USB PD車載向け設計の課題解決!
コンデンサ・インダクタの選定ポイント
2020-07-28
今、自動車のUSBポートにUSB PD規格の対応が進んでいます。車載USB PDの設計には小型化、使用温度、長寿命などの車載特有の要求があります。
そこで今回は車載USB PDの設計に最適なパナソニックのコンデンサ・インダクタの選定ポイントについて解説します。
USB PDの進化と車載実装化
USB PD規格の進化
一つは、データ転送速度の高速化です。
USB 1.0は最大12Mbps、最新のUSB 4規格(2019年登場)では最大40Gbpsと3千倍です。この進化により、様々な機器でますます大容量・高速なデータのやり取りが可能となります。
世代 名称 |
制定年 | 最大転送 速度 (Gbps) |
最大供給 電力 (W) |
コネクタ 形状 |
---|---|---|---|---|
USB 1.0-1.1 | 1996~ | 0.012 | 2.5 | Type A, B |
USB 2.0 | 2000~ | 0.48 | 2.5→7.5 (USB BC 対応) |
Type A, B |
USB 3.0-3.2 | 2008~ | 20 | 4.5→100 (USB PD 対応) |
Type A, B, C |
USB 4 | 2019~ | 40 | 100 | Type C |
特に2014年に策定されたUSB Power Delivery (略称:USB PD)では、供給できる電力が大幅に引き上げられ、最大100Wの電力を供給できるようになりました。USB 1, 2では2.5W、USB 3では4.5W(一部7.5W)ですので40倍です。
供給電力の進化により、USBはスマートフォンだけでなく、ノートPCや大型モニターやプリンター等ほとんどの機器においてデータ転送+電源供給ケーブルを1本化できるようになります。
USB PD供給電力区分 | 電圧・電流 例 |
---|---|
0-10W | 5V3A |
15-27W | 5V3A, 9V3A |
27-45W | 5V3A, 9V3A, 15V3A |
45-60W | 5V3A, 9V3A, 15V3A, 20V3A |
60-100W | 5V3A, 9V3A, 15V3A, 20V5A |
USB PD車載実装における課題
- 課題1 小型化
- 大電力回路は構成部品の大型化を招くが、車では様々な機能の電子化が進み回路小型化が求められる。
- 課題2 熱・幅広い温度耐性
- デュアルポートの場合、特に基板温度上昇の課題があり、高効率な電源設計が求められる。
民生機器よりも幅広い温度耐性のある部品の使用が求められる。
- 課題3 長期信頼性(耐振動・寿命)
- 移動体での長期使用が前提のため、長時間の耐振性や寿命など、信頼性の高い部品選定が求められる。
上記3つの課題を解消するのに、パナソニックの最新技術を使用したコンデンサとインダクタは非常に有効です。ここでは、電源回路の必須部品であるコンデンサとインダクタの選定ポイントについて解説します。
USB PD車載用 コンデンサの選定ポイント
先述した通り、回路面積を小さくするために、コンデンサも小型・少員数であることが求められますが、従来のアルミ電解コンデンサでは内部抵抗値(ESR)が大きく流せる電流が小さいため、大型・複数使いとなってしまいます。また、車載においては、低温化での安定した特性も求められますが、アルミ電解コンデンサは低温下でESRが増大し使用員数が増えてしまいます。
セラミックコンデンサは低抵抗で1個当たりのサイズも小さいのですが、USB PDでは従来のUSBと比べて使用電圧が高いために、セラミックコンデンサの弱点である電圧印可による容量減少(DCバイアス特性)が顕著となり結果的には複数使いで実装面積は大きくなってしまいます。また、低温下での容量減少(温度特性)も大きく使用員数が増え更に実装面積が大きくなります。さらに、故障モードがショートであるため、安全対策のために2個直列で使用される場合もあり、その場合は実装面積が更に2倍になります。
パナソニックのハイブリッドコンデンサは電解液+導電性高分子のハイブリッド電解質の開発・適用により、低温から高温で安定した低ESRかつ印加電圧に影響されない大容量を両立しているため、最少員数で設計ができ実装面積の省スペース化が可能です。更に105℃、125℃、145℃、150℃の高温度に対応し長寿命特性を有し、機器の高信頼化に貢献します。また、振動要求の厳しい箇所での使用にはΦ6.3、Φ8、Φ10サイズ品で耐振動座板品も提供し、30Gの振動に対応しています。
このように、パナソニックのハイブリッドコンデンサは車載USB PDの要求を満たす特性を提供しています。
アルミ電解コンデンサとハイブリッドコンデンサの比較
アルミ電解コンデンサ | ハイブリッドコンデンサ |
---|---|
50V 100µF (EEEFC1H101P) |
50V 100µF (EEHZA1H101P) |
Φ10 x L10.2㎜ | Φ10 x L10.2㎜ |
0.5Arms | 2Arms |
同サイズ品で、リプル電流4倍!
