GaN採用AC/DCコンバータ本格普及における導電性コンデンサの貢献とは?

 

GaN採用AC/DCコンバータ本格普及における導電性コンデンサの貢献とは?

2023-01-20

AC/DCコンバータの動向とGaN

AC/DCコンバータは家庭や企業に送電されている商用交流電源を直流電源に変換する装置としてとして、あらゆる機器に使用されています。大多数の回路は交流ではなく直流電圧を使うため、なくてはならない存在です。機器が必要とする電力レベルに応じてAC/DCコンバータの大きさは様々です。同じ電力で比べた場合は、省スペースや携帯性の観点から小型であるほど良いとされます。

歴史を辿ると、AC/DCコンバータがリニア方式からスイッチング方式へ移行してからは、小型化の進展は緩やかなものでした。
しかし最近は、ノートPCのACアダプタでよく取り沙汰されるように、際立った小型化が進んでいます。
この背景には、継続的な回路の改善に加え、より根本的なものとして損失の低いGaN(窒化ガリウム)を従来のSiに変わりスイッチング素子として採用したことが挙げられます。

GaNは2000年頃から電源に向けた開発が行われてきましたが、実用化の勢いが顕著になってきたのは近年のことです。モバイルワークや電力不足問題など社会情勢変化に伴う小型・高効率化ニーズの高まりと、GaN自体の品質・量産性が向上したことで需要と供給がマッチしました。
GaNを使用したスイッチング素子は従来のSi材料と比べてスイッチング立ち上がりが高速であるため、スイッチング損失が小さいことが特長です。そのため、従来Siと同じスイッチング周波数を選択した場合、より高効率となり、低発熱化や放熱部品の簡易化を実現できます。

また、高いスイッチング周波数を選択し、より小型の受動部品を使うことも可能です。
GaNであれば高周波スイッチングであっても、Siの低周波スイッチングと同等の高効率を保つことができるからです。
通常、機器設計における電力効率は、従来基準を満足すれば合格とされる場合が多いため、GaNにより得られた効率マージンは小型化設計に活用されることが一般的です。

導電性コンデンサの利点

GaNを使用したAC/DCコンバータに向けて、パナソニックは出力コンデンサの小型化に貢献できる固体導電性コンデンサを広くラインアップしています。ここで、出力コンデンサがどのように機能するか見てみましょう。
出力コンデンサはAC/DCコンバータのリプル電流を吸収することで、綺麗な直流電流を出力することに貢献しています。リプル電流をコンデンサが吸収する時、必ずリプル電圧が発生してしまいますが、このリプル電圧は機器の正常動作のための基準値を超えないことが設計要件です。一般的な基準値としては、出力電圧の±5%以下と言われています。

リプル電圧の小さな出力電圧を得るための主要因となるのが、コンデンサのインピーダンスです。
簡易的には、リプル電圧=リプル電流 x インピーダンス(ΔV=ΔI*Z)という関係となっていますので、リプル電流が発生するスイッチング周波数でなるべく小さなインピーダンスを有するコンデンサを使用することが最適です。

GaNを使用すると、従来100kHz程度だったところが、低スイッチング損失のおかげで200k-500kHzといったより高周波のスイッチング周波数を使用することも可能となりますが、このような高周波領域では、従来使用されていた液体電解コンデンサよりも導電性コンデンサの方が大幅に小さなインピーダンスとなっています。
そのため、導電性コンデンサはGaNを使用したAC/DCコンバータ設計においてリプル電圧を小さくでき、最適な出力コンデンサとなります。

導電性コンデンサの低インピーダンスは、電解質に低ESRの導電性高分子を使用することによって実現しています。
低ESRであることは同時に、電解コンデンサより大きなリプル電流を許容できることも意味しています。
さらに、導電性高分子は固体電解質のため、液体電解質の電解コンデンサと違い低温環境で特性が損なわれることなく、高温長期使用において劣化しにくいというのも大きな特長です。このように導電性コンデンサは機器設計に多くのメリットをもたらします。

高周波AC/DCコンバータでの電解コンデンサとの比較評価

スイッチング周波数の高周波化に伴い必要となる容量が小さくなることで、大幅な小型化やコストダウンが可能となるケースもあります。そのような事例を一つご紹介します。下記の評価事例は、200k-400k程度の範囲で動作する高周波AC/DCコンバータですが、導電性コンデンサは電解コンデンサよりも大幅な省面積・省員数の設計を実現しています。
これは前述した導電性コンデンサの優れた周波数特性・温度特性によるものです。

