業界で求められる技術やデバイス(1) ~業界動向2021年春~

 

2021-04-20

業界で求められる技術やデバイス

技術情報

業界で求められる技術やデバイス(1)
~業界動向2021年春~

 
 

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今回は、「業界で求められる技術やデバイス」と題して、車載、通信インフラ、産業ロボットの3つの業界のトレンドや技術を紹介します。
また、各業界で求められる要素と、その要素を実現するために必要なデバイスについても紹介します。
なお、この記事は今春入社された技術系新入社員の方にも理解して頂けるよう、基礎的な内容を掲載しています。

業界動向①車載製品で求められる技術やデバイス

車業界のトレンド「CASE」について

近年、自動車関係で「CASE」という言葉をよく耳にする方も多いのではないでしょうか。「CASE」は下記4つの頭文字をとったもので、今後の車業界の動向に欠かせない要素になります。

  • Connected (コネクテッド)
  • Autonomous (自動運転)
  • Shared & Services (シェア&サービス)
  • Electric (電気自動車)

それぞれについて簡単に説明します。

図1 CASEのイメージ(出典: 経済産業省の製造基盤白書(ものづくり白書) img
図1 CASEのイメージ
(出典: 経済産業省の製造基盤白書(ものづくり白書))

Connected(コネクテッド)は通信機能を指し、車と車、車と道路などが互いに通信することで、車での生活をより快適なものにすることを目指します。また、5Gネットワークが普及すれば、通信の速度や品質が向上し、より快適なものになる可能性を秘めています。
Autonomous(自動運転)は人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できることを指します。自動運転レベルは0~5までありますが、2021年現在、日本ではレベル2(部分運転自動化)からレベル3(条件付運転自動化)と推移しており、運転の主体が人からシステムへ移行するタイミングにあります。
Shared & Services(シェア&サービス)は、カーシェアリングやタクシーの配車サービスなど、車の共有や車をサービスとして利用する新しい使い方です。
Electric(電気自動車)は、電気自動車やハイブリッド車を増やすことで、車が排出する二酸化炭素を減らし、地球の環境問題に対応するという目的があります。次項では「CASE」の中からElectric(電気自動車)を取り上げて解説します。

車載の電動化で求められる技術について

経済産業省が発表した「自動車産業戦略2014」によると、2030年にはハイブリッド車や電気自動車などの次世代自動車の普及について、50~70%を政府目標としています。

表1 乗用車車種別普及目標(政府目標)
(出典: 経済産業省「自動車産業戦略2014」)
  2020年 2030年
従来車 50 ~ 80% 30 ~ 50%
   次世代自動車 20 ~ 50% 50 ~ 70%
   ハイブリッド自動車 20 ~ 30% 30 ~ 40%
電気自動車
プラグインハイブリッド自動車
15 ~ 20% 20 ~ 30%
燃料電池自動車 ~ 1% ~ 3%
クリーンディーゼル自動車 ~ 5% 5 ~ 10%

この政府目標に伴い、東京都では2030年までに都内で販売する新車のガソリン車をゼロにする目標を明らかにしました。
車の電動化は世界的にも推進されており、これからの10年間はハイブリッド車や電気自動車の普及が進むでしょう。車両の電動化にともない、燃費の向上は欠かせません。
燃費を良くする条件として、車体を軽量にする、エネルギー効率を向上するなどが挙げられます。いずれの場合も、車体を構成する部品は小型・軽量であることが求められます。
但し、それは当然ながら車載用途としての高信頼性を維持した上でのことになります。

車載の電動化で求められるデバイスについて

車載の電動化を進めるにあたり、車体を構成する部品は小型・軽量・高信頼性であることが求められ、それを実現するデバイスを紹介します。
小型で高信頼性のコンデンサに「導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ」があります。このコンデンサの電解質は、電解液と導電性高分子を融合させた構造で、低ESR(高リプル電流)と高信頼性を特長とするコンデンサです。
また、小型で大電流対応の車載用パワーインダクタは車載ECU(Electronic Control Unit)電源回路の省スペース化に貢献します。

CASEについて、もっと詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

業界動向②通信インフラで求められる技術やデバイス

通信インフラのトレンドは5Gネットワーク

通信インフラのトレンドは「5G」が挙げられるでしょう。5G(第5世代移動通信システム)は2020年3月から実用化が始まり、下記の特徴があります。
■5Gの大きな特徴
  1. 高速・大容量
  2. 低遅延
  3. 多接続

