環境対応車の燃費改善や環境規制への対応を背景に自動車の電子化が急速に進み、車載ECUの数や規模は増大しています。加えて、エンジンへの直接搭載や機電一体化も進んでおり、車載ECUには、より厳しい振動条件かつ高温環境での設置と大電流への対応が求められています。そのため、車載ECUを構成する電源回路のノイズ除去や電源の平滑化には、高い耐振動性、耐熱性および大電流に対応したチョークコイルが不可欠です。
当社は、耐振動性能50G以上を実現した面実装タイプ車載用パワーチョークコイルを製品化しました。
高耐振動対応 車載用パワーチョークコイル とは
優れた耐振動性・耐熱性・大電流対応でお客様の工程を合理化、ECUのエンジン直載化と機電一体化に貢献。
より厳しい要求
【振動条件】【高温環境】【大電流対応】
高耐振動対応 車載用パワーチョークコイルの3つの特長
当社従来品 |
高耐振動品 |
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耐振動性:15G@20℃ |
耐振動性:50G@150℃ |
端子の引出し位置の高さを低減することで、優れた耐振性を実現
特長の説明
1.高耐振動性能で車載ECUの振動対策に貢献
振動加速度:150℃環境下で50G (490m/s2)以上 当社従来品*15G(147m/s2)
従来品は、構造的に自己共振周波数が2000Hz付近と低いため、耐振動性に課題がありました。
当社は独自の金属磁性材料を用いたメタルコンポジット材料の採用と独自の巻線および成型技術により、自己共振周波数が3000Hz以上と高く、耐振動性50G以上を有するコイルを実現しました。これにより、車載ECUの振動対策に貢献します。
【※自己共振周波数】
※当社従来品:10mm角サイズ車載用パワーチョークチョークコイル(PCC-M1050MLシリーズ)
※自己共振周波数とは
インダクタは固有振動数を有しており、その周波数を自己共振周波数と言う。外部から加わる振動条件の周波数が自己共振周波数付近にあると、印加加速度の数倍~数十倍の応力がインダクタに加わり、耐振動性を著しく悪化させる。
2.基板実装工程における耐振動の補強が不要で、工程の合理化に貢献
従来、車載ECUの基板実装工程では、耐振動性能を確保するために、ボンディング(接着)剤で部品を固定する補強が必要でした。本製品は、独自の巻線および成型技術により、端子の引出し位置の高さを当社従来品比1/2に低減し、実装基板に近い位置に配置することで優れた耐振性を実現しています。これにより、振動補強が不要で、工程の合理化に貢献します。
3.優れた耐熱性と大電流への対応で車載ECUのエンジン直載化に貢献
車載ECUに搭載されるコイルには、高い耐振動性だけでなく、耐熱性と大電流への対応が要求されています。
従来、30G以上の高耐振動対応コイルは低背でサイズが小さいため、大電流に対応できないという課題がありました。本製品は、独自のメタルコンポジット材料の採用により、50G以上の耐振動性を実現しながら、優れた耐熱性と大電流への対応を可能とし、車載ECUのエンジン直載化に貢献します。
【振動耐久条件】
振動加速度 | 50G(490 m/s2) |
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周波数 | 5~2000Hz |
全振幅 | 5mm max. |
振動方向、加振回数(時間) | X,Y,Z方向 108回(100時間相当) |
温度 | 150℃(通電時の製品自己発熱含む) |
【ラインアップ】
品番 | インダクタンス(※1) | 直流抵抗 20℃(※2) | 定格電流(※3) | シリーズ [size L×W×H] (mm) |
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ETQP5M2R5YSK | 2.45 µH | 7.4 mΩ | 12.0 A | PCC-M0854MS [8.0×8.5×5.4] |
ETQP5MR68YSC | 0.68 µH | 1.66 mΩ | 27.0 A | PCC-M1050MS [10.0×10.9×5.0] |
ETQP5M2R0YSC | 1.90 µH | 4.45 mΩ | 16.5 A | |
ETQP5M220YSC | 20.00 µH | 45.50 mΩ | 5.2 A | PCC-M1056MS [10.0×10.9×5.6] |
ETQP5M470YSC | 44.00 µH | 102.00 mΩ | 3.4 A | PCC-M1054MS [10.0×10.9×5.4] |
ETQP6M2R5YSC | 2.50 µH | 4.48 mΩ | 16.4 A | PCC-M1060MS [10.0×10.9×6.0] |
- (※1) インダクタンスの測定周波数は100 kHz
- (※2) Typ.値
- (※3) FR4 t=1.6 mm 4 層基板に実装し直流電流を流した時,全体の温度上昇が40 K となる電流の実力値
使用例
- 電動ポンプ系入力フィルタ
- 電動ファン入力フィルタ
- エンジン直噴入力フィルタ /昇圧チョークコイル
- ブレーキシステム入力フィルタ
- EGR入力フィルタ
- 電動コンプレッサ入力フィルタ
- EPS 入力フィルタ
- S&S 昇降圧チョークコイル /入出力フィルタ
- ボディ電動系入力フィルタ
回路図
振動ソリューション:耐振設計サポートの流れ
CAE(Computer Aided Engineering)による振動応力シミュレーションと複合振動試験機で最適な解決案を提案します
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STEP1 お問い合わせ
情報 をお聞かせください。
- 使用条件
- 振動条件
- 実装条件等
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STEP2 ご提案
振動シミュレーションにて解析(共振、応力)を行い課題の懸念がある場合は解決方法もご提案いたします。
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STEP3 実機の評価・検証
振動試験にて実際に検証を行い解決パターンを提案いたします。
インダクタ専用の振動試験実験室を完備し各種振動試験の実機検証が可能
共振周波数測定複合振動試験機