1. 単品特性比較

比較対象:電解コンデンサ 63V 390uF 対 導電性コンデンサ 63V 33uF

2. 回路動作比較

【電源仕様】
出力電力150W、出力電圧48V、許容電圧変動幅±400mV、Fsw 210k-370kHz、LCCトポロジ、動作温度範囲-30℃~+65℃、期待寿命5万時間(5.7年)
【試験箇所】
48V出力部
【評価内容】
最大負荷3.2A時の出力電圧変動を測定。最悪条件として最低温度動作時も評価。これらについて標準搭載の電解コンデンサ63V 390uF x 3個vsパナソニック導電性コンデンサ 63V 33uF x 1-3個で置換え比較。
導電性コンデンサは小容量でも、優れた周波数特性により、同等の電圧変動に抑えている。
動作温度範囲下限の-30℃で比較すると、導電性コンデンサは1個で設計が可能。
寿命末期(5万時間後)でも安定の見込み。
=実装面積・コストの低減・長寿命化
表 評価結果まとめ

パナソニックの導電性コンデンサ

GaN採用によって高周波スイッチングAC/DCコンバータが増加する中で、パナソニックはお客様のニーズに対応しています。導電性コンデンサのパイオニアとして、独自の高性能・高信頼製技術を用いて100Vまでの商品群をラインアップしており、民生機器をはじめ幅広く使用されている5-20V出力、産業機器向け24V出力や、通信機器向け48V出力等に幅広く採用されています。近年の電力不足問題を受けて、高効率化のために48Vへのシフトも増加しており(車載、データセンター、USB-PD等)、GaNと導電性コンデンサの活躍の場が広がっています。

商品 サイズ 特長 対応する
AC/DC
出力電圧
典型用途
Hybrid*
面積:φ5~10mm
高さ:6.1~16.8mm
大容量・大リプル電流・低LC・車載対応 12~48V typ 幅広い電力の車載・産業・通信機器のAC/DCコンバータ
OS-CON
面積:φ4~10mm
高さ:4.5~13mm
大容量・大リプル電流・幅広い電圧範囲 5~48V typ 幅広い電力の産業・通信機器のAC/DCコンバータ、ACアダプタ・チャージャ
POSCAP
面積:3.5x2.8、
7.3x4.3mm
高さ:1.2~4mm
小型・大容量 5~28V typ 小電力・小型ACアダプタ・チャージャ
SP-Cap
面積:7.3x4.3mm
高さ:1~3mm
低背・低ESR 5V typ 小電力・小型ACアダプタ・チャージャ
*Hybrid=導電性高分子+電解液の混合タイプ

ICメーカーのリファレンスボード採用事例

ここで実際のGaN AC/DCコンバータへの採用事例を紹介します。IC業界において長年の実績を持つSTMicroelectronicsは、近年高性能GaNスイッチングデバイスをリリースされました。
そのGaNを使用した最新のAC/DCコンバータリファレンスボードにおいて、パナソニックの導電性コンデンサが採用されています。

① 65W GaN AC/DC Converter Evaluation Board
【ボード名】
EVLONE65W
【概略仕様】
出力電力65W、出力電圧 3.3-21V、USB-PD対応、ACFトポロジ
【主要IC】
MasterGaN4(GaNスイッチングパワーデバイス)
ST-ONE(スイッチングコントローラ)
【用途】
各種の産業機器、民生機器
【出力コンデンサ】
EEHZS1V681UP(Hybrid Cap)、25SEK270M(OS-CON)
② 250W GaN AC/DC Converter Evaluation Board
【ボード名】
EVLMG1-250WLLC
【概略仕様】
出力電力250W、出力電圧 24V、LLCトポロジ
【主要IC】
MasterGaN1(GaNスイッチングパワーデバイス)
L6599A(スイッチングコントローラ)
【用途】
各種の産業機器、民生機器
【出力コンデンサ】
EEHZA1V151P(Hybrid Cap)

まとめ

今後、電子機器の増加や大電力化の中で持続可能な社会を実現するために、電源の小型化・高効率化が重視されGaNの採用はますます増加していく見込みです。GaNは今回取り上げたAC/DCコンバータだけでなく、比較的電圧の高いDC/DCコンバータや基地局のRFアンプ等、幅広く広がりつつあります。パナソニックの導電性コンデンサは、GaNを使用した新世代の電源に貢献できる部品として、引き続きお客様ニーズへの対応に尽力していきます。

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