高速・大容量化によって動画が数秒でダウンロードできるようになり、低遅延を活かして遠隔地にあるロボットを操作するということが考えられるでしょう。
また、同時接続数が増えることでさまざまな機器がネットワークに接続可能となります。人が多く集まるスタジアムでのイベント、センサやモータなどが複数稼働している工場の管理や制御などが可能になるでしょう。

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図2 5Gの特長
(出典:平成29年 総務省情報通信審議会新世代モバイル通信システム委員会報告)

5Gネットワークのインフラには高い信頼性が求められる

5Gネットワークのインフラ設備は、大容量のデータを遅延なく複数の機器が接続できるようにし、なおかつ安定して稼働し続ける必要があります。
今後、日本を含む多くの先進国では少子高齢化が進みますが、5Gのような移動通信システムの進化により、少子高齢化の解決策としてさまざまな事例が挙げられます。
例えば、遠隔地や被災地といった人が足を運びにくい場所で、作業ロボットやドローンなどが人の代わりに作業できるようになるでしょう。また、自動運転システムが進化すれば無人タクシーを手配するといったことも可能になるかもしれません。
しかし、これらのシステムを実現するためには5Gネットワークのインフラが常に安定して稼働している必要があります。

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図3 5ローカル5Gの利用イメージの一例 (出典:総務省)
左上:建設現場での建機や重機の遠隔操作
左下:工場でのセンシングやロボットの遠隔制御
右上:農業の効率化
右下:防災・減災のセンシング

5Gネットワークのインフラ構築で求められるデバイスについて

5Gの周波数帯は日本において3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯が割り当てられています。700MHz帯から3.5GHz帯を使用している4Gに対し、高い周波数帯を使用している5Gでは高周波回路設計の難易度が高くなります。
また、電波は周波数が高くなると直進性が強くなり、建物や街路樹などの陰に電波が届きにくくなります。そのため、5Gでは基地局を多く設置することで電波が届くエリアをカバーする必要がでてきます。しかし、膨大な数の基地局を短い周期でメンテナンスすることは人的にも費用的にも困難です。
その為に10年間のメンテナンスフリー化が求められており、また、セットの耐久性能を伸ばす為に、冷却ファンなどの機構部品系を採用できません。
インフラ設備を長期的に安定稼働させるためには、高い信頼性でノイズ特性の良い部品の選定、熱や雷といった設置環境への対策が求められるでしょう。
高信頼性を実現する部品には、車載でも紹介した導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサや車載用パワーインダクタなどの車載品質の部品があります。また、高温化への対応として高耐熱チップ抵抗器、雷サージ対策にはバリスタ(ZNRⓇサージアブソーバ)などを取り揃えています。

5Gについて、もっと詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

業界動向③産業用ロボットで求められる技術やデバイス

これからの産業用ロボットは人手不足を解消する

産業用ロボットはこれからの人手不足を解消する存在です。
「Connected Industries」や「Society 5.0」といった言葉に挙げられるように、人とロボット、ロボットとロボットが互いに情報をやり取りし、連携することで少子高齢化や地域格差といった課題の解決を目指します。産業用ロボットは人手不足を補う労働力として活躍が期待されます。
そのため、図4のように産業用ロボットの販売数は今後ますます増加していくと予測されています。

図4 産業用ロボットの販売数実績と予測 img
図4 産業用ロボットの販売数実績と予測
(出典:IFR World Robotics - Industrial Robot Report 2018)

人と協働する産業用ロボットは小型化と安全性向上が求められる

産業用ロボットは人の代わりとなって工場や遠隔地での作業を行う労働力として活躍が期待されています。
これまでの産業用ロボットは、自動車の組み立てのような大型な製品を製造するのに多く使用されてきました。自動車の組み立てでは取り扱う部品も大きく、ロボット自体も大型でした。
しかし、これからは食品や医薬品といった小型な製品の製造にも使われるようになり、特に医薬品のように高度な知識や繊細な作業が求められる現場において、人と協働するロボットの需要が拡大します。
このような協働ロボットの実現には、ロボットの小型化と安全性向上が求められます。

産業用ロボットの小型化と安全性向上のためのデバイスについて

産業用ロボットを小型化するため、電源回路やモータ周りの部品を小型化していく必要があります。部品の小型化には、導電性高分子コンデンサや小型高電力チップ抵抗器などの使用が欠かせません。これらを使用することで、実装面積の省スペースにつながります。
安全性向上のための電源回路の電流制限、モータの過電流検出には電流検出抵抗器が必要です。パナソニックの電流検出抵抗器は低抵抗が特長で、発熱時のエネルギー損失が少なく発熱を抑制します。また、温度変化による抵抗値変動(TCR)も小さく、「低抵抗」と「低温度係数」を兼ね備えた抵抗器です。

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