NTCサーミスタの基礎知識

2022-8-24

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NTCサーミスタの基礎知識

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「サーミスタ」とは、温度変化に伴い抵抗が変化する電子部品です。電気抵抗値の変化によって温度検知が可能なため、温度センサとして利用でき、私たちの身の回りにある製品に多く使われています。その中でも「NTCサーミスタ」は、温度上昇に伴い抵抗値が減少する特性を持つ素子です。本記事では、NTCサーミスタの解説と用途についてご紹介します。

NTCサーミスタとは

サーミスタは、温度が変わると抵抗値が変わる半導体セラミックで作られています。温度の上昇に対して抵抗値が上がるPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタと、それとは逆に温度が上昇すると抵抗値が減少するNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタの2種類があります。このうち、NTCサーミスタは室温を含む広い温度範囲において、温度変化に対して抵抗値がなめらかに変化する特性を持ちます。このため、微小な温度差も検知しやすく、さまざまな電⼦機器の温度検知や温度補償に適しています。

図1 NTCサーミスタの内部構造
図1 NTCサーミスタの内部構造

半導体セラミックにはニッケル、マンガン、コバルト、鉄のような酸化物を混合したものを使用。素子両端の電気抵抗値の変化で温度を検知する仕組みになっています。
変化によって電解液の電気伝導度や電極の抵抗が変わるため、こちらも静電容量が変化します。

パナソニックのNTCサーミスタ ラインアップ

パナソニックではEIA01005サイズ(0.4×0.2 mm)からEIA0603サイズ(1.6×0.8 mm)までのNTCサーミスタを取りそろえています。EIA0402サイズとEIA0603サイズの2つは車載対応品となっており、150℃まで使用できます。

商品ページはこちら(NTCサーミスタ)

図2 NTCサーミスタのラインアップ
図2 NTCサーミスタのラインアップ

NTCサーミスタの用途

NTCサーミスタは、身の回りにあるさまざまな機器の温度検知に多く使⽤されています。スマートフォンやデジタルカメラ、ウェアラブルデバイスなどの小型電子機器、 ゲーム機、モバイルバッテリー、車載機器、医療機器、冷蔵庫やエアコン、炊飯器といった家電など多岐にわたります。本記事では使用例の一部をご紹介します。

スマートフォン/タブレット

  1. LED保護用
    スマートフォンやタブレットのカメラモジュールに使われているLEDは、内部に熱を蓄積しやすい素子です。放熱せずに高温のままになると劣化が早まり、寿命が縮む原因になります。NTCサーミスタを利用してLEDの温度を検知し、LEDに流れる電流を制限することで、発熱を抑えることができるのです。
  2. 温度センサ内蔵水晶振動子
    水晶とサーミスタが一体となったサーミスタ内蔵⽔晶発振器とよばれる素子があります。水晶振動子のそばに配置されたサーミスタが温度を検知して、その温度をICに伝えて温度補正を行います。
  3. バッテリー
    スマートフォンを使い続けていると徐々に本体が熱くなってきます。これはプロセッサやグラフィックスチップの発熱に加え、バッテリーの発熱によるものです。バッテリーは長時間高温にさらされると寿命が短くなりますが、NTCサーミスタによってバッテリーの長寿命化が可能になります。これは、NTCサーミスタでバッテリーの温度を検知して、高温になっていれば電流を制限して発熱を抑える制御を行います。
図3 スマートフォンにおけるNTCサーミスタ使用例
図3 スマートフォンにおけるNTCサーミスタ使用例

車載機器

車載機器にもNTCサーミスタは多く使われています。

<カーナビ>
・・・パワーアンプや液晶ディスプレイの温度検知
<カーエアコン>
・・・室内の温度検知

また、スマートフォン/タブレットのLEDと同様に、車のLEDヘッドライトにもNTCサーミスタが使われています。NTCサーミスタを使用することで、高温時には小電流に制御しLEDの発熱が抑えられ、長寿命化が期待できます。

図4 車載機器におけるNTCサーミスタ使用例
図4 車載機器におけるNTCサーミスタ使用例

パナソニックの⾼抵抗層形成技術とは

パナソニックでは「⾼抵抗層形成」という独自の技術を使用してサーミスタを製造しています。従来のNTCサーミスタは、長期間の使用により温度による抵抗値が徐々に変化し、結果として温度検知の精度が落ちていく傾向にあります。素子のサイズが小さいほど、その傾向は顕著に現れます。⾼抵抗層形成技術によって作られたサーミスタは、抵抗値の変化が起きにくく、長期間使用しても高い精度で温度検出が可能なのです。

なぜ⾼抵抗層形成技術が優れているのか?

内部電極の間にあるR1の抵抗値のみを測定するのが理想ですが、素子の構造上、R2とR3の抵抗値も含まれてしまいます。サーミスタを長期間使用すると、熱や湿度の影響を受け、R2とR3の抵抗値が変化してしまうのです。サーミスタ全体の抵抗値を表した式は以下の通りです。

1 サーミスタ抵抗値 = 1 R1 + 1 R2 + 1 R3

サーミスタ全体の抵抗値に影響を与えないようにするには、「いかにR2とR3の変動を抑えるか」がポイントになってきます。ここに、非常に大きな抵抗値を持つ「⾼絶縁(抵抗)層」を入れることで、R2とR3の抵抗値は大きくなります。R2とR3が大きい値であるほど、1/R2と1/R3はゼロに近い小さな値となり、サーミスタ全体の抵抗値へ影響を及ぼさないというわけです。

図5 製品構造の違い
図5 製品構造の違い

パナソニック製NTCサーミスタの信頼性

高絶縁層のあるパナソニックのNTCサーミスタであれば、長期間使用しても精度がほとんど変化せず温度を検出することが可能となります。0603サイズを例に、耐湿環境試験のグラフ(図6)から長時間使用しても抵抗値変化率の変化が抑えられていることが分かります。

図6 抵抗値変化率の比較
図6 抵抗値変化率の比較

通常、素子のサイズが小さくなると、抵抗値変化率が大きくなる傾向にありますが、パナソニックのNTCサーミスタであればその心配はありません。

まとめ

NTCサーミスタは温度センサとして、私たちの身の回りにある機器に多く使われています。NTCサーミスタ選定のポイントは「長期間使用しても精度の高い温度検出が可能かどうか」にあります。 サーミスタを小型化したいなど、置き換えを検討中の方は、パナソニックへご使用中の品番をお知らせください。小型化、コストダウンをご提案した上で、推奨品番をお伝えいたします。

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