■温度特性比較(ESR)
温度が変化してもESRは安定!
セラミックコンデンサ(MLCC)とハイブリッドコンデンサの比較
■DCバイアス特性比較(静電容量変化率)
印加電圧によって容量減少しない!
■温度特性比較(静電容量変化率)
使用温度による容量変化が少ない!
■MLCCとハイブリッドコンデンサの設計比較
(静電容量ベースでの設計の場合)
- MLCC設計
50V,33µF(5.7x5.0mm) ⇒ 21µF(at 32V) ⇒ 10.5µF (2個直列)
➡ 10.5µF(2個) x10並列=105µF (570mm2)✔ショートモード保護のため2個直列使用必要。
✔印加電圧を上げると容量大幅減→並列追加必要。 - ハイブリッドコンデンサ設計
50V,100µF(dia.10mm) ⇒ 100µF (at 32V)
➡ 100µF x 1個 = 100µF (100mm2)✔オープンモード故障のため1個使用OK。
✔印加電圧を上げても容量減少しない
ハイブリッドコンデンサはオープンモード故障で安全設計!直列使いの必要なく、員数削減、小型化設計!
USB PD車載用 インダクタの選定ポイント
パワー系インダクタは主に、フェライトタイプとメタルコンポジットタイプがありますが、パナソニックではメタルコンポジットタイプをおすすめしています。
従来のUSBの出力電流は最大0.5Aでしたが、前述の通りUSB PDの出力電流は最大5Aと大幅に大電流化しています。インダクタの選定においてはこのような大電流でも飽和せず高効率を保つことが求められます。しかし、従来のフェライトインダクタでは飽和電流値(Isat)が小さくインダクタンスが大きく減少することで効率低下を招いてしまいます。もし効率を維持しながら大電流に対応しようとすると、サイズが許容できないほどの大きさとなってしまいます。
一方、パナソニックのメタルコンポジットインダクタは、電流に対するインダクタンス安定性が高く、フェライトインダクタと比べ大電流を流してもインダクタンスが大きく低下することがありません。そのためバッテリの不安定な入力変動にも対応でき、5Aという大電流でも小型・高効率を保つことができます。しかもインダクタンスの温度依存性はほとんどありません。耐振性においてもフェライトインダクタと違い一体成型・低重心のため非常に強く、独自の端子引き出し構造により更に信頼性を高めています。
このように、パナソニックのメタルコンポジットインダクタは車載USB PDに最適なインダクタとなっています。
■インダクタンス電流重畳特性
メタルコンポジットタイプのインダクタは使用温度による変化が少ない!
電流重畳によるインダクタンス値が低下しにくい!
■パナソニック独自の構造
高信頼を実現するパナソニックの独自構造
まとめ
※小型化効果の程度は各設計要件・許容度により異なります。
車載実装に求められる、小型化・温度耐性・高効率・高信頼性を満たすソリューションに、パナソニックのハイブリッドキャパシタとメタルコンポジットタイプのインダクタがおすすめ!
ICメーカーのリファレンスボード採用事例
ON Semiconductor社様製 車載USB PD電源設計ソリューション
「STR-USBC-2PORT-100W-EVK」
USB PDの最大電力規定である100Wをサポート。
採用コンデンサ
パナソニック製 ハイブリッドコンデンサ
EEHZA1H101P
(50V, 100µF, 28mΩ, φ10xH10.2㎜)
採用インダクタ
パナソニック製 メタルコンポジットインダクタ
ETQP6M3R3YLC
(3.3uH, 6mΩ, Isat 26.3A,10.9x10xH6mm)