ駆動ECUの小型・軽量化に対して、Panasonicのメタルコンポジットパワーインダクタやハイブリッドコンデンサがどのように貢献できるか採用事例で紹介するとともに、メタルコンポジットパワーインダクタとハイブリッドコンデンサの特長についても解説します。

車載電源回路(入力フィルタ)の採用事例

電源回路周辺では入力フィルタや平滑回路、デカップリング回路などインダクタやコンデンサを使用する回路がありますが、ここでは入力フィルタに高性能なメタルコンポジットパワーインダクタとハイブリッドコンデンサを採用して小型化した事例を紹介します。

図1 入力フィルタ回路図 img

パワーインダクタは、フェライトタイプをメタルコンポジットタイプにしたことで、部品サイズを12×12mmから6×6mmに、面積比で1/4にすることができました。コンデンサについては、ø10mmのアルミ電解コンデンサを、ø6.3mmのハイブリッドコンデンサで置き換えできました。これによって、この入力フィルタが占有する基板面積は262mm2から83mm2になり、68%削減することができました。
この置換えによって大幅な小型化を実現しましたが、肝心なフィルタ特性についても従来品以上の高い性能が確保できています。

項 目 従来品 置換え
採用部品 パワーインダクタ フェライトタイプ
(12x12mm 2.7μH/7.7mΩ)
メタルコンポジットタイプ
(6x6mm 1.0μH/7.3mΩ)
コンデンサ アルミ電解コンデンサ
(ø10mm, 35V, 220μF)
ハイブリッドコンデンサ
(ø 6.3mm, 35V, 47μF)
基板面積
262 mm2

83 mm2▲68%

車・モータ駆動ECU(平滑回路)の採用事例

次に車・モータ駆動ECUにおける平滑回路でハイブリッドコンデンサを採用して小型化した事例について紹介します。

図2 車載用モータのリプル平滑回路 img
車載用モータのリプル平滑回路

平滑回路のコンデンサを、ø18mmのアルミ電解コンデンサからø10mmのハイブリッドコンデンサに置き換えしました。これによって、この平滑用コンデンサが占有する基板面積は763mm2から312mm2になり、60%削減することができました。
また、この置換えによる効果は小型化だけでなり、波形の平滑特性向上の効果もあり、アルミ電解コンデンサではリプル電圧89mVp-pだったものが、ハイブリッドコンデンサでは35mVp-pまで大きく低減しています。
このように、アルミ電解コンデンサからハイブリッドコンデンサへの置換えによって、小型化と平滑特性向上の両方を実現することができました。

項 目 従来品 置換え
採用部品 アルミ電解コンデンサ
(ø18mm, 35V, 820μF)
ハイブリッドコンデンサ
(ø10mm, 35V, 270μF)
使用数 3 pcs 3pcs
基板面積 763 mm2
312 mm2▲60%
リプル電圧
低減効果
   

メタルコンポジットパワーインダクタの特長

メタルコンポジットパワーインダクタは、高い飽和磁束密度と高周波低損失特性を持つ金属磁性材料(メタルコンポジット材料)を採用したインダクタです。

メタルコンポジットパワーインダクタは従来品であるフェライトタイプに対して、同一形状であれば高いエネルギー量を保持することができるため、同一エネルギー量で換算すると30%~50%の小型化が可能です。

図3 電源回路の小型化設計 img

また、フェライトタイプは温度によって磁気飽和特性が変化しますが、メタルコンポジットパワーインダクタは25℃~150℃の環境でほとんど変化しません。この特長により、耐熱性に優れ、電源回路の大電流化にもつながります。

図4 電源回路の大電流化 img

メタルコンポジットパワーインダクタは金属磁性材料と巻線コイルの一体成型構造により、耐振性にも優れており、30Gの耐振動性を有しており、車載用途に適しています(50G保証のシリーズも有り)。

  フェライトタイプ メタルコンポジット
構造
接着組立構造

一体成型構造
エアーGAP GAPあり GAPなし

ハイブリットコンデンサの特長

ハイブリッドコンデンサは、導電性高分子と電解液を融合したハイブリッド電解質を採用し、導電性高分子コンデンサとアルミ電解コンデンサの長所を併せた優れた性能を持っています。小型でありながら高耐圧、大容量、低ESR、高リプル電流、長寿命を実現しています。

図4 img

また、ハイブリッドコンデンサはアルミ電解コンデンサと比較して、高周波まで静電容量の低下が少ないという特長もあります。
右図の例では、1MHz付近における静電容量は公称値100µFのアルミ電解コンデンサよりも、公称値10µFのハイブリッドコンデンサの静電容量が高いことがわかります。
このことより、高周波帯域では、大容量のアルミ電解コンデンサから小形低容量のハイブリッドコンデンサに置換え可能と言えます。

ハイブリッドコンデンサ 50V 10μF (ø5X6)
アルミ電解コンデンサ 25V 100μF (ø6 3X6)
図5 グラフ画像 img

更に、ハイブリッドコンデンサはアルミ電解コンデンサと比較して、低温から高温までESRが安定して低いという特長もあります。
右図の例では、アルミ電解コンデンサのESR値が温度によって2桁以上変動しているのに対して、ハイブリッドコンデンサは低温から高温までほとんど変化せずに低い値を示しています。
このことより、ハイブリッドコンデンサは、低温から高温まで安定して高いノイズ除去効果があると言えます。

ハイブリッドコンデンサ 36V 47μF (ø6 3X6)
アルミ電解コンデンサ 35V 330μF (ø10X10)
図6 グラフ画像 img

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